愛猫が突然、白い泡を吐いたら、飼い主さんなら誰でも驚き、心配になりますよね。「何か大変な病気だったらどうしよう」「すぐに病院に連れて行くべき？」と、不安で頭がいっぱいになってしまうかもしれません。そのお気持ち、とてもよくわかります。

しかし、猫が白い泡を吐く原因は、実は一つではありません。多くは一時的な生理現象である一方、中には注意が必要な病気のサインが隠れていることもあります。

この記事では、そんな飼い主さんの不安を少しでも和らげるために、猫が白い泡を吐く原因から、ご自宅でできること、そして動物病院へ行くべきかどうかの具体的な判断基準まで、順を追って分かりやすく解説します。まずは落ち着いて、愛猫の様子を一緒に確認していきましょう。

猫が白い泡を吐いた！まず飼い主さんが落ち着いて確認すべきこと

愛猫が吐いている姿を見ると、どうしても慌ててしまいますが、まずは飼い主さん自身が深呼吸をして落ち着くことが大切です。パニックにならず、冷静に猫の様子を観察することが、的確な判断につながります。吐いた直後は猫も不安を感じていますから、優しく声をかけ、静かに見守ってあげましょう。

そして、これからお伝えするポイントを一つひとつ確認してみてください。その観察記録が、後で動物病院にかかる際に非常に重要な情報となります。

【緊急度チェックリスト】今の猫の様子を確認しよう

まずは、吐いた後の愛猫の様子を客観的に見てみましょう。以下の簡単なチェックリストで、現在の状況を把握してください。一つでも当てはまる場合は、緊急性が高い可能性があります。

• ぐったりしていて、元気がないか？
• 食欲が全くないか？
• 何度も繰り返し吐いているか？
• 下痢やけいれんなど、他の症状も出ているか？
• 呼吸が速い、または苦しそうにしていないか？

これらの項目をチェックするだけでも、状況の深刻度をある程度判断することができます。

動物病院に伝えるための記録ポイント

もし動物病院に連れて行くことになった場合、正確な情報が迅速な診断の助けになります。スマートフォンなどを活用して、以下の点を記録しておきましょう。

• 吐いたもの（可能であれば写真や動画を撮っておく）
• 吐いた回数と時間
• 嘔吐する前の様子（どんな行動をしていたか）
• 嘔吐以外の症状（下痢、食欲不振、元気消失など）
• 最後に食事をした時間と内容

これらの記録は、獣医師が原因を特定するための重要な手がかりとなります。

猫が白い泡を吐く主な原因とは？

猫が白い泡を吐く原因は、大きく分けて2つあります。一つは、あまり心配のいらない「生理的な原因」。もう一つは、病気のサインかもしれない「注意が必要な原因」です。

それぞれの可能性を理解することで、愛猫の状態をより深く把握することができます。

心配が少ない生理的な原因

猫はもともと吐きやすい動物です。特に白い泡の嘔吐は、日常生活の中で起こりやすい生理現象であることが少なくありません。まずは、比較的心配の少ない原因から見ていきましょう。

ただし、これらの原因であっても、頻繁に繰り返す場合や他の症状が見られる場合は注意が必要です。愛猫の普段の様子と比べながら、じっくりと観察してあげてください。

空腹による胃液の逆流

猫が吐く白い泡の正体は、多くの場合「胃液」です。特に、食事と食事の間隔が長く空いてしまうと、胃が空っぽの状態になります。空腹時に分泌された胃酸が胃を刺激し、その胃液が逆流して吐き出されることがあります。
これは、唾液と混ざって泡状になるため、白い泡のように見えます。特に朝方や食事の前に吐く場合は、この空腹が原因である可能性が高いでしょう。

毛玉（ヘアボール）を吐き出す準備

猫はグルーミング（毛づくろい）によって、自分の毛を飲み込んでしまいます。通常、飲み込んだ毛は便と一緒に排出されますが、胃の中に溜まって毛玉（ヘアボール）になることもあります。
この毛玉を吐き出す際に、まず胃液などの液体だけを先に吐き出すことがあります。白い泡を吐いた後に、毛玉の塊を吐き出せば、すっきりして元気になることがほとんどです。

食べ過ぎ・早食い

一度にたくさんのフードを食べたり、急いで食べたりすると、胃がびっくりして消化が追いつかず、食べたものを吐き戻してしまうことがあります。特に、フードがまだ消化されていない段階で吐いた場合、胃液と混ざった白い泡状の液体を一緒に吐くことがあります。多頭飼いで他の猫のご飯を奪ってしまったり、食いしん坊な性格の猫によく見られる原因です。

注意が必要な病気のサイン

一方で、白い泡の嘔吐が何らかの病気のサインである可能性も忘れてはいけません。生理的な嘔吐との大きな違いは、元気や食欲がなくなったり、下痢など他の症状を伴ったりすることが多い点です。
もし、愛猫の様子が「いつもと違う」と感じたら、これから挙げるような原因も考えられます。少しでも気になる点があれば、自己判断せずに動物病院に相談することが重要です。

胃腸炎など消化器の不調

ウイルスや細菌の感染、食事内容の急な変更、ストレスなどが原因で、胃や腸に炎症が起こる「胃腸炎」になると、嘔吐を引き起こすことがあります。この場合、白い泡だけでなく、黄色い液体（胆汁）を吐いたり、下痢を伴ったりすることも多いです。嘔吐が続くことで脱水症状に陥る危険もあるため、早めの対処が求められます。

誤飲・誤食や中毒

猫が食べてはいけないものを口にしてしまった場合も、嘔吐の原因となります。おもちゃの破片やビニール、紐などを飲み込んでしまう「誤飲」や、人間用の薬、観葉植物、殺虫剤などを口にしてしまう「中毒」が考えられます。
これらは腸閉塞や内臓の損傷を引き起こす可能性があり、命に関わる危険な状態です。何かを誤飲した可能性がある場合は、すぐに動物病院を受診してください。

ストレス

猫は非常にデリケートな動物で、環境の変化に敏感です。引っ越し、新しいペットや家族の増加、長時間の留守番、騒音などが大きなストレスとなり、体調を崩して嘔吐してしまうことがあります。
ストレスが原因の場合、嘔吐以外にも、食欲不振、過剰なグルーミング、トイレ以外での排泄といった行動の変化が見られることもあります。原因となるストレスを取り除いてあげることが大切です。

【重要】動物病院へ行くべき？緊急性の判断基準

飼い主さんにとって最も知りたいのは、「今すぐ病院へ行くべきか、それとも家で様子を見ても大丈夫か」という点でしょう。

ここからは、その判断基準をより具体的に解説します。愛猫の命を守るために、しっかりと確認してください。

すぐに受診すべき危険な症状チェックリスト

以下の症状が一つでも見られる場合は、夜間や休日であっても、すぐに動物病院を受診することを強く推奨します。これらは重篤な病気が隠れているサインかもしれません。

• 1日に何度も吐く、または数日間嘔吐が続いている：脱水症状のリスクが非常に高い状態です。
• ぐったりして動かない、元気がない：体が深刻なダメージを受けている可能性があります。
• 食欲が全くなく、水も飲まない：体力の消耗が激しく、危険な状態です。
• 嘔吐物の中に血や異物（おもちゃの破片など）が混ざっている：消化管の出血や閉塞が疑われます。
• 下痢、けいれん、呼吸困難など、嘔吐以外の症状がある：全身性の病気や中毒の可能性があります。
• お腹を触ると痛がる、またはお腹が張っている：腹膜炎や腸閉塞など、緊急手術が必要なケースも考えられます。
• 繰り返し吐こうとするが何も出ない：胃捻転や異物による閉塞のサインかもしれません。

これらのサインを見逃さず、迅速に行動することが重要です。

自宅で様子を見ても良い場合の条件

一方で、以下のような条件をすべて満たす場合は、少し自宅で様子を見ても良い可能性があります。

ただし、これはあくまで一時的な判断基準です。少しでも状態が悪化したり、不安が残る場合は、迷わず獣医師に相談してください。

• 嘔吐は1回だけで、その後は繰り返していない
• 吐いた後、ケロッとしていて元気がある
• 食欲があり、普段通りにご飯を欲しがる
• 水をちゃんと飲んでいる
• 下痢など、他の症状が見られない

この場合、食事を少しお休みさせ、胃を休ませてから、少量ずつフードを与えてみましょう。それでも状態が安定しているか、注意深く観察を続けてください。

子猫や老猫の場合に特に注意したいこと

子猫や老猫（シニア猫）が白い泡を吐いた場合は、特に注意が必要です。これらの猫は体力や免疫力が成猫に比べて低いため、一度の嘔吐でも体力を大きく消耗し、脱水症状に陥りやすい傾向があります。

成猫であれば様子を見ても良いような状況でも、子猫や老猫の場合は、念のため早めに動物病院に連絡し、指示を仰ぐことをお勧めします。判断に迷ったら、「大事をとって受診する」という選択が賢明です。

嘔吐物の色や状態でわかること｜白い泡以外のケース

嘔吐物の色や状態は、猫の体の中で何が起きているかを知るための重要なヒントになります。白い泡以外の嘔吐物についても知っておくことで、より的確な状況判断ができるようになります。ここでは、色別の特徴と考えられる原因を解説します。

嘔吐物の状態比較表

嘔吐物の色や状態によって、考えられる原因や緊急度が異なります。以下の表は、その目安をまとめたものです。愛猫の吐いたものを確認する際の参考にしてください。

色 / 状態	考えられる主な原因	緊急度の目安
透明・白い泡	胃液、唾液（空腹、毛玉、ストレスなど）	他に症状がなければ低い。続く場合は注意。
黄色・緑色	胆汁（空腹時間が長い、肝臓や膵臓の不調）	続く場合は受診を検討。
茶色	消化されたフード、または古い血液（消化管上部の出血）	フードなら様子見。血液の疑いがあれば受診。
ピンク色・赤色	血液（口の中、食道、胃などからの新鮮な出血）	高い。すぐに動物病院へ。

黄色・緑色の液体：胆汁

黄色や緑色の液体は、十二指腸から分泌される「胆汁」が胃に逆流したものです。胆汁は脂肪の消化を助ける液体で、苦味があります。これも空腹時間が長いときに吐くことが多いですが、あまりに頻繁に吐く場合は、膵炎や肝臓の病気など、消化器系の不調が隠れている可能性も考えられます。嘔吐が続くようであれば、一度獣医師に相談しましょう。

茶色の液体：フードまたは古い血液の可能性

茶色い嘔吐物には、二つの可能性があります。一つは、消化されかかったフードの色です。この場合は、フードの粒が混じっていることが多く、あまり心配はいりません。

もう一つ注意が必要なのは、胃や十二指腸など、消化管の上部で出血した場合です。血液が胃酸によって酸化すると、茶色っぽく見えることがあります。コーヒーかすのようなものが混じっている場合は、出血の可能性を疑いましょう。

ピンク色・赤色：血液が混ざっている可能性

嘔吐物にピンク色や鮮やかな赤色が混じっている場合は、明らかに血液が混入しています。これは「吐血」といい、緊急性の高いサインです。口の中や食道、胃などからの新鮮な出血が考えられます。

原因としては、胃潰瘍や腫瘍、誤飲した異物による消化管の損傷などが疑われます。嘔吐物に少しでも血が混じっていたら、様子を見ずに、直ちに動物病院を受診してください。

白い泡の嘔吐の裏に隠れている可能性のある病気

「ただの胃液だろう」と思われがちな白い泡の嘔吐ですが、その背景に深刻な病気が隠れていることもあります。特に、嘔吐が慢性的であったり、他の症状を伴ったりする場合は注意が必要です。ここでは、考えられる代表的な病気について解説します。

消化器系の病気（膵炎、炎症性腸疾患など）

白い泡の嘔吐は、消化器そのものの病気のサインかもしれません。例えば「膵炎」は、消化酵素を出す膵臓に炎症が起こる病気で、激しい嘔吐や腹痛、食欲不振を引き起こします。

また、「炎症性腸疾患（IBD）」は、腸に慢性的な炎症が起こる病気で、嘔吐や下痢が主な症状です。これらの病気は、食事が原因で悪化することもあり、特別な治療や食事管理が必要になる場合があります。

全身性の病気（腎臓病、肝臓病、甲状腺機能亢進症など）

消化器以外の病気が原因で、吐き気を催すこともあります。特に高齢の猫に多い「慢性腎臓病」では、体内に老廃物が溜まることで胃の粘膜が荒れ、嘔吐を引き起こします。

同様に、「肝臓病」でも体内の毒素を分解できなくなり、吐き気につながります。また、「甲状腺機能亢進症」というホルモンの病気では、代謝が活発になりすぎることで消化器に負担がかかり、嘔吐や下痢が見られることがあります。

動物病院ではどんな検査や処置をするの？

「病院に連れて行ったら、何をされるんだろう？」と不安に思う飼い主さんもいるかもしれません。事前に検査の流れを知っておくことで、少しでも安心して受診できるはずです。

ここでは、動物病院で行われる一般的な検査や処置について説明します。

獣医師に伝えるべき情報

診察室では、まず飼い主さんから詳しい話を聞く「問診」が行われます。このとき、事前に記録しておいた情報が非常に役立ちます。
いつから、何回吐いたか、嘔吐物の様子、元気や食欲の状態、他に変わったことはないか、などをできるだけ正確に伝えましょう。嘔吐物の写真や動画を見せるのも、非常に有効です。的確な情報提供が、スムーズな診断につながります。

主な検査内容（問診、血液検査、画像診断など）

問診と、獣医師が猫の体を触って確認する「身体検査」の後、必要に応じてさらに詳しい検査が行われます。一般的には、以下のような検査が考えられます。

• 血液検査：脱水の状態や、内臓（腎臓、肝臓、膵臓など）の機能に異常がないか、炎症の有無などを数値で確認します。
• レントゲン検査：異物の誤飲や腸閉塞、腫瘍の有無などを確認するために行います。
• 超音波（エコー）検査：レントゲンでは分かりにくい、各臓器の内部構造や炎症の様子を詳しく観察することができます。

これらの検査結果を総合的に判断し、原因を特定した上で、点滴や吐き気止め、内服薬などの治療が行われます。

家庭でできる嘔吐の予防とケア

愛猫の嘔吐は、日々のちょっとした工夫で予防できる場合もあります。もちろん、病気が原因の場合は治療が最優先ですが、ここでは家庭でできる予防策やケアについてご紹介します。愛猫が快適に過ごせる環境を整えてあげましょう。

食事の管理で空腹時間をなくす工夫

空腹による胃液の逆流を防ぐためには、食事の間隔をできるだけ短くすることが効果的です。1日の食事量は変えずに、食事の回数を2回から3〜4回に増やしてみましょう。自動給餌器（オートフィーダー）を活用するのも良い方法です。

また、早食いをしてしまう猫には、一気に食べられないように設計された早食い防止用の食器を使うのもおすすめです。

定期的なブラッシングで毛玉対策

毛玉（ヘアボール）が原因の嘔吐を防ぐには、飲み込む毛の量を減らすことが一番です。特に長毛種の猫や換毛期には、こまめにブラッシングをして、抜け毛を取り除いてあげましょう。
ブラッシングは、猫とのスキンシップの時間にもなります。また、毛玉の排出をサポートする成分が含まれたフードやサプリメントを取り入れるのも一つの方法です。

誤飲を防ぐための環境整備

猫は何に興味を持つか分かりません。好奇心から、危険なものを口にしてしまう事故を防ぐためには、飼い主さんが生活環境を整えることが不可欠です。猫が口にしそうな小さなもの（輪ゴム、紐、アクセサリーなど）は、猫の手の届かない場所にしまいましょう。

また、猫にとって有毒な観葉植物や化学薬品（洗剤、殺虫剤など）は、室内に置かないように注意してください。

まとめ：愛猫のサインを見逃さず、適切な対応を

猫が白い泡を吐く原因は、心配の少ない生理的なものから、緊急性の高い病気のサインまで様々です。大切なのは、飼い主さんが慌てずに愛猫の様子をよく観察し、「いつもと違う」というサインを見逃さないことです。

この記事でご紹介したチェックリストや判断基準を参考に、もし少しでも不安を感じたら、迷わず動物病院に相談してください。獣医師に相談することが、愛猫の健康を守るための最も確実な一歩です。

猫が白い泡を吐くことに関するよくある質問（FAQ）

 

「猫はよく吐く生き物」と聞きますが、本当ですか？

 

はい、猫は他の動物に比べて嘔吐をしやすい動物です。これは、毛玉を吐き出したり、食べ過ぎたものを調整したりするための生理的な機能の一つと考えられています。
しかし、「よく吐くから大丈夫」と安易に判断するのは危険です。嘔吐の頻度が増えたり、元気や食欲がなくなったりした場合は、単なる生理現象ではない可能性を考え、注意深く観察する必要があります。

 

吐いた後、食事や水はすぐに与えてもいいですか？

 

吐いた直後は、胃が刺激に敏感になっています。すぐに食事や水を与えると、再び吐いてしまう可能性があります。嘔吐後、1〜2時間ほどは絶食・絶水させて胃を休ませてあげましょう。
その後、水を少量与えてみて、吐かなければ普段の食事を少しずつ与えてみてください。もし水を飲んだだけでも吐いてしまう場合は、動物病院に相談しましょう。

 

ストレスが原因の場合、どうすればいいですか？

 

もしストレスが原因で嘔吐していると考えられる場合、まずは何がストレス源になっているのかを探ることが大切です。引っ越しや新しいペットなど、環境の変化に慣れるまでには時間が必要です。猫が安心して過ごせる隠れ家や高い場所を用意してあげましょう。
また、飼い主さんが優しく声をかけたり、おもちゃで一緒に遊んであげたりする時間を増やすことも、猫の不安を和らげるのに役立ちます。