【犬の認知症】吠え続ける愛犬にどう向き合う?原因の理解と薬・ケアの選択肢
Table of Contents
- 認知症の犬が吠え続ける理由とは?脳の変化と心理状態
- 認知機能不全(DISHAA)による不安と混乱
- 身体的な痛みや不快感が隠れている可能性
- 昼夜逆転による「夜鳴き」のメカニズム
- 自宅でできる「吠え」への対策と環境づくり
- 安心感を与える寝床と生活スペースの工夫
- 日光浴と適度な刺激で体内時計を整える
- 「要求吠え」と「認知症吠え」の見極めと対応
- 介護の限界を感じたら検討したい、動物病院での受診やサプリメントの活用
- 動物病院での薬物療法:期待できることと副作用のリスク
- 脳の健康維持をサポートする栄養素(DHA・EPAなど)
- サプリメントを取り入れる際の選び方と注意点
- 柴犬など日本犬に多い?犬種による傾向と対策
- 日本犬特有の気質と認知症ケアのポイント
- 飼い主さんだけで抱え込まないための外部サポート
- 老犬ホームやショートステイの活用を考えるタイミング
- 行動診療科でのカウンセリングという選択
- 飼い主自身の心をケアするために
- 「怒ってはいけない」と自分を追い詰めないで
- 認知症の犬の吠えに関するよくある質問 (FAQ)
- まとめ:愛犬と飼い主さんの双方が穏やかに過ごすために
- 認知症による吠えは「わがまま」ではなく、脳の機能不全や不安、不快感が原因です。
- 自宅でのケアに加え、薬物療法やサプリメントも選択肢の一つとして検討しましょう。
- 柴犬などの日本犬は認知症になりやすい傾向があり、特有のケアが必要です。
- 飼い主さんだけで抱え込まず、老犬ホームや行動診療科などの外部サポートを頼ることも大切です。
- 「怒ってはいけない」と自分を追い詰めず、愛犬とご自身の双方にとって穏やかな時間を守る方法を探しましょう。
「夜中になると愛犬がずっと吠え続けて、家族も眠れない」「何をしても鳴き止まない姿を見るのがつらい」……。長年連れ添った愛犬が認知症になり、変わっていく様子を目の当たりにするのは、飼い主さんにとって身を切られるような思いでしょう。これまで一生懸命ケアをしてきたけれど、もう限界かもしれないと悩んでいませんか?
認知症による吠えは、単なる「しつけ」の問題ではなく、脳の変化による病的な症状です。そのため、従来の対応だけでは改善が難しい段階に来ている可能性があります。
この記事では、なぜ吠え続けるのかという脳科学的な理由から、ご自宅での環境づくり、そして介護の限界を感じた時に検討すべき「医療・サプリメント」や「外部サポート」という次のステップについて、詳しく解説します。愛犬と飼い主さんが、少しでも心穏やかに過ごせるヒントが見つかるはずです。
認知症の犬が吠え続ける理由とは?脳の変化と心理状態

愛犬が理由もなく吠え続けたり、夜中に突然大きな声で鳴き出したりするのは、認知症(認知機能不全症候群)の代表的な症状の一つです。飼い主さんからすると「何かを訴えているのか?」「わがままになったのか?」と感じてしまうこともありますが、多くの場合、これは脳の老化に伴う機能低下が引き起こす行動です。
認知症が進行すると、脳の神経細胞が減少し、感情のコントロールや状況判断がうまくできなくなります。その結果、かつては平気だったことに対して過度な恐怖を感じたり、自分がどこにいるのか分からなくなったりして、パニックに近い状態で吠えてしまうのです。
まずは、この「吠え」が愛犬の意思によるものではなく、脳の変化によって引き起こされている「症状」であることを理解してあげることが、ケアの第一歩となります。
認知機能不全(DISHAA)による不安と混乱
犬の認知症の診断基準として、国際的に用いられている「DISHAA(ディシャ)」という分類があります。これは、見当識障害(Disorientation)、社会的相互作用の変化(Interactions)、睡眠覚醒サイクルの変化(Sleep)、粗相(House soiling)、活動性の変化(Activity)、そして不安(Anxiety)の頭文字をとったものです。
特に「吠え」に強く関連するのが、見当識障害による「混乱」と、病的な「不安」です。部屋の隅で動けなくなって吠える、知っているはずの家族を認識できずに警戒して吠えるといった行動は、世界が分からなくなってしまった恐怖の表れと言えます。脳内の神経伝達物質のバランスが崩れることで、常に強い不安感に襲われている状態なのです。
身体的な痛みや不快感が隠れている可能性
認知症の犬は高齢であるため、関節炎や歯周病など、身体的な痛みを抱えているケースが少なくありません。しかし、認知機能の低下により、痛みの感覚が鈍くなったり、逆に過敏になったりすることがあります。
「痛い」と適切に伝えられず、ただ漠然とした不快感として「吠え」に繋がっていることもあります。また、排泄のコントロールができず、おむつが濡れている不快感で鳴くこともあります。吠えの原因をすべて「認知症だから」と決めつけず、身体的な苦痛がないか獣医師にチェックしてもらうことも重要です。
昼夜逆転による「夜鳴き」のメカニズム
多くの飼い主さんを悩ませる「夜鳴き」は、体内時計の乱れによる昼夜逆転が主な原因です。健康な犬は、日中の光を浴びることで「セロトニン」というホルモンが分泌され、夜になるとそれが睡眠を促す「メラトニン」に変わります。
しかし、高齢になると視力が低下して光を感じにくくなったり、脳の機能低下でホルモン分泌がうまくいかなくなったりします。その結果、昼間はずっと寝て過ごし、夜になると目が覚めて活動的になり、不安や要求から吠え続けてしまうのです。これが典型的な昼夜逆転のメカニズムです。
自宅でできる「吠え」への対策と環境づくり

愛犬の吠えを完全に止めることは難しいかもしれませんが、環境を整えることで、その頻度や強さを和らげることは可能です。ポイントは「不安を取り除くこと」と「体内時計を整えること」の2点です。ここでは、ご自宅ですぐに実践できる具体的な対策をご紹介します。
ただし、これらはあくまで対症療法であり、効果には個体差があります。一つの方法に固執せず、愛犬の反応を見ながら柔軟に試してみてください。
安心感を与える寝床と生活スペースの工夫
認知症の犬は、広い空間にポツンと置かれると不安を感じやすくなります。以下の工夫で、物理的な安心感を作ってあげましょう。
- 狭いスペースを作る: サークル内や部屋の隅など、体が何かに触れていると安心する傾向があります。クッションや毛布で囲いを作り、狭くて暗い「巣穴」のような場所を用意してあげましょう。
- 飼い主の匂いをつける: 飼い主さんが着ていたTシャツやタオルを寝床に入れておくと、嗅覚からの情報で安心感を得られることがあります。
- 円形のサークルを活用する: 四角いサークルだと角で詰まって動けなくなり、パニックで吠えることがあります。お風呂マットなどを利用して円形のスペースを作ると、徘徊しても止まらずに歩き続けられるため、落ち着きやすくなります。
日光浴と適度な刺激で体内時計を整える
昼夜逆転を改善するためには、日中の過ごし方が鍵を握ります。無理に起こしておくのは可哀想に感じるかもしれませんが、夜ぐっすり眠ってもらうためのケアと考えましょう。
- 朝日を浴びさせる: 朝起きたらカーテンを開け、日光を浴びさせましょう。自力で歩けなくても、抱っこやカートで外の空気に触れるだけで脳への刺激になります。
- 日中の刺激を増やす: 食事を知育トイで与えたり、マッサージやブラッシングで体に触れたりして、日中の覚醒レベルを上げます。
- 夕方以降は照明を落とす: 夜は部屋を暗くし、静かな環境を作ることで「今は寝る時間だ」と体に教えます。
「要求吠え」と「認知症吠え」の見極めと対応
「水が飲みたい」「トイレに行きたい」「体勢を変えてほしい」といった具体的な要求がある場合の吠えと、認知症による混乱からの吠えを見極めることが大切です。
要求がある場合は、それに応えることで泣き止みます。一方、認知症によるパニック的な吠えの場合、声をかけたり撫でたりしても止まらない、あるいは逆に興奮してしまうことがあります。
認知症の吠えに対して「静かにしなさい!」と叱ることは逆効果です。犬はなぜ怒られているか理解できず、余計に不安になってしまいます。辛いですが、安全を確保した上で、落ち着くまで見守るという対応も時には必要です。
介護の限界を感じたら検討したい、動物病院での受診やサプリメントの活用

環境整備や日々のケアだけでは改善が見られず、飼い主さんの睡眠不足や疲労が限界に達している場合、次のステップとして「医療的な介入」を検討する時期かもしれません。「薬を使うのは怖い」「自然なままがいい」という気持ちもあるかと思いますが、適切な投薬やサプリメントの活用は、愛犬の不安を取り除き、穏やかな時間を増やすための有効な手段となり得ます。
ここでは、動物病院で相談できる薬物療法や、脳の健康維持をサポートする栄養素について解説します。これらは「完治」を目指すものではなく、症状をコントロールし、生活の質(QOL)を維持するためのものです。
動物病院での薬物療法:期待できることと副作用のリスク
動物病院では、症状に応じて睡眠導入剤や抗不安薬、精神安定剤などが処方されることがあります。これらは、夜間の睡眠を確保したり、パニック状態の脳を鎮めたりするのに役立ちます。
期待できること:
- 夜間のまとまった睡眠時間の確保(飼い主さんの休息にも繋がります)。
- 強い不安や興奮状態の緩和。
副作用とリスク:
- 持ち越し効果: 薬が効きすぎて、翌日の日中までふらつきや眠気が残ることがあります。
- 逆説反応: 稀に、興奮を抑えるはずの薬で逆に興奮してしまうことがあります。
- 内臓への負担: 高齢犬は肝臓や腎臓の機能が低下していることが多いため、血液検査などで状態を確認しながら慎重に投与する必要があります。
- 薬は「魔法」ではありません。獣医師と密に連携し、愛犬の状態を見ながら種類や量を細かく調整していくことが不可欠です。
脳の健康維持に役立つ栄養素(DHA・EPAなど)
薬までは使いたくない、あるいは薬と併用してケアしたい場合、脳の健康維持に役立つ栄養素を積極的に取り入れることが推奨されます。特に注目されているのが、オメガ3脂肪酸(DHA・EPA)や抗酸化成分です。
- DHA・EPA: 魚油に多く含まれる成分で、脳の神経細胞膜の柔軟性を保ち、健康な脳の機能を維持するのに役立つ成分として知られています。また、抗炎症作用もあり、老犬の健康維持に適しています。
- 抗酸化成分: ビタミンEやビタミンC、ポリフェノールなどは、脳の健康を維持することで、年齢とともに気になる「酸化ストレス」に配慮し、本来の健やかさを保つ助けとなります。
これらは即効性があるものではありませんが、長期的な視点で脳の健康をサポートするために取り入れたい栄養素です。
サプリメントを取り入れる際の選び方と注意点
現在は、認知症の犬向けに様々なサプリメントが販売されています。選ぶ際は、以下の点に注意しましょう。
- 成分の含有量: DHA・EPAや、フェルラ酸、イチョウ葉エキスなど、目的とする成分が十分に含まれているか確認しましょう。
- 形状と嗜好性: 錠剤、粉末、液体などがあります。食欲が落ちている老犬でも無理なく摂取できるものを選びましょう。
- 獣医師への相談: すでに何らかの薬を服用している場合、サプリメントとの飲み合わせに問題がないか、必ずかかりつけ医に確認してください。
サプリメントはあくまで「食品」であり、病気を治すものではありません。過度な期待はせず、日々のケアの補助として活用しましょう。
柴犬など日本犬に多い?犬種による傾向と対策

「うちの子は柴犬なんですが、認知症になりやすいと聞きました」という相談は非常に多く寄せられます。実際、柴犬をはじめとする日本犬は、洋犬に比べて認知症(特に痴呆症状)の発症率が高い傾向にあることが、いくつかの研究や臨床現場で指摘されています。
日本犬特有の気質や体質を理解しておくことは、早期発見や適切なケアを行う上で非常に重要です。ここでは、日本犬ならではの傾向と対策について解説します。
日本犬特有の気質と認知症ケアのポイント
柴犬などの日本犬は、もともと「我慢強い」「きれい好き」「こだわりが強い」といった気質を持っています。これが認知症の症状と結びつくと、ケアが難しくなることがあります。
- きれい好きゆえの徘徊・吠え: 寝床で排泄することを極端に嫌うため、トイレに行きたくなると必死に動き回り(徘徊)、出られないとパニックになって激しく吠えることがあります。トイレのタイミングを把握し、こまめに誘導してあげることが大切です。
- 頑固さと変化への抵抗: こだわりが強いため、環境の変化に敏感です。認知症になるとその傾向が強まり、少しの模様替えやルーティンの変化で混乱し、吠え続けることがあります。できるだけ生活リズムや環境を変えないことが安心に繋がります。
- 魚中心の食生活の歴史: 日本犬は古くから魚を多く食べる食文化の中で暮らしてきました。そのため、DHA・EPAなどの不飽和脂肪酸を積極的に取り入れたい体質であるという考え方もあります。若いうちから良質な魚油サプリメントなどで栄養補給をすることが、健やかな毎日を維持するための一助になるかもしれません。
飼い主さんだけで抱え込まないための外部サポート
愛犬の介護、特に終わりの見えない「吠え」や「夜鳴き」の対応は、飼い主さんの心身を確実に蝕んでいきます。「最期まで自分の手で面倒を見なければ」という責任感は素晴らしいですが、それで飼い主さんが倒れてしまっては元も子もありません。
介護はチーム戦です。家族だけでなく、プロの力を借りることは決して「育児放棄」や「愛情不足」ではありません。愛犬と笑顔で向き合うために、外部サポートの活用を前向きに検討してみましょう。
老犬ホームやショートステイの活用を考えるタイミング
老犬ホームや動物病院のペットホテルでは、介護が必要な犬を一時的、あるいは長期的に預かってくれるサービス(ショートステイや入居)を提供しているところがあります。
「夜だけでもぐっすり眠りたい」「数日だけ旅行に行ってリフレッシュしたい」といった理由で利用しても全く問題ありません。プロのスタッフは、夜鳴きや徘徊の対応にも慣れており、適切なケアを提供してくれます。飼い主さんが休息を取り、心に余裕を取り戻すことは、結果的に愛犬への優しいケアに繋がります。限界を迎える前に、見学や相談に行ってみることをおすすめします。
行動診療科でのカウンセリングという選択
一般的な動物病院とは別に、「行動診療科」という専門の診療科があることをご存知でしょうか。ここでは、獣医行動診療科認定医などの専門家が、動物の行動学や脳科学に基づいて診察を行います。
単に薬を出すだけでなく、ご自宅の環境や飼い主さんの生活スタイルを詳しくヒアリングし、その子に合った具体的な行動修正法や環境設定のアドバイスをしてくれます。「なぜ吠えるのか」を専門的な視点で分析してもらうことで、納得して対策に取り組めるようになります。
飼い主自身の心をケアするために
認知症の犬の介護で最も守らなければならないのは、実は「飼い主さん自身の心」です。毎晩の夜鳴きで睡眠不足になり、近隣への迷惑を気にして神経をすり減らし、出口の見えないトンネルの中にいるような気持ちになることもあるでしょう。
愛犬を大切に思うからこそ、辛くなるのです。ここでは、介護をする飼い主さんの心構えについてお伝えします。
「怒ってはいけない」と自分を追い詰めないで
「病気なんだから怒ってはいけない」「優しくしなければいけない」と頭では分かっていても、連日の夜鳴きにイライラして、つい愛犬にきつく当たってしまい、その後で激しい自己嫌悪に陥る……。これは多くの飼い主さんが経験することです。
人間ですから、感情的になるのは当たり前です。「怒ってはいけない」と自分を追い詰めるのはやめましょう。「今は余裕がないんだな」「疲れているんだな」と自分の状態を認め、物理的に愛犬から離れる時間を作ってください。耳栓をして別の部屋で寝る時間を作ったり、数時間だけ誰かに預けたりして、意識的に「介護から離れる時間」を持つことが、共倒れを防ぐ唯一の方法です。
認知症の犬の吠えに関するよくある質問 (FAQ)
Q. 認知症の吠えはいつまで続きますか?
A. 個体差が大きく一概には言えませんが、認知症の進行に伴い、吠える元気もなくなって静かになる時期(寝たきり期など)が来ることが一般的です。しかし、それまでの期間は数ヶ月から年単位に及ぶこともあります。飼い主さんの負担を減らすためにも、早めに獣医師に相談し、薬や対策を講じることが大切です。
Q. 睡眠薬を使うと、認知症が悪化しませんか?
A. 適切に使用すれば、睡眠薬自体が認知症を直接悪化させることはありません。むしろ、良質な睡眠をとることは心身のリラックスと、穏やかな生活の維持に役立ちます。ただし、薬が合わないとふらつきや食欲不振が出ることもあるため、獣医師と相談しながら慎重に使用する必要があります。
Q. 昼夜逆転を治すために、昼間無理やり起こしてもいいですか?
A. 無理やり揺すって起こすなどはストレスになるため避けましょう。日光浴をさせる、抱っこで散歩に行く、音や匂いで刺激を与えるなど、自然に覚醒を促す方法がおすすめです。日中の活動量を少しずつ増やすことで、夜間の睡眠を誘導します。
Q. 近所迷惑が心配でノイローゼになりそうです。どうすればいいですか?
A. まずは近隣の方に「高齢で認知症になり、夜鳴きをしてしまうことがあります」と事情を説明し、挨拶をしておくことが重要です。その上で、防音カーテンや防音ケージの導入を検討したり、どうしても辛い時は夜間だけ動物病院や老犬ホームに預けることも選択肢に入れてください。
まとめ:愛犬と飼い主さんの双方が穏やかに過ごすために
認知症の愛犬が吠え続ける姿を見るのは辛いものですが、それは愛犬が不安や混乱の中で一生懸命生きている証でもあります。原因を理解し、環境を整え、必要であれば医療や外部の力を借りることで、その苦しみを和らげることはできます。
どうか、飼い主さん一人で全てを背負い込まないでください。薬を使うことや施設に預けることは、決して「逃げ」ではありません。愛犬と飼い主さんの双方が、残された時間を少しでも穏やかに、笑顔で過ごすための賢明な選択です。今日からできることを一つずつ、無理のない範囲で試してみてください。

