犬の耳掃除の正しいやり方|自宅でできる手順と頻度、嫌がる場合の対処法まで解説

犬の耳掃除の正しいやり方|自宅でできる手順と頻度、嫌がる場合の対処法まで解説

Table of Contents

この記事でわかること

  • 犬に耳掃除が本当に必要か、その適切な頻度がわかります。
  • 初心者でも安心!自宅でできる安全な耳掃除のステップを学べます。
  • 愛犬を傷つけないために、絶対にやってはいけないNG行為を理解できます。
  • 耳のトラブルを示す危険なサインと、動物病院へ行くべきタイミングが判断できます。
  • 愛犬が耳掃除を嫌がる場合の、優しい慣らせ方や対処法を知ることができます。

そもそも犬に耳掃除は必要?頻度の目安は?

「愛犬の耳、どのくらいの頻度でケアすればいいの?」と疑問に思う飼い主さんは多いかもしれません。実は、犬の耳掃除は必ずしも頻繁に行う必要はなく、やりすぎてしまうと逆に耳のトラブルを招くこともあります。

まずは犬の耳の基本的な構造と、適切なケアの頻度について理解を深めましょう。愛犬の健康を守るための第一歩です。

犬の耳はデリケートなL字構造!基本的には自浄作用がある

犬の耳の穴(耳道)は、人間と違ってL字型に曲がっています。この複雑な構造のため、一度トラブルが起きると湿気がこもりやすく、細菌などが繁殖しやすい環境になりがちです。

しかし、健康な犬の耳には、耳垢や古い皮膚を自然に外へ排出しようとする「自浄作用」が備わっています。そのため、目立った汚れや異常がなければ、過度な耳掃除は必要ありません。この自浄作用を妨げないことが、耳の健康を保つ上でとても大切なのです。

耳掃除の適切な頻度|やりすぎは逆効果になることも

健康な耳を持つ犬の場合、耳掃除の頻度は月に1〜2回程度が目安です。あるいは、週に1回程度、耳の中を軽くチェックする習慣をつけ、汚れが気になるときだけ掃除するのでも十分でしょう。やりすぎは禁物です。頻繁な耳掃除は、耳の皮膚を守るために必要な皮脂まで取り除いてしまい、乾燥や炎症を引き起こす原因になります。
また、耳道を傷つけてしまい、外耳炎などのトラブルにつながる恐れもあります。

アドバイス:耳掃除は「治療」ではなく「お手入れ」です。汚れがないのに毎日掃除したり、奥までゴシゴシこすったりするのは絶対にやめましょう。耳の健康状態をチェックする習慣こそが最も重要です。

特に耳のケアが必要な犬種の特徴

すべての犬が同じ頻度で良いわけではありません。特に耳のトラブルを起こしやすい犬種は、よりこまめなチェックとケアが必要になる場合があります。例えば、以下のような特徴を持つ犬種です。

  • 垂れ耳の犬種:コッカー・スパニエル、ダックスフンド、ビーグルなど。耳が垂れていることで通気性が悪く、湿気がこもりやすいため注意が必要です。
  • 耳の中に毛が多い犬種:トイ・プードル、シーズー、シュナウザーなど。毛が密集していると、耳垢が絡まりやすく、通気も悪くなります。
  • 皮脂の分泌が多い犬種:アメリカン・コッカー・スパニエルやシーズーなど、脂漏症になりやすい犬種は耳垢もたまりやすい傾向があります。

自宅でできる!犬の耳掃除の正しい手順

愛犬の耳を傷つけないか不安な方も、正しい手順とポイントさえ押さえれば、自宅で安全にケアすることができます。

ここでは、初心者の方でも安心して実践できる、基本的な耳掃除のステップを分かりやすく解説します。リラックスした気持ちで、愛犬とのコミュニケーションの時間と捉えて行いましょう。

ステップ1:耳掃除に必要なものを準備する

まず、必要なものをすべて手元に揃えてから始めましょう。途中で物を探しに行くと、犬が落ち着かなくなってしまうことがあります。

  • 犬用のイヤークリーナー(洗浄液):必ず犬専用のものを選びましょう。アルコール成分の入っていない、低刺激性のものがおすすめです。
  • コットンまたはガーゼ:柔らかく、耳の皮膚を傷つけにくいものを用意します。脱脂綿やカット綿が使いやすいでしょう。
  • ご褒美用のおやつ:耳掃除が終わった後や、おとなしくできた時にあげるためのものです。

ステップ2:まずは耳の状態をチェック

掃除を始める前に、必ず耳の中の状態を目で見て確認しましょう。健康な耳は、薄いピンク色をしていて、ひどい臭いはありません。少量の薄茶色や黄色の耳垢は正常な範囲です。以下の点に異常がないかチェックしてください。

  • 耳がひどく赤くなっていないか
  • 強い異臭はしないか
  • 黒やこげ茶、黄色や緑色のドロドロした耳垢はないか
  • 耳を触ると痛がらないか

もしこれらのサインが見られた場合は、自宅でのケアは中止し、動物病院に相談してください。

ステップ3:イヤークリーナーで優しく汚れを拭き取る

いよいよ汚れを拭き取っていきます。愛犬を優しくなでてリラックスさせながら行いましょう。コットンやガーゼにイヤークリーナーをたっぷりと染み込ませ、軽く絞ってから使います。液が垂れると犬がびっくりしてしまうので注意してください。

コットンを指に巻きつけ、耳の入り口から見える範囲のシワや溝に沿って、優しく汚れを拭き取っていきます。内側から外側へ、汚れをかき出すようなイメージで行うのがポイントです。一度拭いた面は使わず、常にきれいな面で拭くようにしましょう。

耳の入り口から見える範囲を拭くだけでOK

大切なのは、決して耳の奥まで指やコットンを入れようとしないことです。犬の耳はデリケートなL字構造になっているため、奥を無理に掃除しようとすると、耳垢を押し込んでしまったり、鼓膜を傷つけたりする危険があります。あくまで「目で見える範囲の汚れを優しく拭う」だけで十分だと覚えておきましょう。

洗浄液を耳に入れる場合の注意点

汚れがひどい場合、獣医師の指導のもとで洗浄液を直接耳に注ぐ方法もあります。この方法を行う際は、洗浄液を耳の中に数滴垂らし、耳の付け根を優しくクチュクチュとマッサージします。
その後、犬がブルブルと頭を振るのに任せ、出てきた汚れと液体をコットンで拭き取ります。ただし、鼓膜に傷がある場合などは危険なため、自己判断で行わず、必ず獣医師に相談してからにしましょう。

ステップ4:終わったらたくさん褒めてあげる

耳掃除が終わったら、たとえ少し嫌がったとしても、「よく頑張ったね!」「えらいね!」とたくさん褒めて、とっておきのおやつをあげましょう。
これを繰り返すことで、「耳掃除=良いことがある」と学習し、次回からのお手入れがスムーズになります。耳掃除を嫌な時間にしないための、とても重要なステップです。

【重要】犬の耳掃除でやってはいけないNG行為

良かれと思ってやっていることが、実は愛犬の耳を傷つけ、深刻なトラブルを引き起こす原因になっているかもしれません。

ここでは、飼い主さんがやりがちな、しかし絶対に避けるべきNG行為を3つご紹介します。愛犬のデリケートな耳を守るために、必ず覚えておいてください。

NG①:綿棒を耳の奥に入れる

人間用の綿棒を犬の耳掃除に使うのは非常に危険です。細い綿棒は、耳の奥まで簡単に入ってしまいますが、それによって耳垢をさらに奥へと押し込んでしまい、耳垢の塊を作ってしまう原因になります。最悪の場合、デリケートな鼓膜を傷つけてしまう恐れもあります。綿棒は絶対に使用せず、コットンやガーゼを使いましょう。

NG②:人間用のアルコールやウェットティッシュを使う

人間用の消毒用アルコールやウェットティッシュは、犬の皮膚には刺激が強すぎます。これらを使うと、耳の皮膚が荒れてしまったり、必要な皮脂まで奪って乾燥させ、かえって炎症を引き起こす原因になります。
耳掃除には、必ず犬の皮膚のpHに合わせて作られた、犬専用のイヤークリーナーを使用してください。

NG③:耳毛を無理に抜く

耳の中に毛が多い犬種の場合、耳毛が気になるかもしれませんが、自宅で無理に抜くのはやめましょう。毛を抜いた毛穴から細菌が入り、炎症を起こす(毛嚢炎)ことがあります。
耳毛の処理が必要かどうかは犬の状態によって異なり、専門的な判断と技術が必要です。気になる場合は、トリミングサロンや動物病院でプロにお願いしましょう。

動物病院へ相談すべき耳のサインとは?

日々の耳チェックで「いつもと違うな」と感じたら、それは病気のサインかもしれません。耳のトラブルは放置すると悪化しやすく、慢性化することもあります。自己判断でケアを続けるのではなく、早めに専門家である獣医師に相談することが大切です。

ここでは、動物病院を受診すべき危険なサインを具体的に解説します。

耳垢の色や量、においをチェックしよう

耳垢は健康のバロメーターです。以下のような耳垢が見られたら、病気の可能性があります。

  • 黒くてカサカサした耳垢:耳ダニ(耳疥癬)に感染している可能性があります。非常に強いかゆみを伴います。
  • ベタベタした茶色〜黒っぽい耳垢で、甘酸っぱい臭いがする:マラセチアという酵母菌(カビの一種)が異常増殖している可能性があります。
  • 黄色や緑色のドロドロした耳垢で、強い悪臭がする:細菌感染による外耳炎が疑われます。
  • 耳垢の量が急に増えた:何らかの炎症が起きているサインかもしれません。

犬が示す耳の不調のサイン(行動)

犬は言葉で不調を訴えられません。そのため、行動の変化に気づいてあげることが重要です。以下のような行動が頻繁に見られる場合は、耳に痛みやかゆみを感じている証拠です。

  • しきりに頭を振る(ブルブルする)
  • 後ろ足で耳のあたりを激しく掻く
  • 耳を家具や床にこすりつける
  • 首を傾けたままにしている
  • 耳を触られるのを極端に嫌がる、触ると鳴く
  • 耳の周りの毛が抜けている
  • これらのサインが一つでも見られたら、早めに動物病院を受診しましょう。

愛犬が耳掃除を嫌がる場合の対処法

「耳掃除をしようとすると、愛犬が逃げたり怒ったりして大変…」という悩みは少なくありません。犬にとって、耳は非常に敏感な部分。無理やり押さえつけて掃除をすると、恐怖心から耳掃除がトラウマになってしまいます。

ここでは、愛犬に負担をかけず、少しずつ耳掃除に慣れてもらうための方法をご紹介します。

おやつを使って少しずつ慣れさせる

焦りは禁物です。ポジティブな経験を積み重ねることが成功への近道です。「耳を触る=おやつがもらえる」という良いイメージを結びつけていきましょう。

  1. まずは耳を優しく触ることから始めます。触れたらすぐに褒めておやつをあげます。
  2. 次に、コットンを手に持ち、耳の周りに近づけてみます。おとなしくできたら、また褒めておやつをあげます。
  3. コットンで耳介(耳の外側)をそっと一拭きしてみます。できたら、たくさん褒めて特別なおやつをあげましょう。

これを毎日少しずつ、根気よく繰り返すことで、耳を触られることへの抵抗感を減らしていきます。

無理せず動物病院やトリミングサロンに任せる選択も

どうしても自宅でのケアが難しい場合や、飼い主さん自身が不安で仕方ない場合は、無理をする必要はありません。動物病院やトリミングサロンなど、プロにお願いするのも賢明な選択です。専門家は犬の扱いに慣れており、安全かつ手際よく耳掃除を行ってくれます。また、その際に耳の健康状態もチェックしてもらえるというメリットもあります。愛犬と飼い主さんのストレスを減らすことを最優先に考えましょう。

自宅での耳ケアに役立つ商品の選び方

愛犬の耳を清潔に保つためには、適切なケア用品を選ぶことが大切です。市場には様々なタイプのイヤークリーナーがあり、どれを選べば良いか迷ってしまうかもしれません。ここでは、代表的なイヤークリーナーの種類と、愛犬の状況に合わせた選び方のポイントを解説します。

【比較表】犬用イヤークリーナーの種類と選び方

イヤークリーナーには主に「液体タイプ」「シートタイプ」「パウダータイプ」があります。それぞれの特徴を理解し、愛犬に合ったものを選びましょう。

タイプ

特徴

メリット

デメリット

液体タイプ

コットンに染み込ませて使う、最も一般的なタイプ。洗浄力が高いものが多い。

・耳のシワなど細かい部分の汚れもしっかり落とせる
・商品の種類が豊富で選びやすい

・液だれしやすい
・犬が液体の感触を嫌がることがある

シートタイプ

洗浄液が染み込んだウェットシート状。指に巻いて手軽に使える。

・手軽で準備が簡単
・液だれの心配がない
・初心者でも使いやすい

・細かい部分の汚れは取りにくいことがある
・乾燥しやすい

パウダータイプ

耳の中に振りかけて使う粉末状。湿気を吸収し、耳の中を乾燥させる。

・耳の中をサラサラに保てる
・耳毛を抜く際に滑り止めとして使われることも

・洗浄力は高くない
・粉が固まってしまうことがある

初めての方は、手軽に使えるシートタイプから試してみるのがおすすめです。汚れが気になる場合は、洗浄力の高い液体タイプを選ぶと良いでしょう。

耳の健康維持をサポートする食事のポイント

耳のトラブルは、実は食事と関係していることもあります。特に、特定の食べ物に対するアレルギーが、皮膚の炎症やかゆみを引き起こし、結果として外耳炎につながるケースは少なくありません。もし愛犬が繰り返し耳のトラブルを起こす場合は、食事を見直してみるのも一つの方法です。

関節の健康サポートで知られるオメガ3脂肪酸(EPA・DHA)は、体内の炎症を抑える働きも期待されており、皮膚や耳の健康維持にも役立つとされています。また、アレルギーが疑われる場合は、獣医師と相談の上、アレルゲンとなりにくいタンパク質を使用した療法食などを試すことも検討しましょう。

犬の耳掃除に関するよくあるご質問(FAQ)

子犬の耳掃除はいつから始めればいいですか?

子犬の耳掃除は、急いで始める必要はありません。まずは、耳を触られることに慣れさせることからスタートしましょう。生後3ヶ月頃から、耳をめくって中をチェックする習慣をつけ、汚れが気になり始めたら優しく拭く程度で十分です。本格的なケアは、動物病院やトリマーさんに相談してから始めると安心です。

耳掃除の代わりに水で濡らしたコットンで拭いてもいいですか?

水で拭くのはおすすめできません。犬の耳の中に水分が残ると、湿度が高まり、かえって細菌やカビが繁殖しやすい環境を作ってしまいます。必ず、速乾性のある犬専用のイヤークリーナーを使用してください。

耳掃除の後に少し血が滲んでしまいました。どうすればいいですか?

もし血が滲んでしまった場合、強くこすりすぎて皮膚を傷つけてしまった可能性があります。まずは耳掃除を中止してください。少量ですぐに止まるようであれば様子を見ても良いですが、出血が続く場合や、犬が痛がる様子を見せる場合は、すぐに動物病院を受診してください。

まとめ:正しい耳掃除で愛犬の耳の健康を守ろう

今回は、犬の耳掃除の必要性から、自宅でできる正しい手順、注意点、そしてトラブルのサインまでを詳しく解説しました。大切なのは、やりすぎず、愛犬の耳の状態を日頃からよく観察することです。そして、耳掃除を「嫌なこと」ではなく、飼い主さんとの穏やかなコミュニケーションの時間にしてあげてください。もし少しでも異常を感じたら、ためらわずに動物病院に相談しましょう。正しい知識と愛情のこもったケアで、愛犬の耳の健康を末永く守ってあげましょう。

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