犬のパテラ(膝蓋骨脱臼)の手術は必要?費用やリハビリ、治療法の選び方を徹底解説
Table of Contents
- 犬のパテラ(膝蓋骨脱臼)とは?グレード別の症状とリスク
- パテラのメカニズムとトイプードルやチワワに多い理由
- 【グレード1〜4】進行度ごとの症状と治療の目安表
- 手術?保存療法?愛犬に最適な治療法の選び方
- 保存療法(内科的治療)の内容と期待できるサポート
- 外科手術の種類と特徴(滑車溝形成術・脛骨粗面転位術など)
- 手術と保存療法のメリット・デメリット比較
- 気になる手術費用と入院期間の目安
- 検査・手術・入院にかかる費用の内訳と相場
- ペット保険の適用と確認すべきポイント
- 術後のリハビリと自宅でできるケア方法
- 退院後の過ごし方と安静期間の注意点
- 自宅でできるマッサージと運動制限の工夫
- フローリング対策など生活環境の見直しリスト
- 食事とサプリメントで関節の健康をサポート
- 体重管理の重要性と適正体重の維持
- 関節サポート成分(グルコサミン・コンドロイチン)の活用
- パテラ(膝蓋骨脱臼)に関するよくある質問 (FAQ)
- まとめ:愛犬に最適な治療法を選んでQOLを守るために
- パテラ(膝蓋骨脱臼)は小型犬に多く、進行度(グレード)により治療方針が異なります。
- 治療法には「保存療法」と「外科手術」があり、愛犬の年齢や症状に合わせて選択する必要があります。
- 手術費用は片足で30〜50万円前後が目安となり、ペット保険の適用条件確認が重要です。
- 術後の再発防止やQOL維持には、自宅でのリハビリ、体重管理、床の滑り止め対策が不可欠です。
「愛犬がパテラ(膝蓋骨脱臼)」と診断され、手術に耐えられるのか、それとも手術せずに様子を見るべきなのか、深く悩まれている飼い主様は少なくありません。散歩中に足をスキップするように歩いたり、急にキャンと鳴いて足を上げたりする姿を見るのは、本当に心が痛むものです。
この記事では、パテラの基礎知識から、手術と保存療法のメリット・デメリット、気になる費用の目安、そして自宅でできるケアまでを網羅的に解説します。愛犬がこれからも元気に走り回れるよう、最適な選択をするための手助けとなれば幸いです。
犬のパテラ(膝蓋骨脱臼)とは?グレード別の症状とリスク

パテラ(Patellar Luxation)とは、いわゆる「膝のお皿(膝蓋骨)」が本来あるべき位置から外れてしまう関節の病気です。正常な状態であれば、膝蓋骨は太ももの骨にある溝(滑車溝)に収まり、膝の曲げ伸ばしに合わせてスムーズに動きます。しかし、この溝が浅かったり、骨格の形成に異常があったりすると、お皿が内側や外側に外れてしまいます。
放置すると関節炎が進行したり、前十字靭帯断裂などの二次的な怪我につながったりするリスクがあるため、正しい知識を持って向き合うことが大切です。
パテラのメカニズムとトイプードルやチワワに多い理由
犬のパテラには、膝蓋骨が内側に外れる「内方脱臼」と、外側に外れる「外方脱臼」がありますが、小型犬の多くは内方脱臼です。特にトイプードル、チワワ、ポメラニアン、ヨークシャーテリアなどの犬種で頻発します。
これらの犬種に多い理由は、遺伝的な要因が強く関係しています。生まれつき膝の「滑車溝」が浅かったり、太ももの筋肉と骨をつなぐラインが内側に湾曲していたりすることが原因です。成長期に骨格が形成される段階で異常が生じることが多く、若齢で発症するケースも珍しくありません。また、フローリングなどの滑りやすい床での生活が膝に負担をかけ、発症や進行を早める要因となることもあります。
【グレード1〜4】進行度ごとの症状と治療の目安表
パテラの進行度は、獣医師の触診やレントゲン検査によって4段階の「グレード」に分類されます。グレードによって推奨される治療方針が異なるため、愛犬がどの段階にあるかを把握することが重要です。
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グレード |
状態と主な症状 |
治療の目安 |
|---|---|---|
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グレード1 |
普段は正常な位置にあるが、手で押すと外れる。手を離すと自然に戻る。無症状のことが多い。 |
経過観察・保存療法 |
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グレード2 |
膝を曲げ伸ばしした際などに自然に外れるが、自然に戻ることもある。時々足を上げて歩く(スキップ)症状が見られる。 |
症状の頻度により検討 |
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グレード3 |
常に外れている状態。手で戻せば戻るが、すぐにまた外れる。腰を落として歩くなど歩行異常が目立つ。 |
手術推奨 |
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グレード4 |
常に外れており、手で押しても戻らない。膝を伸ばすことができず、うずくまるような歩き方になる。 |
早期の手術が必要 |
手術?保存療法?愛犬に最適な治療法の選び方

パテラの治療方針を決める際、飼い主様が最も悩まれるのが「手術をするべきか、保存療法で様子を見るべきか」という点です。グレードだけで機械的に決まるものではなく、愛犬の年齢、痛みの有無、活動レベル、そして飼い主様のライフスタイルを総合的に考慮して決定する必要があります。
保存療法(内科的治療)の内容と期待できるサポート
保存療法とは、外科手術を行わずに症状の緩和や進行の抑制を目指す治療法です。主にグレード1〜2の軽度な症例や、高齢や持病で麻酔のリスクが高い場合に選択されます。
具体的な内容としては、痛みや炎症がある場合の「鎮痛剤(NSAIDsなど)」の投与、関節への負担を減らすための「体重管理」、そして「運動制限」が基本となります。また、レーザー治療による疼痛緩和や、関節の健康維持を目的としたサプリメントの活用も一般的です。ただし、保存療法は脱臼自体を治すものではないため、定期的な診察で進行状況をチェックし続けることが大切です。
外科手術の種類と特徴(滑車溝形成術・脛骨粗面転位術など)
手術療法は、膝蓋骨が外れないように骨や筋肉の構造を物理的に整える治療です。一般的に、以下の複数の術式を組み合わせて行われます。
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滑車溝形成術(かっしゃこうけいせいじゅつ):
膝蓋骨が収まる太ももの骨の溝(滑車溝)が浅い場合に、骨を削って溝を深くし、お皿が外れにくくする基本的な術式です。 -
脛骨粗面転位術(けいこつそめんてんいじゅつ):
膝蓋骨とつながる靭帯が付着している「すねの骨(脛骨)」の一部を切り取り、正しい位置にずらしてピンで固定します。筋肉のラインを真っ直ぐに整えることで脱臼を防ぎます。 -
軟部組織の解放・縫縮:
縮んでしまった内側の筋肉を緩めたり、伸びてしまった外側の関節包を縫い縮めたりして、バランスを調整します。
手術と保存療法のメリット・デメリット比較
それぞれの治療法には一長一短があります。以下の比較表を参考に、獣医師とよく相談して方針を決めましょう。
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項目 |
外科手術(手術療法) |
保存療法(内科的治療) |
|---|---|---|
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メリット |
・根本的な治療が可能 |
・全身麻酔や手術のリスクがない |
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デメリット |
・費用が高額になる |
・脱臼自体は治らない |
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向いているケース |
・グレード3以上 |
・グレード1〜2で無症状 |
気になる手術費用と入院期間の目安

手術を選択する場合、やはり気になるのは費用の問題です。パテラの手術は高度な技術を要する整形外科手術であるため、費用は決して安くはありません。また、病院の設備や立地、入院日数によっても金額は変動します。
検査・手術・入院にかかる費用の内訳と相場
一般的に、小型犬のパテラ手術にかかる費用は、片足で30万円〜70万円程度、両足同時の場合は40万円〜70万円以上が相場とされています。この金額には通常、以下の項目が含まれます。
- 術前検査費(1〜3万円):血液検査、レントゲン検査、麻酔前検査など。
- 麻酔・手術費(15〜30万円/片足):執刀技術料、麻酔管理費、使用するインプラント(ピンやワイヤー)代など。
- 入院費(3〜10万円):通常3日〜1週間程度の入院が必要です。24時間の看護体制や点滴、投薬費用が含まれます。
これに加え、退院後の抜糸や定期検診、リハビリ通院の費用も考慮しておく必要があります。大学病院や二次診療施設などの専門病院では、さらに費用が高くなる傾向があります。
ペット保険の適用と確認すべきポイント
高額な治療費をカバーするためにペット保険は非常に役立ちますが、パテラに関しては注意が必要です。ご加入の保険によっては、「膝蓋骨脱臼」が補償対象外となっている場合や、加入前に診断されていた場合は「既往症」として補償されないことがあります。
また、先天性疾患とみなされる場合、免責事項に該当するプランもあります。手術を決断する前に、必ず保険会社の約款を確認するか、問い合わせ窓口で「パテラの手術は補償対象になるか」「支払限度額や回数制限はあるか」を確認しておきましょう。
術後のリハビリと自宅でできるケア方法

手術は「成功して終わり」ではありません。術後のリハビリと自宅でのケアが、その後の回復と再発防止の鍵を握っています。退院直後の安静期間から、徐々に日常に戻していくまでのプロセスを理解しておきましょう。
退院後の過ごし方と安静期間の注意点
退院後、抜糸が済むまでの約2週間(または獣医師の指示がある期間)は、基本的に「絶対安静」が必要です。家の中で自由に走り回らせることは避け、ケージやサークルの中で過ごさせます。
トイレのための移動も、抱っこで連れて行くか、リードをつけてコントロールします。愛犬が元気そうに見えても、骨や筋肉はまだ修復途中です。この時期にジャンプしたり、滑って転んだりすると、インプラントが破損したり再脱臼したりする恐れがあるため、心を鬼にして安静を守らせることが、早期回復への近道です。
自宅でできるマッサージと運動制限の工夫
獣医師の許可が出たら、自宅でのリハビリを開始します。最初は患部を温めて血行を良くする「温熱療法(ホットパック)」や、関節を優しく曲げ伸ばしする「PROM(他動的関節可動域訓練)」から始めるのが一般的です。
簡単なマッサージの手順:
- 愛犬を横向きに寝かせ、リラックスさせます。
- 太ももの筋肉を優しく撫でるようにマッサージし、筋肉の緊張をほぐします。
- 足先を支えながら、ゆっくりと膝を曲げ、痛がらない範囲で伸ばします。これを数回繰り返します。
散歩の再開も段階的に行います。最初は平坦な道を数分歩くことから始め、徐々に時間を延ばしていきます。坂道や階段は膝への負担が大きいため、筋肉が十分に戻るまでは避けるようにしましょう。
フローリング対策など生活環境の見直しリスト
パテラの再発や反対側の足の発症を防ぐために、生活環境の見直しは必須です。以下のリストを参考に、愛犬の足腰に優しい環境を整えましょう。
- 床の滑り止め対策:フローリングは非常に滑りやすく危険です。コルクマット、ジョイントマット、滑り止めワックスなどを導入し、グリップ力を確保しましょう。
- 段差の解消:ソファやベッドへの飛び乗り・飛び降りは膝に大きな衝撃を与えます。スロープやドッグステップを設置するか、家具の配置を変えて高い場所に登れないようにします。
- 足裏のケア:肉球の間の毛が伸びていると滑る原因になります。定期的にカットし、肉球クリームで保湿してグリップ力を保ちましょう。
食事とサプリメントで関節の健康をサポート

日々の食事管理も、関節ケアの重要な柱の一つです。体の中から関節の健康を維持し、負担をかけない体づくりを目指しましょう。
体重管理の重要性と適正体重の維持
関節にとって一番の大敵は「肥満」です。体重が重ければ重いほど、歩くたびに膝にかかる負担は増大します。特にパテラのリスクがある犬にとって、適正体重の維持は治療の一環と言っても過言ではありません。
愛犬の背中を触って肋骨が薄い脂肪の下に感じられるか(ボディ・コンディション・スコア:BCS)をチェックしましょう。もし太り気味であれば、フードの量を厳密に計量し、低カロリーなダイエット用フードへの切り替えを検討してください。わずか数百グラムの減量でも、小型犬の膝への負担は大きく軽減されます。
関節サポート成分(グルコサミン・コンドロイチン)の活用
関節の健康維持に役立つ成分を積極的に摂取することもおすすめです。これらは薬のように即効性があるものではありませんが、長期的に続けることで関節軟骨の健康をサポートします。
- グルコサミン・コンドロイチン:軟骨の構成成分であり、関節のスムーズな動きを助けます。
- オメガ3脂肪酸(EPA・DHA):魚油などに含まれ、関節の健康維持に役立つとされています。
- 緑イ貝(グリーンリップドマッスル):抗酸化作用や抗炎症作用が期待される成分として注目されています。
サプリメントを選ぶ際は、成分の含有量が明記されているものや、動物病院で取り扱っている信頼性の高い製品を選ぶと安心です。
パテラ(膝蓋骨脱臼)に関するよくある質問 (FAQ)

Q. パテラは自然に治ることはありますか?
A. 残念ながら、パテラは骨格や靭帯の構造的な問題であるため、自然に治癒することはありません。成長期に一時的に症状が落ち着くこともありますが、根本的な原因は残っています。悪化させないためのケアや治療が必要です。
Q. グレード2と言われましたが、すぐに手術が必要ですか?
A. 必ずしもすぐに手術が必要とは限りません。症状の頻度、痛み、年齢などを総合的に判断します。ただし、若齢で症状が出ている場合は、骨の変形を防ぐために早期の手術が推奨されることもあります。かかりつけ医とよく相談してください。
Q. 手術をしても再発することはありますか?
A. 手術の成功率は高いですが、再発のリスクはゼロではありません。特にグレード4などの重度な症例や、術後の安静が守られなかった場合に再脱臼することがあります。術後の管理と定期検診が非常に重要です。
Q. 散歩はさせても大丈夫ですか?
A. 痛みがない状態であれば、適度な散歩は筋肉を維持するために大切です。ただし、急なダッシュやジャンプ、長時間の歩行は避け、平坦な道をゆっくり歩くようにしましょう。痛みがある時は無理せず休ませてください。
まとめ:愛犬に最適な治療法を選んでQOLを守るために
パテラ(膝蓋骨脱臼)は、多くの小型犬が抱える悩みですが、適切な治療とケアを行えば、これまで通り元気に走り回ることができる病気です。
手術を選ぶにせよ、保存療法を選ぶにせよ、最も大切なのは「愛犬の痛みを取り除き、生活の質(QOL)を守ること」です。飼い主様だけで悩まず、獣医師としっかりと話し合い、愛犬の性格やライフスタイルに合った最善の選択をしてあげてください。
そして、日々の体重管理や環境づくりを通じて、愛犬の健やかな足を一緒に守っていきましょう。



