犬のクッシング症候群で食べてはいけないものリスト|症状の管理に役立つ食事のポイントを解説

犬のクッシング症候群で食べてはいけないものリスト|症状の管理に役立つ食事のポイントを解説

Table of Contents

  • 犬のクッシング症候群では、症状管理と合併症予防のために食事管理が非常に重要です。
  • 避けるべきは「高脂肪」「高炭水化物(高GI値)」「高ナトリウム(塩分)」の3つを含む食事です。これらは膵炎や糖尿病、高血圧のリスクを高めます。
  • 食事のポイントは「良質な低脂肪タンパク質」「血糖値を意識した食材」「適度な食物繊維」「健康をサポートする栄養素」の4つです。
  • 食事療法食は病状に合わせて栄養バランスが調整されており有効ですが、手作り食やおやつ、サプリメントを与える際は必ず獣医師への相談が必要です。

大切な愛犬がクッシング症候群と診断され、これからの生活について、大きな不安を感じていらっしゃることでしょう。「食事で気をつけることは?」「誤って症状を悪化させるものを与えてしまったらどうしよう…」そんな心配を抱えている飼い主様も少なくないはずです。

しかし、ご安心ください。食事管理は、クッシング症候群の愛犬の生活の質を支えるための、飼い主様ができる非常に重要なケアの一つです。この記事では、獣医師監修のもと、クッシング症候群の犬に「食べてはいけないもの」とその理由を分かりやすく解説し、日々の食事で心がけたい具体的なポイントまで、詳しくご紹介します。
この記事を読めば、愛犬のための食事選びに自信が持てるようになり、前向きな気持ちでケアに取り組めるはずです。

愛犬がクッシング症候群と診断された飼い主様へ

愛犬がクッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)と診断されたばかりの今、飼い主様は多くの情報と向き合い、戸惑いや不安を感じているかもしれません。しかし、適切な治療と並行して、日々の食事管理を丁寧に行うことで、愛犬のQOL(生活の質)を維持し、健やかな毎日をサポートすることが可能です。
食事管理は、この病気と長く付き合っていく上で、飼い主様が主体的に取り組める大切なケアです。これから一緒に、愛犬のために何ができるかを一つひとつ確認していきましょう。

まず知っておきたい、犬のクッシング症候群における食事管理の重要性

クッシング症候群は、コルチゾールというホルモンが過剰に分泌される病気です。このコルチゾールは体に様々な影響を及ぼし、多飲多尿や食欲の異常な増加、肥満などを引き起こします。
食事管理の目的は、病気そのものを治すことではありません。しかし、コルチゾールの影響で起こりやすくなる「肥満」「高血糖(糖尿病)」「高血圧」「膵炎」といった合併症のリスクを管理し、症状をコントロールするために非常に重要な役割を果たします。適切な食事は、治療薬の効果を最大限に引き出し、愛犬の体への負担を軽減するための強力なサポーターとなるのです。

犬のクッシング症候群で「食べてはいけないもの」とその理由

それでは、具体的にどのような食べ物を避けるべきなのでしょうか。クッシング症候群の食事管理で最も大切なのは、「高脂肪」「高炭水化物・高GI値」「高ナトリウム」の3つの要素を避けることです。

ここでは、なぜこれらを避けるべきなのか、その理由とともに詳しく解説します。愛犬の健康を守るための第一歩として、まずはこれらの食材を日々の食事から取り除くことを意識しましょう。

① 高脂肪な食事(膵炎や肥満のリスク)

クッシング症候群の犬は、血液中の中性脂肪が高くなりやすい傾向があります。高脂肪な食事は、この状態をさらに悪化させ、命に関わることもある「膵炎」という病気を引き起こす大きなリスクとなります。

また、異常な食欲亢進が見られることが多いため、高脂肪・高カロリーな食事は肥満を助長してしまいます。肥満は関節への負担を増やし、様々な病気の原因にもなります。愛犬を守るため、以下のような高脂肪な食べ物は避けましょう。

  • 豚バラ肉や脂身の多い牛肉
  • ソーセージ、ベーコンなどの加工肉
  • 揚げ物(唐揚げなど)
  • バターや生クリームを多く使った食品
  • 人間用のお菓子やスナック類

これらの食品は、たとえ少量であっても与えないように注意が必要です。

② 高炭水化物・高GI値の食事(血糖値の急上昇を招く)

コルチゾールには血糖値を上げる作用があるため、クッシング症候群の犬は高血糖になりやすく、糖尿病を併発するリスクが高い状態にあります。
特に、消化吸収が速く、食後の血糖値を急激に上昇させる高炭水化物・高GI(グリセミック・インデックス)値の食品は、インスリンを分泌する膵臓に大きな負担をかけてしまいます。血糖値の乱高下は体に大きなストレスを与えるため、血糖値を穏やかに保つ食事を心がけることが大切です。

具体的には、以下のような食材に注意しましょう。

  • 白米、パン、うどんなどの精製された穀物
  • じゃがいも、とうもろこし
  • かぼちゃ、にんじん(加熱するとGI値が上がるため与えすぎに注意)
  • 砂糖や果糖が多く含まれる果物やおやつ

③ 高ナトリウム(塩分)の食事(高血圧のリスク)

クッシング症候群では、コルチゾールの影響で高血圧になりやすいことも知られています。高血圧は心臓や腎臓に負担をかけ、さらなる合併症を引き起こす可能性があります。そのため、ナトリウム(塩分)の摂取量をコントロールすることが重要です。犬は人間ほど多くの塩分を必要としません。人間用の食事は犬にとって塩分過多になるため、絶対与えないようにしましょう。

特に注意が必要なのは、以下のような食品です。

  • チーズ、ハム、ソーセージなどの加工食品
  • 人間用のお惣菜や味付けされた肉・魚
  • 煮干し、しらす干し、鰹節など(塩分が含まれていることが多い)
  • パン(製造過程で塩分が使われるため)
  • 人間用のスナック菓子

クッシング症候群の犬の食事で心がけたい4つのポイント

食べてはいけないものを理解した上で、次は積極的に取り入れたい食事のポイントを見ていきましょう。「あれもダメ、これもダメ」と考えると気が滅入ってしまいますが、「愛犬のためにこれを選ぼう」と前向きな視点を持つことが、ケアを続ける上で大切です。

ここでは、クッシング症候群の犬の体をサポートするための4つの重要な食事のポイントをご紹介します。これらを意識することで、より良い食事管理が可能になります。

ポイント1:良質な低脂肪のタンパク質を選ぶ

クッシング症候群では、コルチゾールの影響で筋肉が分解されやすく、筋力が低下してしまうことがあります(カタボリズム)。そのため、筋肉を維持するために、良質で消化しやすいタンパク質を十分に摂取することが非常に重要です。
ただし、ここでも「低脂肪」であることが絶対条件です。脂肪の多い肉は避け、以下のような食材を中心に選びましょう。

  • 皮を取り除いた鶏むね肉やささみ
  • タラやカレイなどの白身魚
  • 卵(特に白身)
  • 脂肪の少ない赤身肉(少量)
  • これらのタンパク質源は、愛犬の体を作るための大切な材料となり、筋力維持をサポートしてくれます。

ポイント2:血糖値のコントロールを意識した食材を取り入れる

高GI値の食材を避ける一方で、血糖値の上昇が緩やかな「低GI値」の食材を積極的に取り入れましょう。これらの食材は、食物繊維が豊富で、満腹感を得やすいというメリットもあります。糖尿病のリスクを管理し、安定したエネルギー供給を助けるために、以下のような食材がおすすめです。

  • ブロッコリー、キャベツ、ほうれん草などの葉物野菜
  • きのこ類(しめじ、まいたけなど)
  • 豆類(ただし、与えすぎには注意)
  • 玄米や大麦(少量であれば、白米より推奨される場合がありますが、獣医師に要相談)
  • これらの食材を上手に活用し、血糖値の安定を目指しましょう。

ポイント3:適度な食物繊維で満腹感をサポート

クッシング症候群の症状の一つである「異常な食欲亢進」は、飼い主様を悩ませる問題です。食事の量を増やさずに満腹感を与えるために、食物繊維が役立ちます。食物繊維は消化されにくいため、胃の中に長く留まり、満腹感を持続させる効果が期待できます。
キャベツやブロッコリー、きのこ類など、低カロリーで食物繊維が豊富な野菜を食事に少量加えることで、愛犬の満足度を高める手助けになります。

ポイント4:オメガ3脂肪酸など、健康をサポートする栄養素

クッシング症候群の犬の全体的な健康をサポートするために、特定の栄養素が役立つことがあります。例えば、オメガ3脂肪酸(EPA・DHA)は、体内の炎症を抑える働きがあるとされ、皮膚の健康維持などに役立つ可能性があります。
ただし、魚油などは脂肪分も多いため、サプリメントで補う場合は必ず獣医師に相談し、適切な製品と量を選ぶことが重要です。抗酸化作用のあるビタミンを含む野菜なども、体の健康維持をサポートします。

クッシング症候群の犬のご飯選び:療法食と一般フードの違い

日々の食事を管理する上で、「療法食」という選択肢があります。これは、特定の病気を持つ犬のために栄養バランスが特別に調整されたフードのことです。一般のドッグフードとは目的が大きく異なるため、その役割を正しく理解し、愛犬の状態に合わせて獣医師と相談しながら選ぶことが大切です。

ここでは、療法食の役割と、併発疾患がある場合の注意点について解説します。

食事療法食の役割と選び方の基本

クッシング症候群の犬のために設計された食事療法食は、これまで解説してきた食事のポイントをすべて満たすように作られています。具体的には、低脂肪、低ナトリウムに調整され、血糖値が上がりにくいように炭水化物の種類や量が工夫されています。

また、筋肉維持のための良質なタンパク質も適切に含まれています。自己判断で手作り食を作るのは栄養バランスの面で非常に難しいですが、療法食であれば手軽に最適な栄養管理が可能です。どの療法食が愛犬に合っているかは、症状や併発疾患の有無によって異なるため、必ず獣医師の指導のもとで選びましょう。

項目

食事療法食

一般のドッグフード

目的

特定の病気の食事管理

健康な犬の栄養維持

脂肪分

厳密に制限されていることが多い

製品により様々

炭水化物

血糖値に配慮し、種類や量を調整

製品により様々

ナトリウム

制限されていることが多い

製品により様々

購入方法

動物病院での処方が基本

ペットショップ、スーパー等

併発疾患(糖尿病・膵炎など)がある場合の注意点

クッシング症候群は、他の病気を併発しやすいという特徴があります。もし愛犬がすでに糖尿病や膵炎、腎臓病などを併発している場合、食事管理はさらに慎重に行う必要があります。例えば、

  • 糖尿病を併発している場合:血糖値のコントロールが最優先されます。炭水化物の量と質をより厳密に管理する必要があります。
  • 膵炎を併発、または既往歴がある場合:脂肪の制限が絶対的な最優先事項となります。ごくわずかな脂肪でも再発の引き金になることがあります。
  • 腎臓病を併発している場合:タンパク質やリンの量を制限する必要が出てくることがあります。

このように、併発疾患によって優先すべき栄養管理のポイントが変わってきます。自己判断は非常に危険ですので、必ず獣医師の指示に従い、愛犬の状態に合わせた食事プランを立ててもらいましょう。

おやつ・手作りごはん・サプリに関する注意点

主食以外に与えるものについても、正しい知識を持つことが大切です。良かれと思って与えたおやつやサプリメントが、かえって愛犬の体に負担をかけてしまうこともあります。

ここでは、おやつ、手作りごはん、サプリメントに関する注意点を解説します。

おやつは与えても良い?選び方のコツ

おやつは、コミュニケーションの一環として与えたいと考える飼い主様も多いでしょう。与えること自体は可能ですが、選び方には注意が必要です。市販のジャーキーやビスケットは、脂肪や塩分、糖分が多いものがほとんどなので避けましょう。
おやつを選ぶ際は、主食と同様に「低脂肪・低糖質・低塩分」が原則です。茹でた鶏ささみやブロッコリー、きゅうりなどを少量与えるのがおすすめです。ただし、おやつは1日の総摂取カロリーの10%以内にとどめ、与えすぎないようにしましょう。

手作りごはんを検討する際の注意点

愛情を込めて手作りごはんを作ってあげたいという気持ちは素晴らしいものです。しかし、クッシング症候群のような複雑な病状を持つ犬の栄養バランスを完璧に整えるのは、専門家でも非常に難しい作業です。必要な栄養素が不足したり、特定の栄養素が過剰になったりするリスクが常に伴います。
もし手作り食を検討する場合は、自己流で行うのではなく、必ず獣医栄養学の専門知識を持つ獣医師に相談し、指導を受けながらレシピを作成してもらうようにしてください。

サプリメントは健康維持に役立つ?

クッシング症候群の犬の健康維持をサポートするとされるサプリメントもあります。例えば、肝臓の負担を軽減する成分や、皮膚の健康を保つオメガ3脂肪酸などが挙げられます。
しかし、サプリメントは医薬品ではなく、その効果はあくまで健康維持の補助的なものです。また、中には病状や服用中の薬との相性が悪いものもあります。愛犬に合ったものを選ぶため、そして安全に使用するために、サプリメントを与える前には必ずかかりつけの獣医師に相談しましょう。

【基礎知識】そもそも犬のクッシング症候群とは?

最後に、クッシング症候群という病気そのものについて、基本的な情報を簡単にご紹介します。病気への理解を深めることは、日々のケアへのモチベーションにも繋がります。なぜ食事管理が重要なのかを、より深く理解するためにも役立つはずです。

原因と主な症状

犬のクッシング症候群は、副腎から分泌される「コルチゾール」というホルモンが過剰になることで発症します。原因の多くは、脳の下垂体にできた腫瘍や、副腎そのものにできた腫瘍です。主な症状としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 水をたくさん飲み、おしっこの量が増える(多飲多尿)
  • 食欲が異常に増す(食欲亢進)
  • お腹がぽっこりと膨らむ(腹部膨満)
  • 左右対称性の脱毛
  • 皮膚が薄くなる、黒ずむ

これらの症状はゆっくり進行するため、老化のせいだと思われがちです。

一般的な治療法

クッシング症候群の治療は、原因によって異なりますが、多くの場合、コルチゾールの分泌を抑えるための内科的治療(投薬)が中心となります。薬によってホルモン量をコントロールし、症状を緩和させることが目的です。
治療は生涯にわたって続くことがほとんどで、定期的な血液検査でホルモンの値をモニタリングしながら、薬の量を調整していきます。食事管理は、この内科治療を支え、合併症を防ぐための重要な柱となります。

まとめ:獣医師と相談しながら愛犬に合った食事管理を

この記事では、犬のクッシング症候群で食べてはいけないもの、そして積極的に取り入れたい食事のポイントについて解説しました。重要なのは、高脂肪・高炭水化物・高ナトリウムの食事を避け、良質な低脂肪タンパク質や食物繊維を適切に取り入れることです。
しかし、最も大切なのは、これらの情報を基に、必ずかかりつけの獣医師と相談することです。愛犬の体重、年齢、症状の重さ、そして併発疾患の有無によって、最適な食事は一頭一頭異なります。獣医師という心強いパートナーと共に、愛犬にぴったりの食事プランを見つけていきましょう。

犬のクッシング症候群の食事に関するよくある質問(FAQ)

 

療法食は一生続けないといけないのでしょうか?

 

クッシング症候群は生涯にわたる管理が必要な慢性疾患であるため、基本的には療法食を継続することが推奨されます。病状が安定していても、自己判断で一般のフードに戻すと、症状や合併症のリスクが再燃する可能性があります。
ただし、愛犬の状態の変化(体重の増減、他の病気の発症など)に応じて、獣医師がフードの種類や量を見直すことはあります。定期的な診察を受け、常に最適な食事を続けることが大切です。

 

食欲がすごすぎて困っています。食事で何か工夫できますか?

 

異常な食欲亢進はクッシング症候群の代表的な症状で、治療によってコルチゾール値が安定してくると、徐々に落ち着くことが多いです。食事での工夫としては、まず獣医師に相談の上で、茹でたキャベツやブロッコリーなどの低カロリーな野菜で食事の「かさ増し」をし、満腹感を得やすくする方法があります。
また、一回の食事を数回に分けて与えたり、フードを知育トイに入れて時間をかけて食べさせたりするのも有効です。

 

クッシング症候群と診断されてから、逆に痩せてきました。食事を変えるべきですか?

 

クッシング症候群では食欲が増して太ることが多いですが、筋肉量が減少(筋委縮)することで体重が減るケースもあります。もし体重が減少している場合は、筋肉の分解が進んでいる可能性や、他に隠れた病気がある可能性も考えられます。自己判断で食事の量を増やしたり、高カロリーなものに変えたりするのは危険です。必ずかかりつけの獣医師に相談し、体重減少の原因を正確に診断してもらった上で、食事プランを再検討してください。

 

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