犬の水頭症とは?初期症状・原因・家庭でできるケアをわかりやすく解説
Table of Contents
- もしかして水頭症?愛犬にこんな症状はありませんか【症状チェックリスト】
- 行動や様子の変化に関するサイン
- 動きや神経に関するサイン
- 見た目の変化に関するサイン
- 犬の水頭症とは?脳に液体がたまる仕組みをわかりやすく解説
- 「脳脊髄液」の役割と水頭症のメカニズム
- 水頭症の主な原因|生まれつき?それとも後から?
- 先天性水頭症
- 後天性水頭症
- 水頭症になりやすい犬種|特にチワワなどの小型犬は注意が必要
- 動物病院での診断方法|どんな検査をするの?
- 問診と神経学的検査
- 画像診断(CT・MRI検査など)
- 犬の水頭症のサポート方法|内科的・外科的アプローチ
- 内科的アプローチ:薬による症状の管理
- 外科的アプローチ:VPシャント術とは
- 水頭症と診断されたら|家庭でできるケアと長期的な付き合い方
- 安全な環境づくりと生活の工夫
- 定期的な検診と症状のモニタリングの重要性
- 犬の水頭症に関するよくあるご質問(FAQ)
- まとめ
愛犬がいつもと違う様子を見せると、とても心配になりますよね。「最近なんだか元気がない」「歩き方が少しおかしいかも…」そんな小さな変化に気づき、もしかして病気なのではと不安に感じている飼い主さんもいらっしゃるかもしれません。
特に「犬 水頭症」という言葉を耳にして、愛犬の症状と重なる部分があると感じると、どうすれば良いのか分からなくなってしまうこともあるでしょう。
この記事では、犬の水頭症とはどのような病気なのか、その原因や具体的な症状、そして動物病院での診断やご家庭でできるサポート方法について、専門的な言葉をできるだけ使わずに、わかりやすく解説します。愛犬のサインを正しく理解し、適切な次の行動に移すための第一歩として、ぜひお役立てください。
もしかして水頭症?愛犬にこんな症状はありませんか【症状チェックリスト】

水頭症のサインは、行動、動き、見た目など、さまざまな形で現れることがあります。愛犬の様子で気になることがないか、以下のチェックリストで確認してみましょう。
ただし、これらの症状は他の病気の可能性も考えられます。自己判断せず、不安な点があれば動物病院に相談することが大切です。
行動や様子の変化に関するサイン
脳が圧迫されることで、性格や行動に変化が見られることがあります。以前はできていたことができなくなったり、様子がおかしいと感じたりしたら注意深く観察しましょう。
- なんとなく元気がない、ぼーっとしている時間が増えた
- 落ち着きがなく、同じ場所をぐるぐる歩き回る(旋回運動)
- しつけやトイレの失敗が増えるなど、学習能力が低下したように感じる
- 飼い主を認識できない、または反応が鈍いことがある
- 理由なく鳴いたり、攻撃的になったりする
- 狭い場所に入りたがる、または頭を壁や家具に押し付ける
特に、頭をぐっと押し付けるような行動は、頭痛などの不快感を和らげようとしているサインの可能性があり、注意が必要です。
動きや神経に関するサイン
脳からの指令がうまく伝わらなくなることで、体の動きに異常が見られることがあります。歩き方や体の使い方に違和感がないかチェックしてみましょう。
- 歩くときにふらつく、よろける、またはつまずきやすい
- 足がもつれてうまく歩けない(運動失調)
- 突然、体を硬直させて倒れるなどのけいれん発作を起こす
- 視力に問題があるようで、物によくぶつかる
- 眼球が揺れたり、左右の目の位置がずれたりする(斜視)
- 体の片側だけに麻痺が見られることがある
- こうした神経に関するサインは、水頭症が進行している可能性を示す場合もあります。気になる行動があれば、動画で撮影しておくと診察の際に役立ちます。
見た目の変化に関するサイン
特に子犬の頃から発症する先天性の水頭症では、頭の形に特徴的な変化が見られることがあります。
- 頭全体がドーム状に丸く、大きく見える
- 目がやや外側を向いているように見える(斜視)
- 頭のてっぺんにある泉門(せんもん)という骨の隙間が、成長しても閉じずに開いたままである
ただし、チワワなどの犬種では、泉門が開いていることが必ずしも異常ではありません。見た目の変化だけで判断せず、他の症状と合わせて考えることが重要です。
犬の水頭症とは?脳に液体がたまる仕組みをわかりやすく解説

犬の水頭症は、脳の中に「脳脊髄液(のうせきずいえき)」と呼ばれる液体が過剰にたまってしまう病気です。たまった液体が脳を内側から圧迫することで、神経にダメージを与え、さまざまな症状を引き起こします。
ここでは、その仕組みをもう少し詳しく、そして分かりやすく解説します。
「脳脊髄液」の役割と水頭症のメカニズム
私たちの脳や脊髄は、脳脊髄液という無色透明な液体に浮かぶような形で守られています。この液体には、脳に栄養を供給したり、衝撃から守るクッションになったり、老廃物を運び出したりといった大切な役割があります。
脳脊髄液は、脳の中にある「脳室」という空間で常に作られ、脳と脊髄の周りを循環し、最終的には血管に吸収されていきます。
この「作る→循環する→吸収する」という流れのバランスが保たれることで、脳内の液体量は一定に維持されています。
しかし、何らかの原因でこのバランスが崩れると、水頭症が起こります。具体的には、
- 産生過多:脳脊髄液が作られすぎてしまう
- 循環障害:通り道が狭くなったり塞がったりして、うまく流れない
- 吸収障害:うまく吸収されず、行き場がなくなってしまう
これらの理由で脳室内に脳脊髄液が過剰にたまり、風船のように膨らんで脳を圧迫してしまうのです。この圧迫が、神経細胞にダメージを与え、先ほどチェックリストで見たような様々な症状を引き起こす原因となります。
水頭症の主な原因|生まれつき?それとも後から?

犬の水頭症は、発症する時期によって大きく二つのタイプに分けられます。生まれつきの要因で発症する「先天性水頭症」と、生まれてから何らかの病気やケガがきっかけで発症する「後天性水頭症」です。
それぞれの原因について見ていきましょう。
先天性水頭症
先天性水頭症は、生まれつき脳の構造に異常があることで発症します。特に、脳脊髄液の通り道が狭い、または塞がっていることが原因となるケースが多いとされています。
チワワやトイ・プードルといった特定の犬種で多く見られることから、遺伝的な要因が関わっていると考えられています。
症状は、子犬の頃から現れることが多く、生後数週間から1年以内に気づかれることが一般的です。頭がドーム状に大きい、泉門が開いたままであるといった見た目の特徴に加え、成長の遅れやしつけが入りにくいといったサインが見られることもあります。
ただし、症状が非常に軽度で、成長するまで気づかれないケースもあります。
後天性水頭症
後天性水頭症は、もともと正常だった犬が、成長の過程でかかる病気や頭部のケガなどが原因で発症します。脳脊髄液の流れが妨げられたり、吸収がうまくいかなくなったりすることで起こります。
主な原因としては、以下のようなものが挙げられます。
- 脳腫瘍:腫瘍が脳脊髄液の通り道を圧迫・閉塞する。
- 感染症・炎症:脳炎や髄膜炎などにより、脳脊髄液の産生が増えたり、吸収が悪くなったりする。
- 頭部の外傷:事故などによる頭部への強い衝撃で、脳内出血が起こり、それが原因で流れが妨げられる。
後天性水頭症は、犬種や年齢に関わらず、どの犬にも起こる可能性があります。
水頭症になりやすい犬種|特にチワワなどの小型犬は注意が必要
水頭症、特に先天性のものは、特定の犬種で発症しやすい傾向があります。これは、犬種の小型化や特徴的な頭の形を作り出すための選択的な繁殖が、遺伝的に影響していると考えられています。
もし、これからお迎えを考えている、あるいは現在一緒に暮らしている愛犬が以下の犬種に当てはまる場合は、水頭症の可能性があることを心に留めておくと、万が一の時に早期発見につながります。
【特に注意が必要な犬種】
- チワワ:最も発生率が高いとされる犬種の一つです。アップルヘッドと呼ばれる丸い頭の形状が特徴です。
- トイ・プードル:小型で人気のある犬種ですが、水頭症の好発犬種としても知られています。
- ポメラニアン:小さく愛らしい姿ですが、注意が必要な犬種に含まれます。
- ヨークシャー・テリア:「ヨーキー」の愛称で親しまれる小型犬もリスクが高いとされています。
- マルチーズ:純白の被毛が美しいマルチーズも、先天性水頭症が起こりやすい犬種です。
- パグ、シーズー、ペキニーズなどの短頭種:鼻が短く、特徴的な頭の形を持つこれらの犬種も注意が必要です。
もちろん、これらの犬種だからといって必ず発症するわけではありませんし、他の犬種では発症しないというわけでもありません。
しかし、リスクが高いとされる犬種については、子犬の頃から行動や様子を注意深く観察してあげることが大切です。
動物病院での診断方法|どんな検査をするの?

愛犬の症状から水頭症が疑われる場合、動物病院では正確な診断のためにいくつかの検査を行います。飼い主さんの話から得られる情報も非常に重要になりますので、どのような検査が行われるのかを知っておくと、落ち着いて対応できるでしょう。
問診と神経学的検査
まず最初に行われるのが、飼い主さんへの詳しい問診です。「いつから、どのような症状が見られるか」「気になる行動の頻度やタイミング」などを獣医師に詳しく伝えます。このとき、先述したように、愛犬の気になる行動をスマートフォンなどで動画撮影しておくと、口頭で説明するよりも正確に症状を伝えることができ、診断の大きな助けになります。
次に、神経学的検査を行います。これは、獣医師が犬の歩き方、姿勢、反射(ハンマーで膝を叩くような検査など)、目の動きなどをチェックし、脳や神経のどこに異常があるのかを評価する検査です。これにより、症状の原因が脳にある可能性が高いかどうかを判断します。
画像診断(CT・MRI検査など)
神経学的検査で脳の異常が強く疑われた場合、確定診断のために頭部の画像診断が行われます。これにより、脳の状態を直接見ることができます。
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CT検査・MRI検査:これらの検査は、脳を輪切りにしたような詳細な画像を得ることができ、水頭症の診断において最も重要な検査とされます。脳室がどの程度拡大しているか、脳がどれくらい圧迫されているかを正確に評価できます。
また、脳腫瘍や炎症など、後天性水頭症の原因となっている病気がないかも確認できます。検査には全身麻酔が必要となります。 - 超音波(エコー)検査:泉門が開いている子犬の場合、そこから超音波を当てることで脳室の拡大を確認できることがあります。麻酔が不要で体への負担が少ないという利点がありますが、得られる情報は限定的です。
犬の水頭症のサポート方法|内科的・外科的アプローチ
水頭症と診断された場合、その子の症状の重さや進行度、年齢、そして飼い主さんの希望などを総合的に考慮して、サポートの方針が決定されます。アプローチは大きく分けて、薬で症状をコントロールする「内科的アプローチ」と、手術で根本的な原因に働きかける「外科的アプローチ」があります。
内科的アプローチ:薬による症状の管理
内科的アプローチは、主に症状が軽度の場合や、手術が難しい高齢の犬、他の病気を持っている犬などに選択されることが多い方法です。目的は、薬を使って脳圧を下げ、症状を和らげることです。
主に使用される薬には以下のようなものがあります。
- 利尿薬:体内の水分バランスを調整し、脳のむくみ(脳浮腫)を軽減したり、脳脊髄液の産生を抑えたりすることで、脳圧を下げる効果が期待されます。
- ステロイド剤:脳の炎症を抑えたり、脳室の周りに生じる脳のむくみ(浮腫)を軽減し、症状を和らげる目的で使われます。
- 抗けいれん薬:けいれん発作を起こしている場合に、発作を予防・抑制するために使用します。
- これらの薬は、病気そのものを無くすものではなく、あくまで症状を管理するためのものです。そのため、生涯にわたって投薬が必要になることが多く、定期的な通院と状態のチェックが欠かせません。
外科的アプローチ:VPシャント術とは
外科的アプローチは、症状が重度である場合や、内科的な方法ではコントロールが難しい場合に検討されます。最も一般的に行われるのが「脳室-腹腔(VP)シャント術」です。
これは、脳室にたまった過剰な脳脊髄液を、細いチューブ(シャント)を使ってお腹の中(腹腔)に流し、そこで吸収させるという手術です。これにより、脳への圧迫を物理的に取り除き、症状の進行を抑えることを目指します。手術が成功すれば、症状の改善が見込めるとともに、病気の進行を抑えることが期待できます。
ただし、手術には全身麻酔のリスクが伴うほか、術後にシャントが詰まったり、感染を起こしたりする合併症の可能性もあります。そのため、手術を行うかどうかは、そのメリットとデメリットを獣医師と十分に話し合った上で慎重に決定する必要があります。
水頭症と診断されたら|家庭でできるケアと長期的な付き合い方

愛犬が水頭症と診断されると、飼い主さんは大きな不安を感じるかもしれません。しかし、適切なケアと工夫によって、愛犬の生活の質(QOL)を維持し、穏やかな毎日をサポートすることは可能です。
ここでは、ご家庭でできるケアと、病気との長期的な付き合い方について解説します。
安全な環境づくりと生活の工夫
水頭症の症状によっては、ふらつきや視力の低下、発作などが起こる可能性があります。愛犬が家の中で安全に過ごせるよう、環境を整えてあげましょう。
- 滑りにくい床材:フローリングにはカーペットやマットを敷き、足が滑らないように工夫しましょう。
- 家具の角を保護:歩行が不安定でぶつかる可能性があるため、家具の角にコーナーガードなどを付けてケガを防ぎます。
- 段差をなくす:小さな段差でもつまずきの原因になります。スロープを設置するなどして、安全に移動できるようにしましょう。
- 落ち着ける場所の確保:刺激が少なく、静かで安心できる寝床やクレートを用意してあげましょう。
- 頭をぶつけない工夫:旋回運動や頭を押し付ける行動がある場合は、サークル内をクッションで囲うなどの対策も有効です。
愛犬の症状に合わせて、危険な場所を減らし、快適に過ごせる空間を作ってあげることが大切です。
定期的な検診と症状のモニタリングの重要性
水頭症は、生涯にわたって付き合っていく必要のある病気です。獣医師の指示に従い、定期的に検診を受けることが非常に重要です。検診では、症状の変化や薬の効果などを評価し、その時々の状態に合わせた最適なサポート方法を検討します。
また、日々の愛犬の様子を注意深く観察し、記録をつけることも役立ちます。「どんな時にふらつくか」「発作の頻度や時間」「食欲や元気の波」などをメモしておくと、診察の際に獣医師に的確な情報を伝えることができます。
犬の水頭症に関するよくあるご質問(FAQ)
水頭症のサポートにかかる費用はどのくらいですか?
費用は、検査内容やサポート方法によって大きく異なります。一般的に、CTやMRIなどの画像診断には数万円から10万円以上かかることがあります。内科的アプローチの場合は、定期的な診察代と薬代が生涯にわたって必要です。VPシャント術などの外科手術を行う場合は、数十万円以上の費用がかかることが一般的です。
ペット保険に加入している場合は補償の対象となるか、事前に確認しておくと良いでしょう。
水頭症と診断されたら、寿命は短くなりますか?
水頭症の予後(今後の見通し)は、症状の重症度や進行の速さ、診断された年齢、そしてサポートへの反応によって大きく異なります。症状が軽度で、薬によってうまくコントロールできている場合は、普通の犬と変わらない生活を送れることもあります。
一方で、重度の症状があったり、進行が速い場合は、残念ながら寿命に影響することもあります。大切なのは、早期に適切なサポートを開始し、愛犬の生活の質をできるだけ高く保ってあげることです。
水頭症は予防できますか?
遺伝的な要因が強い先天性水頭症を、家庭で確実に予防することは難しいのが現状です。信頼できるブリーダーから迎える際に、親犬や兄弟犬の健康状態について確認することも一つの方法かもしれません。
後天性水頭症については、原因となる脳炎や頭部のケガなどを防ぐことが予防につながります。例えば、定期的なワクチン接種や、交通事故などに遭わないよう室内飼育を徹底し、散歩中はリードをしっかり持つことなどが挙げられます。
まとめ
犬の水頭症は、脳に液体がたまることで様々な神経症状を引き起こす病気です。特にチワワなどの小型犬に多い先天性のものと、病気やケガが原因で起こる後天性のものがあります。もし愛犬に「ふらつく」「ぐるぐる回る」「ぼーっとしている」などの気になるサインが見られたら、それは病気のサインかもしれません。
この記事で紹介した症状チェックリストを参考にしつつも、決して自己判断はせず、できるだけ早く動物病院に相談することが何よりも大切です。早期に適切なサポートを始めることが、愛犬の負担を和らげ、穏やかな毎日を守ることに繋がります。

