犬の血尿は危険なサイン?考えられる原因と飼い主ができる対処法を解説

犬の血尿は危険なサイン?考えられる原因と飼い主ができる対処法を解説

Table of Contents

  • 愛犬の血尿に気づいたら、まずは落ち着いてこの記事で紹介する緊急性の高いサインを確認しましょう。
  • 元気そうに見えても、血尿は病気のサインかもしれません。自己判断で様子を見ず、必ず動物病院に連絡してください。
  • この記事では、血尿の主な原因から、動物病院での検査、家庭でできる予防法までを分かりやすく解説します。
  • 日頃から愛犬の尿の色や回数をチェックする習慣が、病気の早期発見につながります。

愛犬の血尿に気づいたら?飼い主さんが今すぐ確認・行動すべきこと

ある日突然、愛犬のおしっこが赤いことに気づいたら、誰でも驚き、不安な気持ちになりますよね。「もしかして、重い病気なのでは…」と頭が真っ白になってしまうかもしれません。しかし、こんな時こそ飼い主さんが冷静に行動することが、愛犬の健康を守るために何よりも大切です。

犬の血尿は、さまざまな原因によって起こります。中には緊急を要する場合もありますが、慌ててしまうと大切なサインを見逃したり、適切な初動が遅れたりすることもあります。まずは深呼吸をして、これからお伝えするポイントを一つひとつ確認していきましょう。

このセクションでは、愛犬の血尿に気づいた飼い主さんが「今すぐ」何をすべきかを、具体的なステップに沿って解説します。正しい知識を持って、愛犬のために最善の行動をとってあげましょう。

まずは落ち着いて!緊急性が高い血尿のサイン

血尿に加えて、以下のような症状が見られる場合は、緊急性が高い可能性があります。夜間や休日であっても、すぐに救急対応可能な動物病院に連絡してください。

  • おしっこが全く出ていない、またはポタポタとしか出ない
  • 排尿時に痛そうに鳴く、苦しそうな様子を見せる
  • ぐったりしていて元気がない、食欲もない
  • お腹を触るとひどく嫌がる、痛がる
  • 何度もトイレに行くが、おしっこが出ていない
  • 嘔吐を繰り返す

これらのサインは、尿道が完全に詰まってしまう「尿路閉塞」など、命に関わる状態を示していることがあります。

すぐに動物病院へ連絡し、指示を仰ぐ

たとえ元気そうに見えても、血尿は体からの重要なサインです。自己判断で「少し様子を見よう」と考えるのは危険です。まずはかかりつけの動物病院に電話をしましょう。現在の愛犬の様子、血尿の色や量、他に気になる症状などを具体的に伝え、獣医師の指示を仰いでください。

可能であれば尿を採取する

動物病院へ行く際に、新鮮な尿を持参できると診断がスムーズに進みます。ペットシーツを裏返してツルツルした面で受け止めたり、清潔なお玉やトレーを使ったりして採取しましょう。採取した尿は、きれいな容器(醤油さしなども便利です)に入れ、できるだけ早く病院へ持っていきましょう。

そもそも犬の「血尿」とは?元気そうに見えても注意が必要な理由

愛犬の血尿に気づいても、本人はケロッとしていて元気そうに見えることがあります。そのため、「少し様子を見ても大丈夫かな?」と思ってしまう飼い主さんも少なくありません。しかし、犬の「血尿」は、見かけの元気さとは裏腹に、体内で何らかの異常が起きていることを示す重要なサインです。なぜ注意が必要なのか、血尿の基本から理解を深めていきましょう。

犬は不調を言葉で伝えることができません。また、本能的に弱っている姿を隠そうとすることもあります。そのため、飼い主さんが気づける数少ない変化の一つが、尿や便といった排泄物です。血尿は、飼い主さんだけが気づける愛犬からのSOSサインなのです。

血尿の定義:どこから出血している?

血尿とは、その名の通り尿に血液が混じった状態を指します。専門的には「血色素尿」とも呼ばれます。この血液は、腎臓、尿管、膀胱、尿道といった「泌尿器」のどこかから出血していることを意味します。

出血の原因は、炎症や結石による傷、腫瘍など様々です。尿の通り道のどこかでトラブルが起きている証拠であり、決して軽視してはいけません。

血尿と間違いやすい「赤い尿」との見分け方

「尿が赤い=血尿」とすぐに結びつけてしまいがちですが、実は血尿以外にも尿が赤っぽく見えることがあります。これらを区別することは、原因を特定する上で非常に重要です。

ただし、最終的な判断は動物病院での検査が必要です。飼い主さん自身で判断せず、あくまで参考情報としてください。

種類

特徴

考えられる原因の例

血尿

尿に赤血球が混じる。尿を放置すると赤い成分が沈殿することがある。

膀胱炎、尿石症、腫瘍、外傷など

血色素尿

血液中の赤血球が壊れ、色素(ヘモグロビン)が尿に出る。全体が均一に赤~茶色になる。

タマネギ中毒、免疫の病気、重度の熱中症など

その他

食べ物や薬の色素、発情期の出血が混じるなど。

ビーツなどの食材、特定の薬、メス犬の発情出血など

犬の血尿で考えられる原因は?主な病気を解説

犬の血尿は、様々な病気のサインとして現れます。ここでは、血尿を引き起こす代表的な病気について解説します。原因は多岐にわたるため、正確な診断は動物病院で行う必要がありますが、飼い主さんが可能性のある病気を知っておくことは、愛犬の症状を理解し、獣医師とのコミュニケーションを円滑にする上で役立ちます。

特に多い原因から、性別によって特有の病気まで、順番に見ていきましょう。

【最も多い原因】膀胱炎

犬の血尿で最も一般的に見られる原因が「膀胱炎」です。膀胱炎は、細菌が尿道から膀胱に侵入し、感染・炎症を起こすことで発症します。特に、女の子(メス)は男の子(オス)に比べて尿道が短く太いため、細菌が侵入しやすく、膀胱炎になりやすい傾向があります。

膀胱炎になると、膀胱の粘膜が傷ついて出血し、血尿が見られます。血尿のほかにも、

  • 頻尿(何度もトイレに行く)
  • 排尿時に痛がる
  • 残尿感(おしっこが終わってもスッキリしない様子)
  • 尿の臭いがいつもと違う

といった症状がよく見られます。多くは抗生物質の投与などで健康の維持をサポートしますが、繰り返す場合は背景に別の病気が隠れている可能性も考えられます。

尿石症(尿路結石)

「尿石症(にょうせきしょう)」も血尿の主な原因の一つです。これは、尿に含まれるミネラル成分が結晶化し、腎臓、尿管、膀胱、尿道などの泌尿器で石(結石)を形成する病気です。この結石が粘膜を傷つけることで出血し、血尿となります。

結石には「ストルバイト結石」や「シュウ酸カルシウム結石」など、いくつかの種類があり、犬種や食生活、体質によってできやすい種類が異なります。特に、ミニチュア・シュナウザーやシーズー、ヨークシャー・テリアなどは尿石症になりやすい犬種として知られています。

血尿のほか、頻尿や排尿困難などの症状が見られます。小さな結石が尿道を塞いでしまうと「尿路閉塞」となり、命に関わる危険な状態になるため、早期の対応が重要です。

腎臓・泌尿器の腫瘍

頻度は高くありませんが、血尿の原因として「腫瘍」の可能性も考えられます。腎臓や膀胱、尿道などに腫瘍ができると、その部分がもろくなって出血し、血尿が見られることがあります。特に高齢の犬に多く見られ、膀胱にできる「移行上皮癌」などが代表的です。

初期段階では血尿以外の症状がほとんどないことも多く、発見が遅れがちです。血尿が続いたり、体重が減少したり、元気がなくなったりといった他の症状が見られる場合は、注意が必要です。

男の子(オス)に特有の原因:前立腺の病気

去勢していない男の子(オス)の場合、「前立腺」の病気が血尿の原因となることがあります。前立腺は膀胱のすぐ後ろにある生殖器で、加齢とともに肥大したり(前立腺肥大)、細菌感染を起こして炎症を起こしたり(前立腺炎)することがあります。

これらの病気によって前立腺から出血し、尿に血が混じることがあります。血尿のほか、排尿困難や排便困難(大きくなった前立腺が直腸を圧迫するため)といった症状が見られることもあります。

女の子(メス)に特有の原因:子宮や膣の病気

避妊手術をしていない女の子(メス)では、子宮や膣の病気が血尿の原因となることがあります。例えば、子宮に膿がたまる「子宮蓄膿症」では、血の混じったおりものが陰部から出て、尿に混じることがあります。

また、「膣炎」などでも同様の症状が見られます。これらの病気は、血尿のように見えるだけでなく、元気消失や食欲不振、多飲多尿など全身的な症状を伴うことが多く、特に子宮蓄膿症は緊急性の高い病気です。発情期以外の出血には特に注意が必要です。

動物病院ではどんな検査や処置をするの?

愛犬の血尿で動物病院を受診すると、獣医師は原因を特定するために様々な検査を行います。初めてのことで不安に感じるかもしれませんが、どのような検査が行われるのかを事前に知っておくと、少し落ち着いて対応できるはずです。

ここでは、動物病院で獣医師に伝えるべき情報や、一般的に行われる主な検査内容について解説します。正確な診断と適切な処置のために、飼い主さんの協力がとても大切になります。

獣医師に伝えるべき大切な情報リスト

診察をスムーズに進めるため、以下の情報を整理して獣医師に伝えられるように準備しておきましょう。スマートフォンなどでメモしておくと安心です。

  • いつから血尿が出ているか:「今日の朝から」「2日前から」など具体的に。
  • 尿の色や様子:鮮やかな赤色、ピンク色、茶色っぽいなど。血の塊は混じっているか。
  • 排尿の回数や量:いつもより回数が多いか、一回の量は少ないか。
  • 排尿時の様子:痛そうに鳴く、時間がかかる、力んでいるなど。
  • 元気や食欲の状態:いつもと変わりないか、元気がないか。
  • 他に気になる症状:嘔吐、下痢、水をたくさん飲むなど。
  • 過去の病歴や飲んでいる薬:これまでに大きな病気をしたか、現在服用中の薬やサプリメントはあるか。

主な検査内容

問診や身体検査の後、血尿の原因を詳しく調べるために、以下のような検査が行われることが一般的です。どの検査を行うかは、獣医師が犬の状態を見て判断します。

尿検査

血尿の診断において最も基本的で重要な検査です。尿の中に赤血球や白血球、細菌、結晶などが含まれていないかを顕微鏡で確認します。また、尿のpHやタンパク質の量なども調べることで、膀胱炎や尿石症などの病気の手がかりを得ることができます。

画像検査(レントゲン・超音波)

レントゲン検査や超音波(エコー)検査は、体の中の状態を画像で確認する検査です。特に、尿石症が疑われる場合に結石の大きさや位置を確認したり、膀胱や腎臓、前立腺に腫瘍がないかなどを調べたりするのに非常に有効です。

血液検査

全身の状態を把握するために行われます。腎臓の機能に異常がないか、炎症反応が起きていないか、貧血はどうかなどを確認します。血尿の原因だけでなく、他の病気が隠れていないかを調べる上でも重要な検査となります。

犬の血尿のケアと費用について

検査によって血尿の原因が特定されると、いよいよケアが始まります。ケア方法は原因となる病気によって大きく異なり、それに伴って必要となる費用も変わってきます。

ここでは、原因別のケア方法の概要と、費用の目安について解説します。あくまで一般的な目安であり、犬の状態や動物病院によって変動することをご理解ください。

原因別のケア方法の概要

血尿のケアは、その原因となっている病気の根本的な管理を目指します。

  • 膀胱炎:細菌感染が原因の場合、抗生物質の内服が中心となります。処方された薬を最後までしっかりと飲ませることが大切です。
  • 尿石症:結石の種類によっては、特別な療法食や薬で石を溶かす内科的なケアが選択されます。しかし、結石が大きい場合や種類によっては、外科手術で取り除く必要があります。
  • 腫瘍:腫瘍の種類や進行度に応じて、外科手術、抗がん剤、放射線などの処置が検討されます。
  • 前立腺・子宮の病気:去勢手術や避妊手術が根本的なケアとなることが多いです。状態によっては、内服薬による処置も行われます。
  • 費用の目安

犬の血尿に関する費用は、検査内容やケア方法によって大きく異なります。以下はあくまで一般的な目安です。

  • 初診・検査費用:初診料、尿検査、超音波検査などを含め、一般的に10,000円~30,000円程度かかることが多いです。
  • 内科的ケア(投薬など):膀胱炎の抗生物質など、数千円から数万円程度。
  • 外科手術:尿石症や腫瘍の手術の場合、入院費なども含めて数十万円以上かかることもあります。

ペット保険に加入している場合は、補償内容を確認しておきましょう。費用について不安な点があれば、事前に動物病院に相談することが大切です。

「元気そうに見えても、血尿は体からの重要なサインです。自己判断で様子を見ずに、まずはご相談ください」

家庭でできる血尿の予防と再発防止のサポート

一度血尿の症状が出た子は、再発しやすい傾向があるため、日頃からのケアがとても重要になります。また、まだ血尿になったことがない子も、これから先の健康を守るために予防を心がけることが大切です。

ここでは、飼い主さんが家庭で実践できる、血尿の予防や再発防止に役立つ4つのポイントをご紹介します。愛犬との毎日の中で、少し意識するだけで始められることばかりです。

新鮮な水をいつでも飲めるようにする

水分をしっかり摂り、尿の量を増やすことは、泌尿器系の健康を維持するための基本です。尿の量が増えることで、膀胱内の細菌や結石の元となる結晶を洗い流す効果が期待できます。

家の複数箇所に水飲み場を設置したり、ドライフードをふやかして与えたりするなど、愛犬が自然に水分を摂れるような工夫をしてみましょう。

トイレ環境を清潔に保つ

不潔なトイレ環境は、細菌が繁殖する原因となります。特に女の子(メス)は、尿道が短いため、お尻周りの細菌が尿道に侵入しやすいです。ペットシーツはこまめに取り替え、トイレトレーも定期的に洗浄して清潔を保ちましょう。

また、おしっこを我慢させないことも大切です。散歩の回数を増やしたり、室内でも排泄できる場所を用意したりしてあげましょう。

食事管理で健康を維持する

毎日の食事は、愛犬の体を作る基本です。バランスの取れた総合栄養食を与えることが健康維持につながります。特に尿石症の経験がある子は、獣医師の指導のもと、ミネラル成分が調整された療法食が必要になる場合があります。自己判断で食事内容を変更せず、必ず獣医師に相談しながら、その子に合った食事管理を行いましょう。

日頃から尿の状態をチェックする習慣を

病気の早期発見のために最も効果的なのは、飼い主さんが日頃から愛犬の尿をチェックすることです。「色」「量」「回数」「臭い」「排尿時の様子」を毎日気にかけてみましょう。ペットシーツの色は白っぽいものを選ぶと、尿の色の変化に気づきやすくなります。少しでも「いつもと違うな」と感じたら、すぐに動物病院に相談できる体制が、愛犬の健康を守ります。

まとめ

愛犬の血尿は、飼い主さんにとって非常に心配なサインですが、慌てず冷静に対処することが何よりも重要です。この記事では、血尿に気づいた時の初期対応から、考えられる原因、動物病院での検査、そして家庭でできる予防法までを解説しました。

大切なポイントは、「元気そうに見えても自己判断せず、必ず動物病院に連絡する」ことです。血尿は、膀胱炎や尿石症など、適切なケアで健康をサポートできる病気から、腫瘍などの重い病気まで、様々な原因が考えられます。
早期に原因を特定し、適切なケアを始めることが、愛犬の負担を最小限に抑える鍵となります。日頃から愛犬の尿の状態をチェックする習慣をつけ、小さな変化も見逃さないようにしましょう。

犬の血尿に関するよくあるご質問(FAQ)

 

ストレスが原因で犬は血尿になりますか?

直接的な原因として、ストレスだけで血尿になることは稀ですが、間接的な要因になる可能性はあります。強いストレスは犬の免疫力を低下させ、細菌感染に対する抵抗力を弱めることがあります。その結果、膀胱炎などを発症しやすくなり、血尿につながるケースが考えられます。また、ストレスから水を飲む量が減ったり、トイレを我慢したりすることも、泌尿器系のトラブルを引き起こす一因となり得ます。

高齢犬(シニア犬)の血尿で特に気をつけるべきことは何ですか?

高齢犬の場合、若い犬に比べて腫瘍(特に膀胱の移行上皮癌)や、男の子(オス)であれば前立腺の病気のリスクが高まります。また、腎臓の機能が低下していることも多いため、より慎重な対応が必要です。血尿が見られたら、「年のせいかな」と自己判断せず、できるだけ早く動物病院を受診してください。定期的な健康診断で、尿検査や腹部の超音波検査を受けておくことも、病気の早期発見に繋がります。

血尿が出たけれど、すぐに色が元に戻りました。病院に行かなくても大丈夫ですか?

いいえ、一度でも血尿が確認された場合は、症状が一時的に治まったように見えても動物病院を受診してください。例えば、膀胱内の小さな結石が動いて一時的に粘膜を傷つけ、その後は出血が止まる、といったケースも考えられます。しかし、根本的な原因が解決されたわけではありません。病気が隠れている可能性を考え、必ず獣医師の診察を受けるようにしましょう。

血尿のケアで食事はどのくらい重要ですか?

非常に重要です。特に「尿石症」が原因の場合、食事管理はケアの根幹をなします。特定のミネラルを制限し、尿のpHをコントロールする「療法食」を与えることで、結石が大きくなるのを防いだり、再発を予防したりする効果が期待できます。ただし、結石の種類によって適した療法食は異なります。自己判断でフードを選ぶと逆効果になることもあるため、必ず獣医師の診断と指導のもとで食事管理を行ってください。

 

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