猫カビ(皮膚糸状菌症)とは?症状・原因から人への感染対策まで徹底解説
Table of Contents
- 猫カビ(皮膚糸状菌症)とはどんな病気?
- 主な症状:円形脱毛やフケ、皮膚の赤みに注意
- 原因と感染経路:免疫力の低下や接触がカギ
- かかりやすい猫の特徴:子猫や高齢猫は要注意
- これって猫カビ?他の皮膚病との違いと診断
- アレルギーやダニ・ノミとの見分け方
- 動物病院での検査・診断方法(ウッド灯検査など)
- 人間にもうつる?家族を守るための知識
- 人への感染リスクと症状:リングワームとは
- もし飼い主さんに症状が出たら:皮膚科受診のすすめ
- 動物病院での治療法と期間・費用の目安
- 投薬と薬用シャンプーによるケアの流れ
- 治療期間はどれくらい?根気強いケアが必要
- 治療費の目安と保険の適用について
- 家庭でできるケアと再発防止のための環境対策
- 部屋の掃除と消毒:菌を広げないためのポイント
- 治療中のストレスケアと多頭飼いの注意点
- 完治後の再発を防ぐための健康管理
- 猫カビに関するよくある質問(FAQ)
- 猫カビ(皮膚糸状菌症)は、真菌(カビ)が原因で起こる皮膚病で、円形脱毛やフケが特徴です。
- 人や他の動物にも感染する「人獣共通感染症」であるため、早期の対応と家族全員の注意が必要です。
- 治療は投薬やシャンプーが中心ですが、完治までには数週間〜数ヶ月かかる長期戦になることが一般的です。
- 再発を防ぐためには、猫の治療だけでなく、部屋の徹底的な掃除と消毒が非常に重要です。
- 自己判断せず、症状が見られたらすぐに動物病院を受診し、適切な診断を受けることが大切です。
愛猫の体を撫でているとき、ふと毛が抜けている場所や、皮膚の赤みを見つけてドキッとしたことはありませんか?「もしかして、これが猫カビ?」と不安に思う飼い主さんは少なくありません。猫カビは、一度かかると治るまでに時間がかかり、さらに私たち人間にもうつる可能性があるため、正しい知識を持って対処することがとても大切です。
でも、過度に怖がる必要はありません。適切な治療と環境ケアを行えば、しっかりと健康な皮膚を取り戻すことができます。
この記事では、猫カビの症状の見分け方から、動物病院での治療、そして家庭でできる消毒やケアの方法まで、飼い主さんが知っておきたい情報を優しく解説します。
猫カビ(皮膚糸状菌症)とはどんな病気?

一般的に「猫カビ」と呼ばれる病気は、専門的には「皮膚糸状菌症(ひふしじょうきんしょう)」といいます。これは、皮膚糸状菌という真菌(カビの一種)が、猫の皮膚や被毛、爪などに感染して増殖することで引き起こされる皮膚病です。
「カビ」と聞くと、お風呂場や食べ物に生えるものを想像して驚かれるかもしれませんが、自然界には多くの真菌が存在しており、その一部が動物に悪さをします。特に猫によく見られるのは「ミクロスポラム・カニス」という種類の菌です。
この病気は、猫の皮膚トラブルの中でも非常にポピュラーなものですが、放置すると全身に広がったり、他のペットや飼い主さん自身に感染したりするリスクがあるため、早めの発見とケアが重要になります。
主な症状:円形脱毛やフケ、皮膚の赤みに注意
猫カビに感染したとき、飼い主さんが最初に気づくことが多いサインは「脱毛」です。特に、10円玉のような大きさで丸く毛が抜ける「円形脱毛」が特徴的です。顔周りや耳、足先、しっぽなどによく見られますが、体のどこにでも現れる可能性があります。
また、脱毛した部分の皮膚をよく観察すると、以下のような症状が見られることがあります。
- フケ(鱗屑):白っぽい粉のようなフケが多く出る。
- 赤み(紅斑):皮膚が赤く炎症を起こしている。
- かさぶた:引っ掻いたり炎症が進んだりして、かさぶたができている。
- 毛質の変化:毛がパサついたり、根元から折れたりしている。
かゆみの程度は猫によって様々で、激しく掻きむしる子もいれば、あまり気にしない子もいます。「かゆがっていないから大丈夫」と自己判断せず、脱毛やフケを見つけたら注意が必要です。
原因と感染経路:免疫力の低下や接触がカギ
猫カビの原因となる皮膚糸状菌は、どのようにして愛猫に感染するのでしょうか。主な感染経路は「接触感染」です。すでに猫カビにかかっている他の猫や動物と触れ合うことで感染します。また、直接触れなくても、感染した猫が使っていたベッド、ブラシ、タオル、あるいは菌が付着した飼い主さんの衣服などを通じて感染することもあります。
しかし、菌に触れたからといって、すべての猫が発症するわけではありません。発症の大きなカギとなるのが「免疫力」です。健康で免疫力が高い状態であれば、菌を排除できることも多いのですが、ストレスや体調不良などで免疫力が低下していると、菌の増殖を許してしまい発症しやすくなります。多頭飼育の環境や、外に出る機会がある猫ちゃんは、感染のリスクが比較的高くなる傾向にあります。
かかりやすい猫の特徴:子猫や高齢猫は要注意
猫カビはどの年齢の猫でもかかる可能性がありますが、特に発症しやすいのが「子猫」と「高齢猫(シニア猫)」です。
子猫はまだ免疫機能が十分に発達していないため、菌に対する抵抗力が弱く、重症化しやすい傾向があります。一方、高齢猫も加齢や他の病気の影響で免疫力が下がっていることが多く、注意が必要です。
また、ペルシャやヒマラヤンなどの「長毛種」は、毛が長く密度が高いため、菌が入り込みやすく、また飼い主さんが皮膚の異変に気づきにくいという特徴があります。ブラッシングの際などに、地肌の様子をこまめにチェックしてあげましょう。
これって猫カビ?他の皮膚病との違いと診断

皮膚に異常を見つけたとき、「これは猫カビなの?それともただの湿疹?」と迷うことがあるかもしれません。猫の皮膚病には、猫カビ以外にもアレルギーや寄生虫など様々な原因があります。見た目だけでこれらを正確に見分けることは、獣医師でも難しい場合があります。しかし、それぞれの特徴を知っておくことで、病院に行く際の観察ポイントとして役立ちます。ここでは、他の皮膚トラブルとの違いや、病院での診断方法について解説します。
アレルギーやダニ・ノミとの見分け方
猫カビとよく似た症状が出る皮膚トラブルに、アレルギー性皮膚炎や、ノミ・ダニ(ヒゼンダニなど)による皮膚病があります。これらを見分ける一つの目安となるのが「かゆみの強さ」です。
- 猫カビ(皮膚糸状菌症):かゆみは「ある場合」と「ない場合」があります。円形の脱毛がはっきりしており、中心部から治って周辺に広がる(リング状になる)ことが多いのが特徴です。
- アレルギーやノミ・ダニ:一般的に「非常に強いかゆみ」を伴います。猫が執拗に体を舐めたり、血が出るほど掻きむしったりする場合は、こちらの可能性も疑われます。また、ノミの場合は毛の中に黒い粒(ノミの糞)が見つかることもあります。
ただし、猫カビと細菌感染を併発している場合などはかゆみが強くなることもあり、見た目だけでの判断は危険です。必ず動物病院で検査を受けましょう。
動物病院での検査・診断方法(ウッド灯検査など)
動物病院では、猫カビかどうかを確定するためにいくつかの検査を行います。代表的なものは以下の通りです。
ウッド灯検査
特殊な紫外線ライト(ウッド灯)を患部に当てる検査です。一部の皮膚糸状菌(ミクロスポラム・カニスなど)は、この光を当てると緑色に光る特徴があります。手軽にできる検査ですが、光らない種類の菌もいるため、これだけで「陰性」とは断定できません。
顕微鏡検査(直接鏡検)
抜けた毛やフケを採取し、顕微鏡で観察して菌の胞子や菌糸がいないかを確認します。
真菌培養検査
毛やフケを専用の培地(菌を育てる環境)に入れて培養する検査です。菌の種類まで特定できる精度の高い検査ですが、結果が出るまでに1〜2週間ほど時間がかかります。
これらの検査を組み合わせることで、獣医師は正確な診断を下します。
人間にもうつる?家族を守るための知識

猫カビについて飼い主さんが最も心配することの一つが、「人間にもうつるのか?」という点ではないでしょうか。結論から言うと、猫カビは「人獣共通感染症(ズーノーシス)」であり、人間にも感染します。特に、愛猫と一緒に寝たり、頻繁に抱っこしたりする濃厚な接触がある場合は注意が必要です。
しかし、過度に恐れる必要はありません。正しい知識を持って対策すれば、感染リスクを下げることができますし、万が一感染しても適切な治療で治すことができます。
人への感染リスクと症状:リングワームとは
人間が猫カビ(皮膚糸状菌)に感染すると、腕や首、顔などの皮膚に赤い発疹が出ます。特徴的なのは、赤い輪っか状の発疹ができることで、これを英語で「リングワーム」と呼びます。この輪の縁が盛り上がってカサカサし、強いかゆみを伴うことが多いです。
健康な成人であれば、感染しても症状が出ないことや、軽症で済むこともあります。しかし、以下のような方は免疫力の関係で感染しやすく、症状が強く出る可能性があるため特に注意が必要です。
- 小さなお子様
- 高齢の方
- 病気治療中などで免疫力が低下している方
感染した猫を触った後は必ず石鹸で手を洗う、タオルを共有しないなどの基本的な対策が、家族を守ることにつながります。
もし飼い主さんに症状が出たら:皮膚科受診のすすめ
もし、飼い主さんやご家族の皮膚に、赤い輪のような発疹やかゆみ、カサカサした異常が見られた場合は、早めに人間の「皮膚科」を受診してください。
その際、医師に「家で猫を飼っていて、その猫が猫カビ(皮膚糸状菌症)の治療中であること」や「猫に皮膚症状があること」を必ず伝えましょう。この情報があることで、医師は真菌感染を疑い、スムーズな検査や診断を行うことができます。市販のかゆみ止めや湿疹の薬を自己判断で塗ると、かえって症状が悪化することもあるため、必ず専門医の指示を仰ぐようにしましょう。
動物病院での治療法と期間・費用の目安

愛猫が猫カビと診断されたら、どのような治療が行われるのでしょうか。治療は、菌を退治するための投薬と、体の外側からのケアを組み合わせて行われるのが一般的です。猫カビは「治りにくい」「再発しやすい」と言われることもありますが、獣医師の指示に従って根気よく治療を続ければ、必ずゴールは見えてきます。
ここでは、具体的な治療の流れや期間、費用の目安について解説します。
投薬と薬用シャンプーによるケアの流れ
治療の基本は「抗真菌薬」の使用です。症状の範囲や猫の体調に合わせて、以下の方法が選択されます。
- 内服薬(飲み薬):全身に症状がある場合や、塗り薬だけでは治りにくい場合に処方されます。体の内側から菌に働きかけます。
- 外用薬(塗り薬):症状が体の一部に限局している場合に使われます。クリームやローションタイプがあります。
- 薬用シャンプー:抗真菌成分が入ったシャンプーで全身を洗い、皮膚上の菌や汚染された毛を洗い流します。週に1〜2回程度行うことが一般的です。
また、治療効果を高めるために、患部や全身の毛を短く刈る(毛刈り)ことを提案される場合もあります。毛を刈ることで薬が浸透しやすくなり、感染した毛が部屋に散らばるのを防ぐ効果も期待できます。
治療期間はどれくらい?根気強いケアが必要
猫カビの治療で一番のネックとなるのが、治療期間の長さです。一般的には、治療を開始してから完治するまでに「1ヶ月〜数ヶ月」かかることが多いです。免疫力が弱い子猫や、基礎疾患のある猫の場合は、さらに長くかかることもあります。
治療を始めてしばらくすると、毛が生えてきたり赤みが引いたりと、見た目がきれいになることがあります。しかし、目に見えなくても菌はまだ毛穴の奥に残っている可能性があります。ここで自己判断で薬をやめてしまうと、すぐに再発してしまうケースが非常に多いです。獣医師が「もう大丈夫(検査で陰性)」と判断するまでは、根気強く治療を続けることが完治への近道です。
治療費の目安と保険の適用について
治療が長期にわたると、費用面も気になるところです。病院や猫の体重、症状の重さによって異なりますが、1回の通院(診察、検査、薬代など)で数千円〜1万円程度かかることが一般的です。これが数週間〜数ヶ月続くため、トータルの治療費は数万円になることも珍しくありません。
ペット保険に加入している場合、猫カビ(皮膚糸状菌症)は一般的に補償の対象となります。ただし、加入しているプランや保険会社によっては、通院回数の制限や免責金額がある場合もありますので、あらかじめ契約内容を確認しておくと安心です。費用の目安についても、治療開始時に獣医師に相談してみると良いでしょう。
家庭でできるケアと再発防止のための環境対策

猫カビの治療において、動物病院での治療と同じくらい、あるいはそれ以上に重要なのが「家庭での環境ケア」です。なぜなら、猫の体から落ちた「菌がついた毛やフケ」は、部屋の隅やカーペットに留まり、数ヶ月から一年以上も感染力を持ち続けることがあるからです。せっかく猫の体の菌を退治しても、部屋に菌が残っていると、そこからまた再感染してしまいます。
ここでは、負のループを断ち切るための掃除と消毒のポイントをご紹介します。
部屋の掃除と消毒:菌を広げないためのポイント
環境対策の基本は「物理的な除去」と「消毒」の2ステップです。
1. 掃除機で菌を吸い取る(物理的除去)
まずは掃除機を丁寧にかけ、落ちている毛やフケを徹底的に取り除きます。特に部屋の隅、カーテンの裾、ソファの隙間などは念入りに。掃除機のゴミは菌の温床になるため、使用後はすぐに密封して捨てましょう。
2. 効果的な消毒を行う
皮膚糸状菌は通常のアルコール消毒では効果が薄い場合があります。以下の消毒方法が有効とされています。
- 次亜塩素酸ナトリウム(塩素系漂白剤):家庭用のキッチン漂白剤などを薄めて使用します(製品の表示に従い、0.02%〜0.1%程度に希釈)。床やケージの拭き掃除に使えますが、金属を腐食させたり布を脱色させたりするため注意が必要です。使用後は水拭きを忘れずに。
- 熱湯消毒:菌は熱に弱いため、60℃以上のお湯に10分程度つけることで死滅します。タオルやベッド、食器などは熱湯消毒や乾燥機の使用が効果的です。
- ペット用除菌スプレー:次亜塩素酸水など、ペットに安全で真菌に効果がある製品も市販されています。カーテンやソファなど、漂白剤が使えない場所におすすめです。
治療中のストレスケアと多頭飼いの注意点
治療中は、感染拡大を防ぐためにケージ内での生活や、特定の部屋への隔離が必要になることがあります。しかし、急な隔離は猫にとって大きなストレスとなり、免疫力を下げて治りを遅くしてしまう可能性もあります。
隔離中も、お気に入りのおもちゃを入れてあげたり、飼い主さんが防護(エプロンや手袋)をした上でスキンシップをとったりして、寂しさを和らげてあげましょう。また、多頭飼いの場合は、感染していない他の猫への感染を防ぐため、生活空間を完全に分けるのが理想です。難しい場合でも、食器やトイレの共有は避け、感染していない猫の健康チェックもこまめに行いましょう。
完治後の再発を防ぐための健康管理
無事に治療を終えて「完治」となった後も、再発を防ぐためのケアは続きます。猫カビは、免疫力が低下した隙を狙って再び現れることがあるからです。
日頃から、栄養バランスの取れた食事で皮膚の健康維持をサポートし、適度な運動や遊びでストレスを発散させてあげることが大切です。また、定期的なブラッシングは、皮膚の状態をチェックする良い機会になるだけでなく、皮膚の血行を良くし、健康な被毛を保つのに役立ちます。部屋の掃除と換気を習慣にし、カビが繁殖しにくい清潔な環境をキープしてあげましょう。
猫カビに関するよくある質問(FAQ)
最後に、猫カビについて飼い主さんからよく寄せられる質問をまとめました。
猫カビは自然に治りますか?
健康で免疫力が高い成猫の場合、稀に自然治癒することもありますが、数ヶ月以上かかることが多く、その間に全身に広がったり、他の動物や人間に感染させたりするリスクが非常に高くなります。また、自然に治ったように見えても菌が残っている(保菌状態)こともあります。放置せず、動物病院で適切な治療を受けることを強くお勧めします。
治療中の猫を触っても大丈夫ですか?
触ること自体は問題ありませんが、素手で触れた後は必ず石鹸でよく手を洗ってください。免疫力が低下している方や小さなお子様は、接触を控えた方が安心です。抱っこをする際は、汚れても良い服やエプロンを着用し、使用後はすぐに洗濯することをお勧めします。
市販の人間用の水虫薬を使ってもいいですか?
自己判断で人間用の薬を使うのは避けてください。猫は皮膚が薄くデリケートなため、人間用の薬では刺激が強すぎて皮膚炎が悪化したり、猫が舐めて中毒を起こしたりする危険性があります。必ず獣医師に処方された猫用の薬を使用してください。
シャンプーはどれくらいの頻度ですればいいですか?
獣医師の指示によりますが、一般的には週に1〜2回程度の薬用シャンプーが推奨されることが多いです。洗いすぎは皮膚のバリア機能を低下させる可能性があるため、指示された回数と方法を守って行いましょう。シャンプー後は、生乾きにならないようしっかりと乾かすことも重要です。
猫カビは根気が必要な病気ですが、飼い主さんの愛情と適切なケアがあれば、必ず乗り越えられます。焦らず、獣医師と二人三脚で治療を進めていきましょう。

