老犬の呼吸が「ヒューヒュー」鳴る原因は?病院へ行くべき危険なサインと対処法

老犬の呼吸が「ヒューヒュー」鳴る原因は?病院へ行くべき危険なサインと対処法

Table of Contents

  • 老犬の「ヒューヒュー」という呼吸音は、気管虚脱や心臓病など治療が必要な病気のサインである可能性があります。
  • 舌が紫色になる(チアノーゼ)や、横になれず座って呼吸をする場合は緊急性が高いため、直ちに動物病院へ連絡してください。
  • 自宅では、室温・湿度の管理や首への負担を減らす工夫で、愛犬の呼吸をサポートすることができます。
  • 受診の際は、症状が出ている時の「動画」を撮影しておくと、獣医師への説明がスムーズになり診断の助けになります。

長年連れ添ってきた愛犬から、突然「ヒューヒュー」という聞き慣れない呼吸音が聞こえてきたら、驚きと同時に「もしかして苦しいのかな?」「命に関わる病気だったらどうしよう」と、大きな不安に襲われてしまうことでしょう。
シニア期に入ったワンちゃんは、体の様々な機能が少しずつ変化していきますが、呼吸音の変化は体からの重要なSOSであることも少なくありません。

この記事では、老犬の呼吸が「ヒューヒュー」と鳴る原因や、緊急性の高い症状の見分け方、そして飼い主さんが自宅でできるケアの方法について、わかりやすく解説します。愛犬の辛さを少しでも和らげ、穏やかな時間を守るために、まずは落ち着いて現状を確認していきましょう。

まずは確認!老犬の「ヒューヒュー」呼吸は危険なサイン?

愛犬が息をするたびに「ヒューヒュー」「ゼーゼー」といった音が聞こえる場合、それは呼吸の通り道である気管や気管支が何らかの原因で狭くなっているサインかもしれません。老犬になると、単に筋力が落ちて呼吸のリズムが変わることもありますが、音が鳴るというのは通常の状態とは言えません。

特に、運動した後や興奮した時だけでなく、安静にして寝ている時にも音がする場合は注意が必要です。犬は言葉で「苦しい」と伝えることができません。そのため、呼吸音の変化は、飼い主さんだけが気づいてあげられる最初の異変なのです。「年のせいかな?」と自己判断せず、まずは愛犬の様子をしっかりと観察することが大切です。ここでは、どのような状態が危険なのかを具体的に見ていきましょう。

すぐに病院へ!緊急性が高い症状チェックリスト

呼吸音に加えて、以下のような症状が見られる場合は、命に関わる緊急事態の可能性があります。迷わず動物病院に連絡し、受診の指示を仰いでください。

  • 舌や歯茎の色が紫色・青白い(チアノーゼ)
    酸素が体に行き渡っていない危険な状態です。
  • 横になって眠れない(起座呼吸)
    伏せやお座りの姿勢で、首を伸ばしてハアハアと呼吸をしている場合、横になると肺が圧迫されて苦しいため、必死に呼吸を確保しようとしています。
  • 安静時の呼吸数が1分間に40回以上
    眠っている時や落ち着いている時でも呼吸が早い場合、心臓や肺にトラブルが起きている可能性があります。
  • 呼吸に合わせてお腹が大きく動く(努力呼吸)
    肩やお腹を大きく波打たせて、全身を使って息をしている状態です。
  • 咳が止まらない、または泡を吐く
    呼吸困難に伴って咳き込んだり、白い泡のようなものを吐いたりすることがあります。

これらのサインが一つでも当てはまる場合は、一刻を争うこともあります。「朝まで様子を見よう」とは考えず、夜間救急も含めてすぐに行動してください。

加齢による変化と病気のサインの見分け方

老犬になると、若い頃に比べて呼吸機能や筋力が低下するため、散歩の後などに息が上がりやすくなることは自然な変化として起こり得ます。これを「加齢による変化」と捉えるか、「病気のサイン」と捉えるかの判断は難しいところですが、ポイントは「回復の早さ」と「音の有無」です。

単なる加齢であれば、運動をやめて休ませれば、比較的短時間で呼吸は落ち着き、異音も伴いません。しかし、休んでいても呼吸が荒いままだったり、「ヒューヒュー」「ガーガー」といった音が混じったりする場合は、病気が隠れている可能性が高いと言えます。また、以前は平気だった距離の散歩で極端に疲れたり、咳が増えたりした場合も、老化の一言で片付けずに獣医師に相談することをおすすめします。

なぜ?老犬の喉から「ヒューヒュー」音がする主な原因

では、なぜ老犬になると呼吸音が「ヒューヒュー」と鳴るようになるのでしょうか。この音は、空気の通り道(気道)が狭くなり、空気が無理に通ろうとする時に発生する「狭窄音(きょうさくおん)」と呼ばれるものです。

原因は様々ですが、老犬の場合は、気管そのものの変形や、心臓病による圧迫、あるいは炎症などが複雑に関係していることが多くあります。原因によって治療法や対処法も異なるため、まずはどのような病気が考えられるのかを知っておくことが大切です。ここでは、老犬によく見られる主な原因について解説します。

気管虚脱(きかんきょだつ):小型犬に多い呼吸器トラブル

「気管虚脱」は、トイ・プードルやチワワ、ヨークシャー・テリアなどの小型犬に多く見られる病気です。本来はホースのように丸い形を保っている気管が、加齢とともに軟骨が弱くなり、押しつぶされたように扁平に変形してしまいます。

気管が潰れることで空気の通り道が狭くなり、「ヒューヒュー」という呼吸音や、「ガーガー」というアヒルが鳴くような独特の咳(ガチョウ鳴き様咳)が出るのが特徴です。特に、興奮した時や水を飲んだ時、首輪で首が圧迫された時などに症状が出やすくなります。進行すると呼吸困難に陥り、失神してしまうこともあるため、早期のケアと環境調整が重要になります。

僧帽弁閉鎖不全症などの心臓病

老犬の呼吸異常の原因として、非常に多いのが心臓病です。特に「僧帽弁閉鎖不全症(そうぼうべんへいさふぜんしょう)」は、小型犬のシニア期によく発症します。心臓の中にある弁がうまく閉じなくなり、血液が逆流してしまう病気です。

この病気が進行すると、心臓が肥大して気管を圧迫し、咳や呼吸困難を引き起こします。さらに重症化すると、肺に水が溜まる「肺水腫(はいすいしゅ)」を併発することがあります。肺水腫になると、肺でのガス交換がうまくいかなくなり、溺れているような苦しい状態になります。呼吸が浅く早くなり、ヒューヒュー、ゼーゼーという湿った音が聞こえる場合は、心臓病が悪化している危険性が高いため、早急な対応が必要です。

肺炎・気管支炎などの炎症

免疫力が低下している老犬は、細菌やウイルスによる感染症にかかりやすく、それが原因で気管支炎や肺炎を起こすことがあります。気管支や肺に炎症が起きると、粘膜が腫れたり、痰(たん)などの分泌物が増えたりして気道が狭くなり、「ヒューヒュー」「ゼロゼロ」といった呼吸音が聞こえるようになります。

また、老犬特有の問題として「誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)」も挙げられます。飲み込む力が弱くなることで、食べ物や唾液が誤って気管に入ってしまい、肺炎を引き起こすものです。発熱や食欲不振を伴うことも多く、体力の落ちた老犬にとっては命取りになることもあるため、注意深い観察が必要です。

軟口蓋過長症(なんこうがいかちょうしょう):短頭種に多い特徴

フレンチ・ブルドッグやパグ、シー・ズーなどの短頭種(鼻ぺちゃ犬)に多いのが「軟口蓋過長症」です。これは、喉の奥にある「軟口蓋」というひだ状の肉が、通常よりも長く垂れ下がっている状態を指します。

長い軟口蓋が呼吸のたびに空気の通り道を塞いでしまうため、「ブーブー」「ガーガー」といったイビキのような呼吸音が特徴的ですが、気道が狭くなることで「ヒューヒュー」という高い音が混じることもあります。生まれつきの特徴であることが多いですが、加齢によって喉の筋肉がたるみ、症状が悪化するケースも見られます。肥満になると喉周りの脂肪がさらに気道を圧迫するため、体重管理が非常に重要です。

愛犬が苦しそうな時に自宅でできる応急処置とケア

愛犬が呼吸を苦しそうにしている時、飼い主さんがパニックになってしまうと、その不安が愛犬にも伝わり、余計に興奮させて呼吸状態を悪化させてしまう恐れがあります。まずは飼い主さんが深呼吸をして落ち着き、愛犬を安心させてあげることが大切です。

自宅でできることは、根本的な治療ではありませんが、病院へ行くまでの間や、発作が起きた直後に愛犬の苦痛を少しでも和らげるための「サポート」です。ここでは、呼吸器への負担を減らすための具体的な対処法をご紹介します。

呼吸を楽にする姿勢と抱き方のポイント

呼吸が苦しい時、犬は横になるのを嫌がり、前足を踏ん張って首を伸ばす姿勢(お座りや伏せの状態)をとることがあります。これは、肺を広げやすくするための本能的な姿勢ですので、無理に横に寝かせようとせず、愛犬が一番楽そうにしている姿勢を保たせてあげてください。

抱っこをする必要がある場合は、胸やお腹を圧迫しないように注意しましょう。脇の下に手を入れて抱き上げると胸が圧迫されて苦しくなることがあります。お尻と胸の下を支えるようにして、背骨を水平に保つように優しく抱きかかえるのがポイントです。また、首を少し伸ばした状態にしてあげると、気道が確保されやすくなります。

室温・湿度の調整で呼吸器への負担を減らす

高温多湿な環境は、犬の呼吸器にとって大きな負担となります。犬はパンティング(ハアハアという呼吸)で体温調節を行いますが、呼吸器にトラブルがあるとこの機能がうまく働かず、体温が上がってさらに呼吸が苦しくなるという悪循環に陥ります。

愛犬が呼吸しづらそうにしている時は、部屋を涼しくしてあげましょう。設定温度は人間が少し肌寒いと感じるくらいの23℃〜25℃程度、湿度は50%前後が目安です。特に夏場だけでなく、冬場の暖房の効きすぎにも注意が必要です。空気が乾燥しすぎると咳が出やすくなるため、加湿器などを活用して適切な湿度を保つことも、呼吸器の健康維持に役立ちます。

興奮させないための環境づくりと接し方

「嬉しい」「怖い」「痛い」などの感情による興奮は、呼吸数を急激に増やし、酸欠状態を招く引き金になります。来客やチャイムの音、他の犬との接触など、愛犬が興奮しやすい刺激をできるだけ避けるようにしましょう。

発作が起きている時は、飼い主さんが優しく声をかけ、背中をゆっくり撫でて落ち着かせてあげてください。ただし、過度にかまいすぎると逆に興奮させてしまうこともあるため、愛犬の様子を見ながら、静かで薄暗い部屋でゆっくり休ませるのが効果的です。

動物病院を受診する際のポイントと伝え方

愛犬の呼吸に異常を感じたら、早めに動物病院を受診することが大切ですが、病院に着くと緊張や興奮で一時的に症状が治まってしまい、獣医師にうまく伝わらないことがあります。「家ではあんなに苦しそうだったのに、先生の前ではケロッとしている」というのはよくある話です。

正確な診断を受けるためには、普段の様子や症状が出た時の状況を、飼い主さんがいかに正確に伝えられるかが鍵となります。ここでは、受診をスムーズにし、適切な診断につなげるための準備について解説します。

診断の助けになる「動画撮影」のすすめ

言葉で「ヒューヒューという音がする」と説明するよりも、実際の音と様子を獣医師に見てもらうことが、最も確実な情報提供になります。スマートフォンなどで、症状が出ている時の愛犬の様子を動画に撮っておきましょう。

撮影の際は、呼吸音が入るように静かな環境で、愛犬の顔だけでなく、胸やお腹の動き、全身の姿勢がわかるように撮るのがポイントです。また、舌の色がわかるように口元を映したり、どのような状況(寝ている時、散歩の後など)で症状が出ているかがわかるように撮影すると、診断の大きな助けになります。

獣医師に伝えるべき情報リスト(いつから・どんな時に)

診察室では慌ててしまい、伝えたいことを忘れてしまうこともあります。以下の項目を事前にメモにまとめておくと、獣医師への説明がスムーズです。

  • いつから症状が出ているか(数日前から、今朝急になど)
  • どんな時に症状が出るか(散歩中、寝ている時、興奮した時、食事中など)
  • 呼吸音の特徴(ヒューヒュー、ガーガー、ゼーゼーなど)
  • その他の症状(咳、鼻水、食欲不振、元気がない、失神したことがあるか)
  • 現在飲んでいる薬や持病(あれば薬を持参するか、薬の名前をメモする)

これらの情報は、原因を特定し、適切な治療方針を決めるための重要な手がかりとなります。

治療費の目安とペット保険の活用について

呼吸器や心臓の病気は、長期的な通院や投薬が必要になることが多く、治療費の負担も気になるところです。検査内容(レントゲン、血液検査、エコーなど)や治療方針によって費用は大きく異なりますが、初診時の検査だけでも数万円かかるケースも珍しくありません。

もしもの時に備えてペット保険に加入している場合は、保険証券や加入者証を持参しましょう。窓口精算が可能なのか、後日請求なのかを確認しておくと安心です。また、高額な治療や手術が必要になる可能性がある場合は、獣医師に費用の目安や治療の選択肢について、遠慮なく相談することをおすすめします。

老犬の呼吸器を守るために日頃から気をつけたいこと

愛犬の呼吸器トラブルは、早期発見と治療が基本ですが、日々の生活習慣を見直すことで、症状の悪化を防いだり、発症のリスクを下げたりすることができます。老犬の体はデリケートですので、少しの工夫が大きな助けになります。

ここでは、愛犬の呼吸器を守り、快適な生活をサポートするために、今日から始められる具体的なケアのポイントをご紹介します。

首輪ではなくハーネスへの切り替えを検討する

お散歩の際、首輪を使用していると、リードを引っ張った時に気管が直接圧迫されてしまいます。特に気管虚脱の傾向があるワンちゃんや、気管が弱くなっている老犬にとって、首への刺激は咳や呼吸困難の大きな原因となります。

気管への負担を分散させるために、首輪ではなく、胴体で支える「ハーネス(胴輪)」への切り替えを強くおすすめします。ハーネスにも様々なタイプがありますが、気管に当たらない形状のものや、クッション性のある柔らかい素材のものを選ぶと、より安心です。

肥満予防と食事管理で心肺機能への負担を軽減

肥満は、呼吸器にとって大敵です。首周りに脂肪がつくと気道が圧迫されて狭くなり、呼吸がしづらくなります。また、体が重いと動くたびに多くの酸素が必要になり、心臓や肺に過度な負担がかかってしまいます。

愛犬の適正体重を維持することは、最も効果的な呼吸器ケアの一つです。老犬になると代謝が落ちて太りやすくなるため、低カロリーで消化の良いシニア用フードを選んだり、おやつの量を調整したりして、体重管理を徹底しましょう。また、食事の際は、首を下げずに食べられるように食器台を使って高さを調整してあげると、誤嚥の予防にもなり、呼吸も楽になります。

老犬の呼吸・ヒューヒュー音に関するよくある質問

Q. 寝ている時だけ「ヒューヒュー」と音がするのですが、病気でしょうか?

A. 寝ている時、特にリラックスしている時に音がする場合、鼻詰まりや、喉の筋肉の緩みによるイビキの可能性もありますが、気管虚脱や軟口蓋過長症などの病気が隠れている可能性も否定できません。音が毎日続く場合や、苦しそうな様子が見られる場合は、一度動画を撮って獣医師に相談することをおすすめします。

Q. 逆くしゃみと気管虚脱の違いは何ですか?

A. 逆くしゃみは、鼻から急激に息を吸い込む発作的な呼吸で、「ブーブー」「ズーズー」といった豚のような音を立てますが、通常は数分で治まり、その後はケロッとしています。一方、気管虚脱は「ガーガー」という咳や「ヒューヒュー」という呼吸音が特徴で、興奮時や運動時に悪化しやすく、呼吸困難を伴うことがあります。見分けが難しい場合は、動画を撮影して獣医師に見せると判断しやすくなります。

Q. 老犬の呼吸が早いと感じる基準はどのくらいですか?

A. 一般的に、安静時(寝ている時やリラックスしている時)の呼吸数が1分間に40回を超える場合は異常のサインとされています。正常な犬の安静時呼吸数は1分間に15〜30回程度です。愛犬が落ち着いている時に、胸の動きを見て1分間の回数を数えてみてください。日頃から正常時の回数を把握しておくと、変化に気づきやすくなります。

まとめ:異変を感じたら早めの受診で愛犬の健康を守りましょう

老犬の「ヒューヒュー」という呼吸音は、単なる老化現象ではなく、治療やケアが必要な病気のサインであるケースが多くあります。愛犬が苦しそうにしている姿を見るのは辛いものですが、飼い主さんが正しい知識を持ち、冷静に対処することで、愛犬の苦痛を和らげることができます。

「いつもと違うな」と感じたら、自己判断で様子を見過ぎず、早めに動物病院を受診することが、愛犬の命と穏やかな生活を守る第一歩です。日頃の観察とケア、そして獣医師との連携で、愛犬との大切な時間を一日でも長く、笑顔で過ごせるようにサポートしてあげてください。

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