【チェックリスト付き】犬の認知症の症状と対処法|愛犬と飼い主さんが穏やかに過ごすためのケアガイド
Table of Contents
- 犬の認知症の症状チェックリスト:初期サインから進行期まで
- 【初期症状】「年のせい」と見逃しやすいサイン
- 【中期〜後期】夜鳴き・徘徊など生活に支障が出る症状
- 認知症と似た症状を示す他の病気との違い
- 【症状別】愛犬と飼い主さんの負担を減らす対処法とケア
- 夜鳴き・昼夜逆転への対策:生活リズムと環境づくり
- 徘徊(うろうろ歩き回る)への安全対策:サークルやマットの活用
- トイレの失敗・排泄のケア:オムツの選び方とタイミング
- 食事の介助と工夫:食べない・食べにくい時のサポート
- 認知症の進行を穏やかにするための治療とサポート
- 動物病院での薬物療法とサプリメントの活用
- 脳の健康を維持する食事・療法食への切り替え
- 脳への刺激とスキンシップの重要性
- 介護に疲れてしまわないために:飼い主さんの心のケア
- 「頑張りすぎない」ことが大切です
- 便利な介護グッズや外部サービスの活用
- 犬の認知症に関するよくある質問
- まとめ:愛犬の「その子らしさ」を大切に、穏やかな時間を
- 犬の認知症は、夜鳴きや徘徊、トイレの失敗など、進行度によって症状が変化します。
- 「年のせい」と見逃しやすい初期サインに気づき、早期に対策することが大切です。
- 夜鳴きや徘徊には、生活リズムの調整やサークルの活用など、具体的な環境作りが効果的です。
- 完治は難しいですが、薬やサプリメント、食事療法で進行を穏やかにサポートできます。
- 介護は長期戦です。飼い主さんが一人で抱え込まず、便利なグッズやサービスに頼ることも重要です。
「最近、愛犬が夜中に突然鳴き出すようになった」「部屋の隅で動けなくなっていることがある」……そんな愛犬の変化に戸惑い、不安を感じていませんか? 長年連れ添った大切な家族が、少しずつ変わっていく姿を見るのは本当につらいものです。また、毎日の介護で心身ともに疲れを感じている飼い主さんも少なくありません。
犬の認知症は、適切なケアと環境づくりで、愛犬の不安を取り除き、飼い主さんの負担を軽くすることができます。
この記事では、見逃しやすい初期症状から、夜鳴きや徘徊といった進行期の具体的な対処法まで、今の生活を少しでも穏やかにするためのヒントを詳しく解説します。
犬の認知症の症状チェックリスト:初期サインから進行期まで

犬の認知症(認知機能不全症候群)は、脳の老化に伴ってさまざまな行動の変化が現れる病気です。症状は少しずつ進行するため、毎日の生活の中で「なんとなくおかしいな」と感じる小さな違和感が最初のサインであることがよくあります。
ここでは、見逃しやすい初期症状から、生活に支障が出始める中期以降の症状までを段階別にご紹介します。
【初期症状】「年のせい」と見逃しやすいサイン
認知症の初期段階では、身体的な衰えと区別がつきにくい症状が多く見られます。「最近、寝てばかりいるな」「頑固になったかな」と感じたら、それは単なる老化ではなく、認知機能の低下が始まっているサインかもしれません。
以下の様子が見られたら、注意深く観察してみましょう。
- 睡眠時間の変化: 昼間寝ている時間が増え、声をかけても起きにくくなる。
- 反応の鈍化: 名前を呼んでも反応しなかったり、玄関のチャイムに無関心になったりする。
- 空間認識の低下: 狭い隙間に入り込んでしまい、後退(バック)ができずに動けなくなる。
- 学習したことの忘却: 「マテ」や「オテ」などの基本的なコマンドを忘れる、トイレの場所を間違えることが増える。
- 食欲の変化: ご飯を食べたばかりなのに催促する、あるいは食欲にムラが出る。
これらは「年をとったから」と片付けられがちですが、早期に気づいて獣医師に相談することで、進行を遅らせる対策を始められる可能性があります。
【中期〜後期】夜鳴き・徘徊など生活に支障が出る症状
症状が進行してくると、飼い主さんの生活にも大きな影響を与える行動が目立つようになります。特に「夜鳴き」や「徘徊」は、介護をする飼い主さんにとって精神的・肉体的に大きな負担となる症状です。
中期から後期に見られる主な症状は以下の通りです。
- 昼夜逆転と夜鳴き: 昼間はぐっすり眠り、夜になると起きて単調な声で鳴き続ける、あるいは叫ぶように吠える。
- 徘徊(はいかい): 目的もなく部屋の中を歩き回る。特に、同じ場所をぐるぐると回り続ける「旋回運動」が特徴的です。
- 排泄の失敗: トイレ以外の場所で排泄してしまう、歩きながら漏らしてしまう、自分の排泄物を踏んでも気にしない。
- 性格の変化と攻撃性: 以前は温厚だったのに急に怒りっぽくなる、触られるのを極端に嫌がる、飼い主さんのことが分からなくなる。
- 無目的な行動: 壁や床を意味もなく舐め続ける、空中の見えない何かを目で追うような仕草をする。
- これらの行動は、愛犬自身も不安や混乱を感じているサインです。叱るのではなく、どうすれば愛犬が落ち着けるかを考えることが大切です。
認知症と似た症状を示す他の病気との違い
「認知症だと思っていたら、実は別の病気だった」というケースも少なくありません。高齢犬に多い他の病気でも、認知症とよく似た症状が現れることがあります。
例えば、以下のような病気との見極めが重要です。
- 脳腫瘍・脳疾患: 旋回運動や発作、性格の変化など、認知症と非常に似た神経症状を示します。
- 関節炎・疼痛: 体が痛いために動きたがらない、触ると怒る、夜中に痛みで鳴くことがあります。
- 視力・聴力の低下: 目が見えにくい、耳が聞こえにくいために、呼んでも反応しなかったり、不安で鳴いたりすることがあります。
- 内臓疾患(腎不全など): 体調不良からトイレを失敗したり、うずくまって鳴いたりすることがあります。
自己判断は危険です。気になる症状がある場合は、必ず動物病院で診察を受け、身体的な病気が隠れていないかを確認しましょう。
【症状別】愛犬と飼い主さんの負担を減らす対処法とケア
愛犬が認知症と診断されたり、疑わしい症状が出始めたりしたとき、最も大切なのは「愛犬の不安を取り除くこと」と「飼い主さんの介護負担を減らすこと」です。
ここでは、多くの飼い主さんが直面する具体的な困りごとに対して、家庭でできる実践的なケアと環境づくりの工夫をご紹介します。
夜鳴き・昼夜逆転への対策:生活リズムと環境づくり
夜鳴きは、飼い主さんの睡眠不足に直結する深刻な悩みです。主な原因には、体内時計の乱れ(昼夜逆転)、不安感、そして体の痛みなどが考えられます。
まずは生活リズムを整えることから始めましょう。
- 朝日を浴びさせる: 朝起きたらカーテンを開けて日光を浴びさせ、体内時計をリセットします。自力で歩けなくても、抱っこやカートで外の空気に触れさせることが大切です。
- 日中の刺激を増やす: 昼間にぐっすり寝かせすぎないよう、優しく声をかけたり、マッサージをしたりして、適度な刺激を与えましょう。無理のない範囲での「起こしておく工夫」が夜の睡眠につながります。
- 安心できる寝床作り: 夜は愛犬のそばに飼い主さんの匂いがついた服を置いたり、小さな明かりをつけておいたりすることで、不安を和らげることができます。
それでも改善しない場合は、睡眠導入剤や抗不安薬の使用も選択肢の一つです。「薬を使うのはかわいそう」と思わず、お互いが休むために獣医師に相談してください。
徘徊(うろうろ歩き回る)への安全対策:サークルやマットの活用
認知症の犬は、前進することはできても後退(バック)ができなくなることが多く、部屋の隅や家具の隙間に挟まって動けなくなり、パニックで鳴き叫ぶことがあります。また、同じ場所をぐるぐると回り続ける「旋回」もよく見られます。
徘徊への対策は、「安全に歩き回れるスペースを作ること」が基本です。
- 円形サークルの活用: 四角い部屋やケージでは角に頭を突っ込んで動けなくなってしまいます。お風呂マットや子供用プールなどを利用して、角のない「円形のスペース」を作ってあげましょう。これなら、ぶつかることなく歩き続けることができます。
- 緩衝材でガード: 家具の脚や壁にぶつかって怪我をしないよう、クッション材やヨガマットなどを巻き付けて保護します。
- 足元の滑り止め: 足腰が弱っていると、フローリングで滑って転倒しやすくなります。滑りにくいマットやカーペットを敷き詰め、踏ん張りがきくようにしてあげましょう。
- 「歩きたい」という欲求があるうちは、無理に止めさせず、安全に歩ける環境を整えてあげることが愛犬のストレス解消になります。
トイレの失敗・排泄のケア:オムツの選び方とタイミング
トイレの失敗が増えると、部屋の掃除や洗濯に追われ、飼い主さんの疲労が蓄積します。認知症による排泄の失敗は、しつけで直るものではありません。叱ることは愛犬を萎縮させるだけなので絶対に避け、物理的な対策で乗り切りましょう。
- オムツの活用: オムツを使うことに罪悪感を持つ必要はありません。部屋が汚れるストレスから解放され、愛犬も清潔に過ごせます。尻尾の穴のサイズを調整し、漏れないようにギャザーをしっかり立てて装着しましょう。
- 排泄のタイミングを掴む: 食後や寝起きなど、排泄しやすいタイミングでトイレに誘導したり、外に連れ出したりすることで、成功率を上げることができます。
- お尻周りのケア: オムツかぶれを防ぐため、こまめに交換し、汚れた場合はぬるま湯で優しく洗い流して乾かしましょう。被毛を短くカットしておくと、お手入れが楽になります。
ペットシーツを広範囲に敷き詰めるなど、どこでしても大丈夫な環境を作るのも一つの方法です。
食事の介助と工夫:食べない・食べにくい時のサポート
認知症が進むと、食器の位置が分からなくなったり、食べる動作そのものを忘れてしまったりすることがあります。また、嚥下(飲み込み)機能が低下して、うまく食べられなくなることもあります。
- 食器の工夫: 視界に入りやすいよう食器の位置を高くしたり、滑り止めを使ったりして食べやすくします。鼻先にご飯を持っていくと匂いで気づくこともあります。
- 食事の形状を変える: 噛む力が弱っている場合は、フードをふやかしたり、流動食にしたりして飲み込みやすくします。温めると香りが立ち、食欲を刺激できます。
- 介助給餌: 自力で食べられない場合は、シリンジ(針のない注射器のようなもの)を使って口の横から少しずつ流し込んであげましょう。誤嚥(ごえん)を防ぐため、頭を少し起こした状態で与えるのがポイントです。
認知症の進行を穏やかにするための治療とサポート

残念ながら、現在の獣医療では犬の認知症を完全に「治す」特効薬はありません。しかし、適切な治療とケアを行うことで、症状の進行を穏やかにしたり、愛犬の不安や混乱を和らげたりすることは十分に可能です。「もう年だから」と諦めず、できるサポートを取り入れていきましょう。
動物病院での薬物療法とサプリメントの活用
動物病院では、症状や進行度に合わせて薬物療法が提案されることがあります。例えば、脳内の神経伝達物質を調整する薬や、脳の血流を改善する薬などが使用されることが一般的です。
また、夜鳴きが激しい場合には、睡眠導入剤や抗不安薬、鎮静剤などを用いて、愛犬と飼い主さんが休息をとれるようにコントロールすることもあります。
サプリメントも多くの種類が登場しています。特に、脳の健康維持に役立つとされる成分(DHA・EPAなどのオメガ3脂肪酸、抗酸化成分など)を含んだ製品は、薬と併用して取り入れやすいケアの一つです。
ただし、愛犬の体質や持病(飲み合わせ)もあるため、自己判断で購入せず、かかりつけの獣医師に相談してから始めることをおすすめします。
脳の健康を維持する食事・療法食への切り替え
毎日の食事も、脳の健康をサポートする重要な要素です。最近では、高齢犬の認知機能に配慮した「療法食」や「機能性フード」が開発されています。
これらのフードには、脳のエネルギー源として効率よく利用される「MCTオイル(中鎖脂肪酸)」や、脳の神経細胞を酸化ストレスから守る抗酸化成分、ビタミン類などが強化されています。
食事を切り替えるだけで、表情がはっきりしたり、活動性が戻ったりするケースも報告されています。食事の変更を検討する際は、現在の健康状態に合わせて獣医師のアドバイスを受けると安心です。
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愛犬の認知症ケアは食事から。脳の健康維持に役立つ栄養素と食べさせ方の工夫
脳への刺激とスキンシップの重要性
薬や食事だけでなく、日々のコミュニケーションが脳への良い刺激になります。無理な運動は必要ありませんが、抱っこで外の空気を吸わせて嗅覚を刺激したり、優しく声をかけながらマッサージをしたりするだけでも十分なケアになります。
「ノーズワーク」のように、おやつを隠して探させる簡単な遊びも、脳の活性化に役立ちます。愛犬が「楽しい」「心地よい」と感じる時間は、不安を和らげ、情緒を安定させる効果があります。
介護に疲れてしまわないために:飼い主さんの心のケア

愛犬の介護は、終わりが見えないマラソンのようなものです。特に認知症の介護は、夜鳴きによる睡眠不足や、意思疎通ができない寂しさから、飼い主さんが精神的に追い詰められてしまうことが少なくありません。愛犬を大切に思うからこそ、ご自身の心と体も同じくらい大切にしてください。
「頑張りすぎない」ことが大切です
「私がしっかりしなきゃ」「最後まで完璧に面倒を見なきゃ」と、一人で責任を背負い込んでいませんか? 介護において、100点満点を目指す必要はありません。飼い主さんが倒れてしまっては、愛犬も困ってしまいます。
時には、オムツがずれて部屋が汚れても「まあいいか」と割り切る気持ちも必要です。イライラしてしまったり、愛犬に対して冷たい感情を持ってしまったりしても、自分を責めないでください。それは介護をしている誰もが感じる、当たり前の感情です。
つらい時は「つらい」と声に出し、家族や獣医師、犬友だちに話を聞いてもらうだけでも、心は少し軽くなります。
便利な介護グッズや外部サービスの活用
介護の負担を減らすために、便利な道具やプロの手を積極的に借りましょう。
- 介護グッズ: 床ずれ防止マット、歩行補助ハーネス、高機能なオムツなど、最近は優れた介護用品がたくさんあります。これらを活用することで、ケアの手間を大幅に減らせます。
- 外部サービス: 動物病院やペットホテルが行っている「一時預かり」や「デイケア」、自宅に来てくれる「ペットシッター」を利用するのも賢い選択です。週に一度、あるいは数時間だけでも愛犬を預けて、飼い主さんがぐっすり眠ったり、買い物に出かけたりする時間を作ってください。
リフレッシュして笑顔で戻ってくることは、愛犬にとっても一番の安心につながります。
犬の認知症に関するよくある質問
犬の認知症は何歳くらいから発症しますか?
個体差はありますが、一般的に11歳〜13歳頃から症状が出始めることが多いと言われています。日本犬(柴犬など)は比較的発症しやすい傾向があるという報告もありますが、どの犬種でも高齢になれば発症する可能性があります。10歳を過ぎたら、日々の行動の変化に気をつけてあげましょう。
夜鳴きがひどくて近所迷惑が心配です。どうすればいいですか?
まずは獣医師に相談し、痛みや不安を取り除く薬の処方を検討してください。環境面では、防音カーテンや防音マットを活用したり、夜間だけ部屋の配置を変えたりするのも有効です。ご近所の方には「高齢で認知症の症状があり、夜鳴きをしてしまうことがあります」と事前に事情を伝えておくだけでも、トラブル防止につながります。
認知症の犬に怒ったりしつけ直したりしても意味はないですか?
はい、認知症による行動はわざとやっているわけではなく、脳の機能低下によるものです。叱っても「なぜ怒られているか」が理解できず、恐怖や不安を与えるだけで逆効果になります。失敗させない環境を作ること、できなくても受け入れてあげることが、お互いのストレスを減らす近道です。
まとめ:愛犬の「その子らしさ」を大切に、穏やかな時間を
犬の認知症は、飼い主さんにとって辛い現実かもしれません。しかし、病気になっても、愛犬があなたの大切な家族であることに変わりはありません。できないことが増えても、その子らしい可愛らしさや温もりは残っています。
「治す」ことよりも「今の生活を少しでも快適にする」ことに目を向け、獣医師や周りの力を借りながら、一日一日を穏やかに過ごしてください。あなたの優しい手と声かけが、何よりの特効薬です。

