チワワの水頭症|症状チェックリストと治療法・費用の目安を優しく解説

チワワの水頭症|症状チェックリストと治療法・費用の目安を優しく解説

Table of Contents

  • チワワは遺伝的に「水頭症」になりやすい犬種であり、早期発見が重要です。
  • 「ぼーっとする」「ふらつく」「頭が大きくなる」などのサインを見逃さないようにしましょう。
  • 治療法には、薬で症状を和らげる内科治療と、手術を行う外科治療があります。
  • 高額になりがちな検査・手術費用や、ペット保険の適用についても解説します。
  • 自宅での環境づくりやケアで、愛犬のQOL(生活の質)を保つことは可能です。

「最近、うちの子がなんとなく元気がない気がする」「頭の形が少し変わったかも?」愛犬のチワワにそんな異変を感じて、不安な気持ちでこのページにたどり着いたのではないでしょうか。
チワワはその愛らしい「アップルヘッド」という特徴ゆえに、脳の病気である「水頭症」にかかりやすい傾向があります。もし病気だとしたら…と考えると怖いかもしれませんが、正しい知識を持ち、早期に気づいてあげることで、愛犬の苦痛を和らげ、穏やかな時間を守ることができます。

この記事では、飼い主さんが自宅でチェックできる症状のサインから、動物病院での検査、治療費の目安、そしてお家でできるケアまで、不安な心に寄り添いながら丁寧に解説していきます。

チワワに多い「水頭症」とは?原因とメカニズム

チワワと暮らす飼い主さんであれば、一度は耳にしたことがあるかもしれない「水頭症(すいとうしょう)」。名前は知っていても、具体的に頭の中で何が起きているのか、なぜチワワに多いのか、詳しく知る機会は少ないかもしれません。

水頭症とは、簡単に言うと「脳の中に水が溜まりすぎてしまい、脳そのものを圧迫してしまう病気」です。脳は、硬い頭蓋骨(ずがいこつ)の中で守られていますが、その隙間には「脳脊髄液(のうせきずいえき)」という液体が流れています。通常、この液体は一定の量で保たれていますが、何らかの原因で増えすぎてしまうと、逃げ場を失った液体が脳を内側から押し広げるように圧迫してしまいます。

脳は全身の司令塔ですから、圧迫される場所や程度によって、運動機能や意識、感覚など、体にさまざまな影響が出てきます。特にチワワのような小型犬では、発症頻度が高いことが知られており、決して他人事ではない病気の一つです。まずは、その仕組みと原因について、少し詳しく見ていきましょう。

脳脊髄液が溜まる仕組みと身体への影響

私たちの脳や脊髄は、「脳脊髄液」という透明な液体の中に浮かぶようにして守られています。この液体は、脳への衝撃を和らげるクッションの役割や、栄養を運び老廃物を流す役割を担っています。

健康な状態であれば、脳脊髄液は脳の中で作られ、循環し、最終的に吸収されるというサイクルを繰り返して、常に一定の量が保たれています。しかし、水頭症になると、この「作る・流れる・吸収する」というサイクルのどこかに異常が生じます。出口が詰まってしまったり、吸収が悪くなったりすることで、液体がダムのように溜まってしまうのです。
その結果、脳室(液体の通り道)が風船のように膨らみ、周囲の正常な脳細胞をギュウギュウと圧迫してしまい、神経症状を引き起こします。

「先天性」と「後天性」の原因の違い

水頭症の原因は、大きく「先天性」と「後天性」の2つに分けられます。

先天性水頭症は、生まれつき脳の構造や脳脊髄液の循環経路に異常があるタイプです。チワワをはじめとする小型犬に多く見られるのはこのタイプで、遺伝的な要因が強く関係していると考えられています。生後数ヶ月の子犬の頃に症状が出始めることが多いですが、成犬になってから発症することもあります。

一方、後天性水頭症は、生まれた時は正常だったものの、その後の事故や病気によって発症するタイプです。例えば、脳腫瘍、脳炎、頭部への外傷などが原因で脳脊髄液の流れが滞り、水頭症を引き起こすことがあります。こちらは年齢や犬種に関係なく起こる可能性があります。

なぜチワワはなりやすい?「アップルヘッド」との関係

チワワが水頭症になりやすいと言われる理由の一つに、その愛らしい頭の形が関係しています。チワワのスタンダード(犬種標準)とされる、リンゴのように丸く突き出たおでこは「アップルヘッド」と呼ばれます。

この独特な頭蓋骨の形状は、脳を収めるスペースが構造的に窮屈になりやすい傾向があります。特に、極端に頭が丸く大きい個体や、極端な短頭種は、頭蓋骨の接合部が完全に閉じず泉門(ペコ)が開いたままになりやすく、結果として脳脊髄液の循環トラブルが起きやすいリスクを持っているとされています。
もちろん、アップルヘッドのチワワ全員が発症するわけではありませんが、犬種特有のチャームポイントが、実は病気のリスクと隣り合わせであることは、飼い主として知っておきたい大切な知識です。

【早期発見】見逃さないで!チワワの水頭症の症状チェック

水頭症は、早期に発見して適切なケアを行うことで、症状の進行を遅らせたり、愛犬の苦痛を和らげたりすることが可能です。「なんとなく様子がおかしい」と感じた時、それが水頭症のサインなのかどうかを見極めるためのポイントをご紹介します。

症状は、脳のどの部分が圧迫されているかによって千差万別です。また、天候や気圧の変化(低気圧など)によって脳圧が変化し、症状が強く出る日もあれば、ケロッとしている日もあるのが特徴です。「いつもと違う」という飼い主さんの直感はとても重要です。以下のチェックリストを参考に、愛犬の様子を観察してみてください。

水頭症の可能性がある主なサイン

  • ぼーっとしている時間が長い、反応が鈍い
  • 歩くときにふらつく、よく転ぶ
  • 同じ場所をぐるぐると回り続ける(旋回運動)
  • 頭のてっぺん(泉門)が大きく開いている、膨らんでいる
  • 黒目が外側を向いている(外斜視)
  • 学習能力が低下した(トイレを失敗するようになった等)
  • 突然のけいれん発作

「ぼーっとする」「ふらつく」初期の行動サイン

初期症状として最も飼い主さんが気づきやすいのが、行動の変化です。以前に比べて「なんとなく元気がない」「寝てばかりいる」といった様子が見られますが、単なる老化や性格の変化と見過ごされてしまうことも少なくありません。

具体的には、名前を呼んでも反応が鈍かったり、壁に向かってじっと立ち尽くしていたりすることがあります。また、運動機能に影響が出ると、歩き方がおかしくなります。足がもつれるようにふらついたり、障害物をうまく避けられずにぶつかったりすることもあります。特に特徴的なのが、同じ方向にぐるぐると回り続ける「旋回運動」です。

もし愛犬が意味もなく歩き回り、止めないとずっと回っているような場合は、脳神経系の異常を疑う必要があります。

特徴的な見た目の変化と「泉門(ペコ)」の確認

チワワの水頭症では、見た目にも変化が現れることがあります。脳圧が上がることで頭蓋骨が内側から押され、おでこが異常にドーム状に膨らんで見えることがあります。また、眼球が圧迫されることで、黒目が外側下方を向く「外斜視」になることも特徴的なサインの一つです。

そして、確認していただきたいのが頭のてっぺんにある「泉門(せんもん)」、通称「ペコ」と呼ばれる部分です。チワワは生まれつき頭蓋骨の接合部が完全に閉じていないことが多く、ペコがあること自体は珍しくありません。
しかし、水頭症によって脳圧が亢進(こうしん)している場合、このペコが指一本分以上など極端に大きく開いていたり、触れると緊張して硬く盛り上がっていたりすることがあります。優しく触れてみて、以前より開いている範囲が広がっていないか、そして触れたときに強い張り(膨隆)があるかを確認しましょう。ただし、強く押すのは厳禁です。

けいれん発作など緊急性の高い症状

病気が進行し、脳圧が急激に高まったり脳組織へのダメージが大きくなったりすると、「てんかん発作」のようなけいれんを起こすことがあります。

けいれん発作は、突然手足を突っ張ってガクガクと震えたり、口から泡を吹いて意識を失ったりするなど、見ていて非常にショッキングな症状です。発作が起きている間、愛犬は意識がないことが多く、名前を呼んでも反応しません。また、発作以外にも、意識レベルが低下して昏睡状態になったり、食欲が完全に廃絶してしまったりする場合も緊急性が高い状態です。

もしけいれん発作が起きた場合は、慌てて抱き上げたり口に手を入れたりせず、周りの危険な物をどけて見守りましょう。そして、発作が何分続いたか、どのような動きだったかを記録(可能なら動画撮影)し、発作が治まったら速やかに、あるいは発作が5分以上続く場合は直ちに動物病院へ連絡してください。これらは命に関わることもあるため、迷わず受診することが大切です。

動物病院での検査と診断の流れ

「もしかして水頭症かも?」と思ったら、まずは動物病院で相談しましょう。しかし、いきなり大掛かりな検査をするわけではありません。獣医師は、飼い主さんからのお話(問診)と、基本的な身体検査からスタートし、段階を踏んで診断を進めていきます。

ここでは、病院に行くとどのような手順で診断が行われるのか、その流れを解説します。あらかじめ流れを知っておくことで、落ち着いて診察を受けることができるはずです。

まずは触診と神経学的検査から

最初の診察では、獣医師が実際に愛犬の体に触れ、様子を観察します。頭の形や「泉門(ペコ)」の開き具合、眼球の状態(斜視の有無)などを確認します。また、聴診器で心音を聞いたり、体重を測ったりといった基本的な健康チェックも行います。

続いて重要になるのが「神経学的検査」です。これは、脳や神経に異常がないかを調べるためのテストです。例えば、目の前で指を動かして視線を追うか確認したり、足先を裏返してすぐに元に戻せるか(固有位置感覚)をチェックしたり、膝を軽く叩いて反射を見たりします。これらの反応を見ることで、脳のどの部分に障害が起きている可能性があるかを推測します。痛みや負担の少ない検査ですので、安心してください。

確定診断に必要な画像診断(CT・MRI検査)

触診や神経学的検査で水頭症の疑いが強まった場合、確定診断を行うためには脳の中を直接見る必要があります。これには「MRI検査」や「CT検査」といった高度な画像診断が必要です。

特にMRI検査は、脳の構造や脳脊髄液の溜まり具合、脳の圧迫の程度を鮮明に映し出すことができるため、水頭症の診断には最も有効な検査とされています。ただし、これらの検査を行うには、犬に全身麻酔をかける必要があります。また、すべての動物病院にMRIやCTがあるわけではないため、大学病院や高度医療センターなどの専門施設を紹介されることが一般的です。

「麻酔が心配」「費用が気になる」という飼い主さんも多いかと思います。獣医師とよく相談し、検査を行うメリット(正確な病状把握、適切な治療方針の決定)とリスクを天秤にかけて判断していくことになります。場合によっては、超音波検査(エコー)で泉門の隙間から脳内を観察し、簡易的に診断することもあります。

水頭症の治療法と費用の目安

診断がついた後、次に考えるのは「どうやって治療していくか」ということです。水頭症の治療は、大きく分けて「内科的治療」と「外科的治療」の2つがあります。愛犬の年齢、症状の重さ、そして飼い主さんの希望や経済的な状況を総合的に考えて、最適な方法を選択していきます。

ここでは、それぞれの治療内容と、気になる費用の目安について解説します。

内科的治療:お薬による脳圧コントロールと緩和ケア

内科的治療は、お薬を使って症状を抑え、愛犬が楽に過ごせるようにすることを目的とします。水頭症そのものを「完治」させるものではありませんが、脳圧を下げることで症状を緩和し、QOL(生活の質)を維持することを目指します。

主に使用されるのは以下のようなお薬です。

  • 脳圧降下薬(イソバイドなど): 脳脊髄液の産生を抑えたり、排出を促したりして脳圧を下げます。
  • ステロイド薬: 脳の炎症やむくみを抑え、脳脊髄液の産生を減らす効果が期待されます。
  • 抗てんかん薬: けいれん発作がある場合に使用し、発作をコントロールします。

症状が軽度の場合や、麻酔のリスクが高く手術が難しい場合は、この内科的治療が選択されます。お薬は継続して飲む必要があるため、定期的な通院と投薬管理が大切になります。

外科的治療:VPシャント術の手術内容とリスク

内科的治療で十分な効果が得られない場合や、症状が進行している場合には、外科手術が検討されます。代表的な手術が「脳室腹腔シャント術(VPシャント術)」です。

この手術は、脳室(水が溜まっている場所)からお腹の中(腹腔)まで、皮膚の下を通して細いチューブ(シャントチューブ)を通すものです。これにより、余分な脳脊髄液をお腹の中に流し、自然に吸収させることで、脳への圧迫を物理的に解消します。

成功すれば劇的に症状が改善することもありますが、リスクも伴います。全身麻酔のリスクに加え、チューブが詰まってしまう、感染症を起こす、成長に伴ってチューブの長さが足りなくなる(子犬の場合)といった合併症の可能性があります。手術を行うかどうかは、専門の獣医師とじっくり話し合い、慎重に決める必要があります。

治療費・手術費用の相場とペット保険の適用

水頭症の治療には、ある程度の費用がかかります。動物病院によって料金設定は異なりますが、一般的な目安を知っておくことは大切です。

項目

費用の目安

初診・検査(血液検査・X線など)

1万〜3万円程度

MRI・CT検査(麻酔代含む)

10万〜30万円程度

内科治療(薬代・定期検診/月)

数千円〜2万円程度

外科手術(VPシャント術・入院費含む)

30万〜60万円以上

特に外科手術やMRI検査は高額になりがちです。ペット保険に加入している場合、水頭症が補償対象になるかどうかは契約内容によります。「先天性疾患」が補償対象外となっているプランもあるため、加入している保険会社の約款や窓口で確認してみましょう。これからお迎えする場合は、先天性疾患もカバーされる保険を検討するのも一つの選択肢です。

水頭症のチワワと穏やかに暮らすためのホームケア

水頭症と診断されても、あるいは疑いがある状態でも、日々の暮らしの中で飼い主さんがしてあげられることはたくさんあります。お薬や手術も大切ですが、一番の特効薬は「安心できるお家でのケア」かもしれません。

脳に障害があると、感覚や運動機能が低下していることがあります。愛犬が怪我をせず、ストレスなく過ごせるように、生活環境を少し見直してみましょう。

転倒・衝突を防ぐ部屋の環境づくり

ふらつきや視力障害がある場合、家の中のちょっとした段差や家具が危険な障害物になります。愛犬の目線になって、部屋の中をチェックしてみてください。

  • 床の滑り止め: フローリングは滑りやすく、転倒の原因になります。コルクマットや滑りにくいカーペットを敷き詰めましょう。
  • 家具の角の保護: ぶつかっても痛くないように、テーブルや椅子の脚にクッション材(コーナーガード)を取り付けましょう。
  • 段差の解消: ソファやベッドからの落下事故を防ぐため、スロープを設置するか、そもそも高い場所に登らせない工夫が必要です。
  • サークルの活用: 留守番中や目が届かない時は、安全なサークルの中で過ごさせるのが安心です。狭すぎず、ぶつかっても安全なソフトタイプのものがおすすめです。

食事や日常生活で飼い主ができるサポート

食事は、健康維持の基本です。首を下げて食べる姿勢は脳圧を上げやすいと言われることがあるため、食器台を使って少し高い位置で食べさせてあげると良いでしょう。また、嚥下(飲み込み)機能が弱っている場合は、フードをふやかしたり、流動食にしたりして、誤嚥を防ぐ工夫も必要です。

日常生活では、過度な興奮やストレスを避けることが大切です。激しい遊びや、大きな音、急激な温度変化は脳圧に影響を与える可能性があります。お散歩は体調が良い時に、平坦な道をゆっくり歩く程度にし、無理はさせないようにしましょう。また、頭(特にペコの部分)への衝撃は厳禁です。撫でる時も優しく、頭を叩いたりしないよう家族全員で共有してください。

愛犬の「QOL(生活の質)」を保つために大切なこと

水頭症の介護は、時に飼い主さんにとって精神的な負担になることもあるかもしれません。「治してあげられない」と自分を責める必要はありません。大切なのは、病気があっても愛犬が「今日もご飯が美味しい」「飼い主さんのそばで安心できる」と感じられる時間を守ってあげることです。

たとえ反応が薄くなっても、優しく声をかけ、体を撫でてあげてください。飼い主さんの温かい手と声は、愛犬にとって何よりの安心材料です。できないこと(散歩や芸など)に目を向けるのではなく、今できていること、穏やかに過ごせている瞬間に感謝し、一日一日を大切に過ごすことが、愛犬のQOLを高めることにつながります。

チワワの水頭症に関するよくある質問

 

Q. チワワの頭に「ペコ(泉門)」があるのですが、必ず水頭症になりますか?

 

A. いいえ、必ずしもそうではありません。チワワは犬種的にペコが閉じにくい傾向があり、健康な子でもペコがあることは珍しくありません。ただし、ペコが極端に大きい、緊張して硬く盛り上がっている、成長しても閉じないといった場合は水頭症のリスクがあるため、一度動物病院でチェックしてもらうと安心です。

 

 

 

Q. 水頭症の子犬はどれくらい生きられますか?(寿命について)

 

A. 症状の重さや治療への反応によって大きく異なるため、一概には言えません。重度の場合は早期に亡くなってしまうこともありますが、軽度で内科治療がうまくいったり、手術が成功したりすれば、天寿を全うできる子もいます。個体差が大きいため、獣医師と相談しながらその子に合ったケアを続けることが大切です。

 

 

 

Q. 水頭症は予防できますか?

 

A. 先天性の水頭症に関しては、遺伝的な要因が強いため、残念ながら飼い主さんが完全に予防することは難しいのが現状です。しかし、早期発見・早期治療によって症状の進行を抑えることは可能です。日頃の観察と定期的な健康診断が、結果的に一番の対策となります。

 

 

まとめ

チワワの水頭症は、飼い主さんにとって非常に心配な病気ですが、決して「何もしてあげられない病気」ではありません。早期に気づき、適切な治療と環境づくりを行うことで、愛犬との穏やかな時間を長く保つことは十分に可能です。

もし、「うちの子、もしかして…」と不安に思うサインがあれば、一人で悩まずに動物病院に相談してください。専門家の力を借りながら、愛犬にとって一番幸せな過ごし方を一緒に見つけていきましょう。あなたの「気づき」と「愛情」が、愛犬の生活を支える一番の力になります。

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