猫の歯が抜ける原因は?子猫と成猫・老猫の違いや対処法を解説

猫の歯が抜ける原因は?子猫と成猫・老猫の違いや対処法を解説

Table of Contents

  • 猫の歯が抜ける原因は年齢によって大きく異なり、子猫の場合はほとんどが心配のない「乳歯の生え変わり」です。
  • 成猫や老猫で歯が抜けるのは、歯周病などの病気のサインである可能性が高く、注意深い観察が必要です。
  • 口臭が強い、よだれが多い、食欲がないなどの症状が見られたら、すぐに動物病院を受診しましょう。
  • 予防の基本は毎日の歯磨き習慣です。歯が抜けてしまった後も、食事の工夫で快適な生活をサポートできます。

ある日、愛猫の口からポロリと歯が抜け落ちているのを見つけたら、飼い主さんなら誰でも驚き、心配になりますよね。「これって大丈夫なの?」「もしかして、どこか悪いのかな…」そんな不安な気持ちで、今このページを開いているのではないでしょうか。
猫の歯が抜ける原因は、実は年齢によって大きく異なります。子猫にとっては成長の証である一方、大人の猫にとっては見過ごせない病気のサインかもしれません。

この記事では、猫の歯が抜ける原因を年齢別にわかりやすく解説し、飼い主さんが今すべきこと、そしてこれからできる予防策まで、具体的にお伝えします。あなたの不安を安心に変えるための、最初の一歩を一緒に踏み出しましょう。

猫の歯が抜けた!まず確認すべきは「年齢」です

愛猫の歯が抜けているのを見つけたら、まず確認してほしいのが猫の「年齢」です。人間の子どもに乳歯から永久歯への生え変わりがあるように、猫にも同じような成長過程があります。
そのため、歯が抜けたのが子猫なのか、それとも成猫・老猫なのかによって、その意味合いは全く異なります。年齢を確認することが、緊急性を判断し、適切に対処するための最も重要な第一歩となります。まずは落ち着いて、愛猫がどのライフステージにいるのかを把握しましょう。

【子猫の場合】心配いらない「乳歯の生え変わり」がほとんど

もしあなたの愛猫が生後3ヶ月から6ヶ月頃の子猫であれば、歯が抜けるのは多くの場合、心配のいらない自然な現象です。子猫は生後2〜3週で乳歯が生え始め、生後3ヶ月頃から永久歯への生え変わりがスタートします。
この時期、乳歯が抜けて永久歯が下から顔を出すのです。抜けた乳歯はとても小さく、猫が飲み込んでしまうことも多いため、飼い主さんが気づかないケースも少なくありません。口の中を気にしてしきりにおもちゃを噛んだり、少し食欲が落ちたりすることもありますが、これらは生え変わりのサイン。過度に心配せず、成長の証として温かく見守ってあげましょう。

【成猫・老猫の場合】病気のサインの可能性大!注意深く観察を

一方、1歳以上の成猫や、特に7歳以上のシニア猫(老猫)の歯が抜ける場合は、単なる生え変わりではありません。ほとんどの場合、歯周病や口内炎といった口の中の病気が原因と考えられます。
これらの病気は、歯を支える歯茎や顎の骨にダメージを与え、最終的に歯が抜け落ちてしまうのです。また、事故による外傷や、稀ですが口腔内の腫瘍が原因となることもあります。成猫・老猫の歯が抜けた場合は、口の中に何らかのトラブルが起きているサインと捉え、口臭やよだれの量、食事の様子など、他の症状がないか注意深く観察することが非常に重要です。

【比較表】子猫と成猫・老猫の歯が抜ける違い

子猫と成猫・老猫では、歯が抜ける原因や対処法が大きく異なります。以下の表でその違いを簡潔にまとめました。愛猫の状況と照らし合わせて、冷静に判断するための参考にしてください。

項目

子猫(生後3〜6ヶ月頃)

成猫・老猫(1歳以上)

主な原因

乳歯から永久歯への生え変わり(生理的現象)

歯周病、口内炎、外傷などの病気やトラブル

緊急性

低い(基本的に心配ない)

高い(動物病院での診察が必要)

伴う症状

口を気にする、物をよく噛む

強い口臭、よだれ、食欲不振、痛み、歯茎の腫れ

飼い主さんの対応

経過観察、歯磨きの練習を始める良い機会

早めに動物病院を受診する

要注意!成猫・老猫の歯が抜ける4つの主な原因

成猫や老猫の歯が抜ける背景には、見過ごせない病気が隠れていることがほとんどです。ここでは、その代表的な4つの原因について詳しく解説します。愛猫の口の健康を守るためにも、どのような病気が歯の脱落につながるのかを知っておきましょう。

原因1:歯周病

成猫の歯が抜ける最も一般的な原因が「歯周病」です。歯周病は、歯の表面に付着した歯垢(プラーク)の中の細菌が原因で、歯茎に炎症が起こる「歯肉炎」から始まります。この段階でケアをしないと、炎症は歯を支える歯周組織や顎の骨(歯槽骨)にまで広がり、組織を破壊していきます。これが「歯周炎」です。
歯を支える土台が溶けてしまうと、歯はグラグラになり、最終的には自然に抜け落ちてしまいます。猫は痛みや不快感を隠すのが得意なため、飼い主さんが気づいたときには、すでに重度に進行していることも少なくありません。強い口臭、歯茎の赤みや腫れ、出血、硬いものを食べたがらないといったサインは、歯周病が進行している可能性があります。

原因2:歯頸部吸収病巣(はけいぶきゅうしゅうびょうそう)

「歯頸部吸収病巣(FORL)」も、猫に特有の歯が抜ける原因となる病気です。これは、歯を壊す働きを持つ「破歯細胞」が異常に活性化し、自分の歯を溶かしてしまう病気で、特に歯と歯茎の境目(歯頸部)から吸収が進むことが多いです。
原因は完全には解明されていませんが、3歳以上の猫の半数以上に見られるとも言われています。歯が溶ける過程で神経が露出し、強い痛みを伴うため、食事中に突然叫んだり、特定の側の歯で噛むのを避けたり、よだれが増えたりといった症状が見られます。進行すると歯冠(歯の見えている部分)が折れてしまい、歯が抜けたように見えることがあります。

原因3:口内炎(歯肉口内炎)

猫の口内炎、特に「歯肉口内炎」は、口の中の粘膜に激しい炎症が起こる病気です。口の奥や喉の周辺、舌、歯茎などが真っ赤に腫れ上がり、強い痛みを伴います。
原因ははっきりとはわかっていませんが、免疫の異常な反応が関わっていると考えられており、特定のウイルス感染(猫カリシウイルスなど)が引き金になることもあります。強い痛みから、食事や水を飲むことさえ困難になり、よだれが大量に出たり、毛づくろいをしなくなったりします。
炎症が歯の周りの組織にまで及ぶと、歯を支える力が弱まり、歯が抜けてしまうことがあります。治療の一環として、炎症の原因となる歯垢の付着を防ぐために、抜歯が選択されることもあります。

原因4:外傷(事故や喧嘩)や口腔内腫瘍

交通事故や高い場所からの落下、他の猫との喧嘩など、口に強い衝撃が加わることで歯が折れたり、抜けたりすることもあります。これを「外傷性」の原因と呼びます。

また、頻度は高くありませんが、口の中にできた腫瘍(口腔内腫瘍)が原因で歯が抜けることもあります。腫瘍が大きくなる過程で、歯を支える顎の骨を破壊してしまうためです。口からの出血が続く、顔が腫れている、急に口臭がひどくなったなどの症状が見られる場合は、これらの可能性も考え、すぐに動物病院で診てもらう必要があります。

愛猫の歯が抜けたらどうする?飼い主さんのための対処法

愛猫の歯が抜けたとき、飼い主さんは冷静に状況を観察し、適切に行動することが求められます。ここでは、動物病院へ行くべきかどうかの判断基準となるチェックリストや、病院での治療内容について具体的に解説します。

【チェックリスト】こんな症状は要注意!動物病院へ行くべきサイン

成猫・老猫の歯が抜けた場合、基本的には動物病院での診察が推奨されます。特に、以下のような症状が一つでも見られる場合は、早めに受診してください。子猫の生え変わり期でも、これらの症状が強く見られる場合は相談しましょう。

  • 強い口臭がある:腐敗臭や生臭いような、以前とは違う強いにおいがする。
  • よだれが多い:常によだれを垂らしている、口の周りや前足がよだれで汚れている。
  • 食欲がない、または食べ方がおかしい:ドライフードなど硬いものを避ける、片方の歯だけで噛む、食べるのに時間がかかる、食事中に鳴く。
  • 歯茎が赤い、腫れている、出血している:健康なピンク色ではなく、赤黒くなっていたり、血がにじんでいたりする。
  • 口を触られるのを嫌がる:以前は平気だったのに、口の周りを触ろうとすると怒ったり逃げたりする。
  • 顔の周りが腫れている:片方の頬や顎が腫れているように見える。
  • くしゃみや鼻水が出る:歯周病が進行し、鼻と口の間の骨が溶けてしまうと見られる症状。

動物病院での治療内容と費用の目安

動物病院では、まず口の中の状態を詳しく調べる視診や、必要に応じてレントゲン検査を行います。歯周病や歯頸部吸収病巣の診断には、歯を支える骨の状態を確認できるレントゲンが不可欠です。これらの検査や治療(歯石除去、抜歯など)は、猫が動かないように全身麻酔をかけて行われるのが一般的です。

治療内容は病気の進行度によって異なり、費用も大きく変わります。一般的な歯石除去(スケーリング)であれば数万円程度ですが、複数の歯を抜歯するような重度の歯周病治療では、術前検査や麻酔、手術費用を含めて10万円以上かかることもあります。具体的な費用は病院や地域によって異なるため、事前に確認しておくと安心です。

歯が抜けたまま放置するリスクとは?

「歯が1本抜けただけ」と軽く考えて放置してしまうと、様々なリスクがあります。歯周病が原因の場合、口の中の細菌が血管を通って全身に広がり、心臓病や腎臓病などの内臓疾患を引き起こす可能性があるとされています。

また、痛みを我慢し続けることで猫は大きなストレスを感じ、食欲不振から栄養状態が悪化することもあります。口のトラブルは、単に口だけの問題ではなく、愛猫の全身の健康と生活の質(QOL)に直結することを理解し、早めに対処することが大切です。

今日から始める!愛猫の歯が抜けるのを防ぐためのデンタルケア

愛猫の歯が抜ける原因の多くは、日々のケアで予防が期待できます。大切なのは、問題が起きてから対処するのではなく、問題が起きないように毎日の習慣を積み重ねることです。

ここでは、今日から始められる具体的なデンタルケアの方法をご紹介します。

基本は毎日の歯磨き習慣

歯が抜ける最大の原因である歯周病を予防するために、最も効果的なのが毎日の歯磨きです。歯垢は3日ほどで硬い歯石に変わってしまい、一度歯石になると歯磨きでは取れなくなります。そのため、歯石になる前の歯垢の段階で取り除くことが重要です。理想は毎日、少なくとも2〜3日に1回は歯磨きをしてあげましょう。

いきなり歯ブラシを口に入れると嫌がることが多いので、まずは口の周りを触ることから始め、歯磨きシートや指サック、そして歯ブラシへと少しずつステップアップしていくのが成功のコツです。美味しい味の歯磨きペーストを使うと、猫も受け入れやすくなります。

歯ブラシ・歯磨きペーストの選び方

猫用の歯ブラシは、ヘッドが小さく、毛が柔らかいものを選びましょう。人間の赤ちゃん用のものでも代用できます。歯磨きペーストは、猫が好むチキン風味やフィッシュ風味などがついているものがおすすめです。すすぎが不要なタイプがほとんどなので、安心して使えます。
キシリトールは猫にとって有害なため、人間用の歯磨き粉は絶対に使用しないでください。どの製品を選べばよいか迷ったら、動物病院で相談してみるのも良いでしょう。

デンタルケアグッズの活用(おやつ・おもちゃ)

どうしても歯磨きが難しい場合は、デンタルケア用のグッズを補助的に活用するのも一つの方法です。噛むことで歯垢が付きにくくなるように設計されたデンタルケア用のおやつや、歯磨き効果のあるおもちゃなどがあります。
これらは歯磨きの完全な代わりにはなりませんが、何もしないよりはずっと効果的です。おやつや遊びの時間に楽しみながら取り入れることで、猫のストレスなく口腔ケアをサポートできます。ただし、与えすぎは肥満の原因になるので注意しましょう。

定期的な動物病院での歯科検診

毎日のセルフケアと合わせて、動物病院での定期的な歯科検診も非常に重要です。年に1回は、健康診断の際に口の中もしっかりとチェックしてもらいましょう。家庭では見つけにくい奥歯の状態や、歯茎の微妙な変化など、専門家である獣医師の目で確認してもらうことで、病気の早期発見・早期治療につながります。
特に、歯石が付着している場合は、全身麻酔下での専門的なクリーニング(スケーリング)が必要になることもあります。定期的なプロのケアで、愛猫の口の健康を維持しましょう。

歯が抜けた・歯が全部ない猫の食事と生活の工夫

病気の治療などで歯が抜けたり、全ての歯を抜歯したりした猫でも、食事や生活環境を少し工夫するだけで、快適に過ごすことができます。歯がないからといって、食べる楽しみがなくなるわけではありません。飼い主さんのサポートで、愛猫の生活の質を保ってあげましょう。

食事はウェットフードやふやかしたドライフードを中心に

歯が少ない、あるいは全くない猫には、硬いドライフードは食べにくく、痛みを伴うこともあります。食事の基本は、ウェットフードやペースト状のフードに切り替えることです。栄養バランスが気になる場合は、総合栄養食と記載されているウェットフードを選びましょう。
ドライフードを続けたい場合は、ぬるま湯でふやかして柔らかくしてから与えると食べやすくなります。ふやかすことで香りも立ち、食欲を刺激する効果も期待できます。猫は歯で食べ物をすり潰すのではなく、飲み込むように食べることが多いため、歯がなくても工夫次第でしっかりと栄養を摂ることができます。

まとめ:愛猫の口の健康は日々の観察とケアから

愛猫の歯が抜けるという出来事は、飼い主さんにとって大きな心配事ですが、その原因を正しく理解し、冷静に対処することが何よりも大切です。子猫であれば成長の証、成猫・老猫であれば病気のサイン。この違いを念頭に置き、口臭や食欲の変化など、日頃から愛猫の小さなサインを見逃さないようにしましょう。
そして、歯周病予防の鍵となる毎日の歯磨きを習慣にすることが、愛猫が長く自分の歯で美味しくごはんを食べられる未来につながります。愛猫の口の健康は、飼い主さんの日々の観察と愛情のこもったケアによって守られるのです。

猫の歯が抜けることに関するよくある質問(FAQ)

抜けた歯を見つけたら、どうすればいいですか?

抜けた歯は、動物病院を受診する際に持参すると、診断の参考になる場合があります。特に成猫の歯が抜けた場合は、歯の状態(根っこが残っているか、折れているかなど)を獣医師に見てもらうと良いでしょう。子猫の乳歯であれば、記念に取っておく飼い主さんもいますが、特に保管の必要はありません。

老猫(シニア猫)ですが、今から歯磨きを始めても意味はありますか?

はい、何歳からでもデンタルケアを始めることに意味はあります。もちろん、子猫の頃から慣れている方がスムーズですが、老猫でも少しずつ慣らすことで歯磨きができるようになる子はいます。無理強いはせず、まずは口に触れることから始め、美味しい歯磨きペーストを舐めさせるなど、ポジティブな経験をさせてあげましょう。歯磨きが難しい場合でも、デンタルリンスやサプリメントなど、他のケア方法もあるので動物病院で相談してみてください。

歯が全部なくても、猫は生活できますか?

はい、問題なく生活できます。重度の口内炎や歯周病の治療で全ての歯を抜く(全抜歯)ことがありますが、多くの猫は痛みの原因だった歯がなくなることで、むしろ食欲が戻り、元気になります。食事をウェットフードやふやかしたドライフードに工夫すれば、問題なく栄養を摂ることができます。歯がないことで生活の質が著しく下がることはありませんので、ご安心ください。


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