犬の腎臓病の症状・原因・治療法をわかりやすく解説|早期発見のサインは?

犬の腎臓病の症状・原因・治療法をわかりやすく解説|早期発見のサインは?

Table of Contents

  • 犬の腎臓病の初期サインには、水を飲む量や尿の回数が増える「多飲多尿」や、食欲不振、体重減少などがあります。
  • 腎臓病には急激に悪化する「急性腎障害」と、ゆっくり進行する「慢性腎臓病」の2種類があり、特に高齢犬では慢性腎臓病が多く見られます。
  • 治療の基本は、腎臓への負担を減らすための食事療法や、脱水を防ぐための輸液療法です。
  • 完治が難しい病気ですが、早期に発見し、適切なサポートを続けることで、進行を穏やかにし、愛犬の生活の質を維持することが可能です。
  • 愛犬の些細な変化に気づいたら、自己判断せず、できるだけ早く動物病院に相談することが最も重要です。

最近、愛犬が水をたくさん飲むようになった、おしっこの量が増えた気がする、なんだか元気がない…。そんな些細な変化に、「もしかして何かの病気では?」と不安に感じていませんか。
特にシニア犬と暮らす飼い主さんにとって、「腎臓病」という言葉は心配の種かもしれません。腎臓病は、症状が分かりにくく、気づいたときには進行していることも少なくない病気です。しかし、病気について正しく理解し、早期発見のサインを知っておくことで、愛犬の負担を和らげ、穏やかな毎日をサポートすることができます。

この記事では、犬の腎臓病とはどのような病気なのか、飼い主さんが気づきやすい初期サインから、原因、診断方法、そして家庭でできるサポート方法まで、分かりやすく解説します。

もしかして…?飼い主が気づきやすい犬の腎臓病の初期サイン

犬の腎臓病は「沈黙の臓器」とも呼ばれる腎臓の病気であるため、初期段階では目立った症状が現れにくいのが特徴です。しかし、日々の生活の中で愛犬を注意深く観察していると、いくつかの変化に気づくことができます。これらのサインは、病気の早期発見につながる重要な手がかりとなります。「年のせいかな?」と見過ごさず、些細な変化にも気を配ることが大切です。

ここでは、飼い主さんが特に気づきやすい初期サインを3つのポイントに分けてご紹介します。愛犬の様子で当てはまることがないか、チェックしてみてください。

飲水量や尿の変化に注意

腎臓病の最も代表的な初期サインが「多飲多尿」です。これは、水を飲む量とおしっこの量が明らかに増える状態を指します。腎臓の機能が低下すると、尿を濃縮する能力が落ちてしまい、薄い尿を大量にするようになります。
その結果、体は水分不足に陥り、失われた水分を補おうとして水をたくさん飲むようになるのです。具体的には、以下のような変化が見られます。

  • 水を飲む時間が長くなった、一度に飲む量が増えた
  • おしっこの回数が増え、トイレシーツを交換する頻度が高くなった
  • おしっこの色が薄くなった、ほとんど無色に近くなった
  • 夜中におしっこで起きる、粗相が増えた

これらの変化は、腎臓病のサインである可能性を考え、注意深く観察しましょう。

食欲や体重の減少

食欲の低下や体重の減少も、見逃せないサインの一つです。腎機能が低下すると、体内に老廃物や毒素が溜まりやすくなります。この状態を「尿毒症」と呼び、その影響で吐き気や気分の悪さを感じ、食欲が落ちてしまうことがあります。「いつもは喜んで食べるおやつを食べたがらない」「フードを残すようになった」といった変化が見られたら注意が必要です。

また、食欲が落ちることで、自然と体重も減少していきます。なんとなく痩せてきた、背骨がごつごつと触れるようになったと感じたら、定期的に体重を測定し、記録しておくと良いでしょう。

元気がない・吐き気などの体調不良

なんとなく元気がない、ぐったりしている時間が増えた、というのも重要なサインです。腎臓病が進行すると、尿毒症による気分の悪さや、貧血などが原因で、活力が低下することがあります。以前は好きだった散歩や遊びに興味を示さなくなったり、寝てばかりいるようになったりしたら、体調不良のサインかもしれません。

また、吐き気をもよおして、実際に嘔吐してしまうこともあります。口からアンモニア臭(ツンとした臭い)がする口臭も、尿毒症の症状の一つです。これらの体調不良は他の病気の可能性もありますが、腎臓病のサインとして見られることが多い症状です。

犬の腎臓病とは?知っておきたい2つのタイプと進行ステージ

犬の腎臓病は、腎臓の機能が正常に働かなくなる状態を指します。腎臓は、血液をろ過して老廃物を尿として排泄したり、体内の水分やミネラルのバランスを調整したりと、生命維持に欠かせない重要な役割を担っています。この機能が低下することで、体に様々な不調が現れるのです。

犬の腎臓病は、その発症の仕方によって大きく2つのタイプに分けられます。それぞれの特徴と、病気の進行度を示す「ステージ」について理解を深めていきましょう。

急激に悪化する「急性腎障害」

急性腎障害(旧:急性腎不全)は、数時間から数日という非常に短い期間で、腎機能が急激に低下する病気です。中毒物質(ぶどう、ユリ科の植物、不凍液など)の誤飲、感染症、脱水、尿路結石による尿道の閉塞などが原因で起こります。
症状は急激に現れ、急な元気・食欲の消失、嘔吐、下痢、尿がほとんど出ない(無尿・乏尿)といった重篤な状態に陥ることが多いのが特徴です。

急性腎障害は、原因を特定し、迅速かつ適切な治療を行えば、腎機能が回復する可能性があります。しかし、治療が遅れると命に関わる危険な状態であり、回復したとしても一部の機能が失われ、慢性腎臓病に移行することもあります。緊急性の高い病気のため、疑わしい症状が見られたら、すぐに動物病院を受診する必要があります。

ゆっくり進行する「慢性腎臓病」

慢性腎臓病は、数ヶ月から数年という長い時間をかけて、腎臓の組織がゆっくりと壊れていき、腎機能が徐々に低下していく病気です。特に高齢の犬に多く見られ、加齢による腎機能の自然な低下や、他の病気(歯周病、心臓病など)が影響していることもあります。
初期段階ではほとんど症状がなく、飼い主さんが気づきにくいのが特徴です。多飲多尿などの症状が現れたときには、すでに腎機能の75%以上が失われていることも少なくありません。一度壊れてしまった腎臓の組織は、残念ながら元に戻ることはありません。そのため、慢性腎臓病の治療は、残された腎機能をできるだけ長持ちさせ、病気の進行を穏やかにし、愛犬の生活の質(QOL)を維持することを目的として行われます。

病気の進行度を示す「ステージ分類」とは?

慢性腎臓病は、その進行度合いを客観的に評価するために、国際獣医腎臓病研究グループ(IRIS)が提唱する「ステージ分類」が広く用いられています。これは、血液検査の数値(特にクレアチニンやSDMA)を基準に、病気の進行度を4つのステージに分けるものです。ステージが進むほど、腎機能の低下が著しいことを示します。この分類により、獣医師は病状を正確に把握し、各ステージに適した治療方針を立てることができます。

以下に、各ステージの一般的な目安と状態をまとめました。ただし、これらの数値はあくまで指標であり、実際の診断や治療は、尿検査の結果や血圧、臨床症状などを総合的に判断して行われます。

ステージ

クレアチニン(CRE)の数値目安 (mg/dL)

主な状態と症状

ステージ1

1.4未満

腎機能は低下し始めているが、血液検査の数値は正常範囲内。目立った臨床症状はほとんどない「無症状期」。SDMA検査で早期発見できることがある。

ステージ2

1.4~2.8

軽度の腎機能低下。多飲多尿などの症状が出始めることがあるが、まだ元気や食欲は保たれていることが多い。

ステージ3

2.9~5.0

中等度の腎機能低下。多飲多尿に加え、食欲不振、嘔吐、体重減少、貧血など、全身に様々な症状が現れ始める。尿毒症の症状が見られることも。

ステージ4

5.0以上

重度の腎機能低下。尿毒症が進行し、ぐったりして動けない、痙攣発作を起こすなど、命に関わる危険な状態。積極的な治療が必要となる。

なぜ腎臓病になるの?考えられる主な原因

愛犬が腎臓病と診断されたとき、多くの飼い主さんが「なぜうちの子が?」と感じるかもしれません。犬の腎臓病の原因は一つではなく、様々な要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。特にゆっくり進行する慢性腎臓病では、原因を特定することが難しい場合も少なくありません。

ここでは、犬の腎臓病を引き起こすと考えられている主な原因について解説します。原因を知ることは、病気の予防や早期発見にも繋がります。

加齢による腎機能の低下

犬も人間と同じように、年を重ねるにつれて体の様々な機能が衰えていきます。腎臓も例外ではなく、加齢とともに腎臓の細胞(ネフロン)が少しずつ壊れ、ろ過機能が低下していきます。
これが、高齢の犬に慢性腎臓病が多い最も一般的な理由です。特に7歳以上のシニア期に入るとリスクが高まるため、定期的な健康診断で腎臓の状態をチェックすることが重要になります。

歯周病や感染症などの他の病気

歯周病も腎臓病の重要なリスク因子です。歯周病菌が口内の血管から全身に広がり、腎臓にたどり着いて炎症を引き起こすことで、腎機能にダメージを与えると考えられています。
また、レプトスピラ症などの感染症や、心臓病、免疫介在性疾患、腫瘍といった他の病気が、腎臓に負担をかけ、腎臓病の原因となることもあります。日頃からの口腔ケアや、他の病気の適切な管理が、腎臓を守ることにも繋がります。

遺伝的な要因と腎臓病にかかりやすい犬種

腎臓病の中には、特定の犬種で発症しやすい遺伝的な素因が関わっているものもあります。家族性腎症など、遺伝的に腎臓の構造に異常があったり、特定の物質が腎臓に蓄積しやすかったりすることで、若いうちから腎臓病を発症することがあります。

以下のような犬種は、遺伝的に腎臓病のリスクが高いとされています。

  • シー・ズー
  • イングリッシュ・コッカー・スパニエル
  • ブル・テリア
  • サモエド
  • ケアン・テリア
  • ゴールデン・レトリーバー

これらの犬種を飼っている場合は、若いうちから腎臓の健康に注意を払うことが大切です。

中毒物質の誤飲・誤食

急性腎障害の主な原因となるのが、腎臓に毒性のある物質の誤飲・誤食です。犬にとって有害な食べ物や植物、化学物質などを口にしてしまうと、腎臓の細胞が急激に破壊され、重篤な腎障害を引き起こすことがあります。
特に注意が必要なのは、ぶどう(レーズン)、ユリ科の植物、人間の風邪薬(非ステロイド性抗炎症薬)、自動車の不凍液(エチレングリコール)などです。これらは犬の生活環境から遠ざけ、誤食を防ぐ工夫が不可欠です。

動物病院ではどんな検査をする?腎臓病の診断方法

愛犬に腎臓病が疑われる症状が見られた場合、動物病院では正確な診断のためにいくつかの検査を行います。これらの検査は、腎臓の機能がどの程度低下しているのか、体の他の部分に影響は出ていないか、そして病気の原因は何かを探るために非常に重要です。飼い主さんとしては、どのような検査が行われるのかを知っておくことで、獣医師からの説明をより深く理解し、安心して検査に臨むことができるでしょう。

ここでは、腎臓病の診断に用いられる代表的な検査について解説します。

血液検査:腎機能の数値(BUN, CRE, SDMA)をチェック

血液検査は、腎臓病の診断において最も基本的で重要な検査です。血液中に含まれる特定の物質の濃度を測定することで、腎臓のろ過機能が正常に働いているかを評価します。特に重要視されるのが以下の3つの項目です。

  • BUN(尿素窒素):タンパク質が分解された後にできる老廃物。腎機能が低下すると、うまく排泄できずに血液中の数値が上昇します。
  • CRE(クレアチニン):筋肉で作られる老廃物。BUNと同様に、腎機能が低下すると数値が上昇します。
  • SDMA(対称性ジメチルアルギニン):腎機能の早期発見に役立つ新しい指標です。BUNやCREが異常値を示すよりも早い段階(腎機能が約40%低下した時点)で上昇するため、病気の早期発見に非常に有効とされています。

尿検査:尿の濃さやタンパク質の有無を確認

尿検査も、腎臓の働きを評価するために欠かせない検査です。尿の濃さ(尿比重)を調べることで、腎臓が尿を濃縮する能力が保たれているかを確認します。腎機能が低下すると、薄い尿しか作れなくなるため、尿比重が低くなります。
また、尿中にタンパク質が漏れ出ていないか(タンパク尿)も重要なチェック項目です。タンパク尿は、腎臓にダメージがあることを示すサインであり、病気の進行度を判断する上での指標にもなります。その他、尿中に細菌や結晶がないかなども調べ、感染症や結石の有無を確認します。

画像診断(レントゲン・エコー検査):腎臓の形や大きさを診る

画像診断は、腎臓そのものの形や大きさ、内部の構造を視覚的に確認するために行われます。

レントゲン検査では、腎臓の大きさや形、腎臓や尿管の結石の有無などを大まかに把握することができます。より詳細な情報を得るためには、超音波(エコー)検査が非常に有用です。
エコー検査では、腎臓の内部構造を詳しく観察でき、嚢胞(のうほう)や腫瘍の有無、血流の状態などを確認することが可能です。これらの検査は、腎臓病の原因を探る上で重要な手がかりとなります。

愛犬の腎臓病と向き合う|負担を和らげるためのサポート方法

愛犬が腎臓病と診断されると、飼い主さんは大きな不安を感じるかもしれません。特に慢性腎臓病は、完治が難しい病気です。しかし、適切な治療と日々のケアを続けることで、病気の進行を穏やかにし、愛犬が快適に過ごせる時間を延ばすことは十分に可能です。大切なのは、病気と悲観的に向き合うのではなく、「愛犬の生活の質(QOL)をいかに維持していくか」という視点で、前向きにサポートしていくことです。

ここでは、愛犬の腎臓への負担を和らげるための治療やケアの選択肢について解説します。

進行を穏やかにするための治療の選択肢

犬の腎臓病の治療は、失われた腎機能を取り戻すことではなく、残された腎機能を守り、病気の進行をできるだけ遅らせることを目的とします。また、尿毒症などによって引き起こされる様々な症状を和らげ、愛犬の苦痛を取り除くことも重要な目的です。

治療法は、病気のステージや愛犬の全身状態によって異なり、獣医師と相談しながら最適な方法を選択していきます。ここでは、一般的に行われる治療法と、近年注目されている新しいアプローチについてご紹介します。

内科的治療(輸液療法・薬物療法)

輸液療法は、腎臓病の治療の基本となります。皮下点滴や静脈点滴によって体内に水分を補給し、脱水を改善するとともに、血液中の老廃物を尿として排泄しやすくする効果があります。これにより、尿毒症の症状を和らげることができます。病状が安定すれば、自宅で飼い主さんが皮下点滴を行うこともあります。

薬物療法では、腎臓の血流を改善する薬や、高血圧をコントロールする薬、リンの吸収を抑える薬(リン吸着剤)、吐き気を抑える薬などが、症状に合わせて処方されます。

再生医療などの先進的なアプローチ

近年では、従来の治療法に加えて、再生医療(幹細胞治療)という新しい選択肢も登場しています。これは、幹細胞を投与することで、傷ついた腎臓組織の炎症を抑えたり、残っている腎臓の細胞を保護したりする効果が期待される治療法です。
まだ全ての動物病院で受けられるわけではありませんが、腎臓病の進行を抑制する新しいアプローチとして注目されています。治療の選択肢の一つとして、かかりつけの獣医師に相談してみるのも良いでしょう。

毎日の基本となる「食事療法」のポイント

腎臓病の管理において、内科的治療と並行して非常に重要になるのが「食事療法」です。食事の内容を見直すことで、腎臓への負担を軽減し、病気の進行を穏やかにする効果が期待できます。腎臓病の食事管理の基本は、タンパク質、リン、ナトリウムを制限することです。
これらの成分は、健康な犬には必要不可欠ですが、腎機能が低下している犬にとっては、体内に蓄積してしまい、症状を悪化させる原因となります。獣医師の指導のもと、愛犬の状態に合った食事管理を始めることが、QOLの維持に繋がります。

療法食の選び方と注意点

食事療法を始めるにあたり、最も一般的で簡単な方法が、動物病院で処方される「腎臓病用療法食」を利用することです。これらのフードは、腎臓への負担を考慮して、タンパク質、リン、ナトリウムの含有量が厳密に調整されています。また、必要なエネルギーを確保し、食欲が落ちた犬でも食べやすいように工夫されているのが特徴です。ドライフードやウェットフード、様々な風味のものがありますので、愛犬の好みに合わせて選ぶことができます。急にフードを切り替えると食べてくれないこともあるため、今までのフードに少しずつ混ぜながら、1〜2週間かけてゆっくりと切り替えていきましょう。

おやつや手作り食を与える際の注意

療法食を食べている場合、おやつを与える際には注意が必要です。一般的な犬用おやつは、タンパク質やリン、塩分が多く含まれていることが多く、せっかくの食事療法の効果を損なってしまう可能性があります。おやつを与える場合は、腎臓病の犬に配慮された専用のおやつを選ぶか、かかりつけの獣医師に相談しましょう。

また、手作り食を与える場合は、栄養バランスの管理が非常に難しく、専門的な知識が必要です。自己判断で手作り食を始めると、かえって病状を悪化させてしまう危険性もあるため、必ず獣医師や専門家のアドバイスを受けてから行うようにしてください。

腎臓病を予防するために|今日からできる愛犬の健康管理

一度失われた腎機能は元に戻らないため、腎臓病は何よりも予防と早期発見が重要です。特に、加齢とともにリスクが高まる慢性腎臓病は、日々の生活習慣を見直すことで、発症を遅らせたり、進行を穏やかにしたりすることが期待できます。
愛犬の腎臓の健康を守るために、特別なことだけでなく、毎日の暮らしの中でできる小さな心がけが大切になります。

ここでは、飼い主さんが今日からすぐに実践できる、愛犬のための健康管理のポイントを3つご紹介します。

新鮮な水をいつでも飲める環境づくり

腎臓の負担を減らすためには、体内の老廃物をスムーズに排泄させることが大切です。そのためには、十分な水分摂取が欠かせません。愛犬がいつでも好きな時に新鮮な水を飲めるように、環境を整えてあげましょう。
家の複数箇所に水飲み場を設置したり、循環式の給水器を利用して常にきれいな水が飲めるように工夫したりするのも良い方法です。特に夏場や運動後は、脱水を起こしやすいので注意が必要です。いつでも水分補給ができる環境は、腎臓を守るための第一歩です。

定期的な健康診断で早期発見につなげる

症状が出にくい腎臓病を早期に発見するためには、定期的な健康診断が最も効果的です。特に7歳以上のシニア期に入ったら、年に1〜2回は健康診断を受けることをお勧めします。健康診断では、血液検査や尿検査によって、症状が現れる前の段階で腎機能の低下を発見できる可能性があります。
特に、早期発見の指標となるSDMA検査は、定期的に受けておくと安心です。病気の兆候をいち早く捉え、早期に対策を始めることが、愛犬の健康寿命を延ばす鍵となります。

口腔ケアで歯周病を防ぐ

意外に思われるかもしれませんが、お口の健康は腎臓の健康と密接に関係しています。歯周病の原因となる細菌が、血液に乗って全身を巡り、腎臓にダメージを与えることがあるからです。日々の歯磨きを習慣にし、歯垢や歯石が溜まらないようにケアしてあげましょう。
歯磨きが苦手な子には、デンタルガムやおもちゃを利用するのも一つの方法です。また、定期的に動物病院で歯のチェックをしてもらい、必要であれば歯石除去などの処置を受けることも、将来の腎臓病予防に繋がります。

まとめ:愛犬の変化に気づいたら、早めに動物病院へ相談を

犬の腎臓病は、特に高齢の犬にとっては身近な病気の一つです。初期症状が分かりにくいため、飼い主さんが「いつもと違うな」と感じる些細なサインが、病気の早期発見に繋がる唯一の手がかりとなることも少なくありません。
水を飲む量が増えた、食欲が落ちた、元気がないなど、この記事で紹介したような変化に気づいたら、決して自己判断せず、できるだけ早く動物病院を受診してください。獣医師に相談することで、正確な診断と、愛犬の状態に合わせた適切なアドバイスを受けることができます。

腎臓病は完治が難しい病気ですが、早期に発見し、適切なサポートを続けることで、愛犬との穏やかでかけがえのない時間を長く過ごすことが可能です。愛犬からの小さなサインを見逃さず、日々の健康管理を大切にしていきましょう。

犬の腎臓病に関するよくあるご質問(FAQ)

 

Q1. 犬の腎臓病は遺伝しますか?かかりやすい犬種はいますか?

 

A1. 全ての腎臓病が遺伝するわけではありませんが、一部には遺伝的な素因が関わっていると考えられているものもあります。特に、シー・ズー、イングリッシュ・コッカー・スパニエル、ブル・テリア、サモエドなどは、遺伝的に腎臓病を発症しやすい傾向があると報告されています。
これらの犬種と暮らしている場合は、若いうちから定期的な健康診断を受け、腎臓の状態をチェックしておくことをお勧めします。

 

Q2. 腎臓病と診断されたら、もう普通の生活は送れませんか?

 

A2. 腎臓病と診断されても、すぐに生活が大きく変わるわけではありません。特に初期の段階では、食事療法などを始めながら、これまで通り散歩に行ったり、遊んだりすることができます。
治療の目的は、病気の進行を穏やかにし、愛犬の「生活の質(QOL)」をできるだけ高く維持することです。獣医師と相談しながら、愛犬の体調に合わせて、無理のない範囲で楽しい毎日を送れるようにサポートしてあげることが大切です。

 

Q3. 療法食を全く食べてくれません。どうしたらいいですか?

 

A3. 腎臓病の犬は食欲が落ちやすいため、療法食を食べてくれないという悩みは少なくありません。まずは、フードを少し温めて香りを立たせたり、ウェットタイプのものに変えたり、複数のメーカーの療法食を試したりしてみましょう。
それでも食べない場合は、無理強いせず、かかりつけの獣医師に相談してください。食欲増進剤を処方してもらったり、療法食にこだわらず、獣医師の指導のもとで栄養バランスを調整した手作り食を検討したりするなど、他の方法を提案してもらえる場合があります。

 

Q4. 腎臓病の治療にはどのくらいの費用がかかりますか?

 

A4. 治療費は、病気の進行度(ステージ)や治療内容、通院頻度によって大きく異なります。初期段階であれば、定期的な検査と療法食の費用が中心となりますが、ステージが進み、頻繁な点滴や投薬が必要になると、費用は高くなる傾向があります。
具体的な金額は動物病院によっても異なるため、治療を始める前に、かかりつけの獣医師に費用の目安について確認しておくと安心です。ペット保険に加入している場合は、補償の対象となるかどうかも確認しておきましょう。

 

◆関連記事
犬の腎臓病の食事ガイド|食べて良いもの・悪いもの、療法食の選び方を解説

記事一覧に戻る